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株式会社栃木屋 代表取締役 栃木一夫 社長

legwork_noimage“機構部品一筋、部品に信頼と美しさを”

千代田区の神田地区には特徴を持った歴史のある中小・中堅会社が数多くあります。今回お邪魔したのはその中の1社、機構部品を専門に取り扱う株式会社栃木屋です。神田駅近くの出世不動通りの中ほどにあるシブい本社ビルに代表取締役栃木一夫社長を訪問しインタビューのスタートです。

機構部品が専門

 株式会社栃木屋のホームページの販売製品を見るとその幅広さに驚きます。インタビューが始まって最初に栃木社長にお聞きしたのは、株式会社栃木屋で扱っている製品は、機械部品に間違いないのですが、なんという分野なのかということです。栃木社長は“当社の製品は機構部品と呼ばれるものです。機構部品と言えば栃木屋というぐらいそのブランド力は機械メーカーの業界には浸透しているんですよ”とのこと。
 具体的に言うと、錠前、蝶番、ハンドル、キャスターなど機械製品の一部を構成する機械部品です。私は素人なのでなんともうまく説明ができません。もっと詳しく知りたい方は、ホームページのWEBカタログをご覧下さい。
http://tochigiya.jp/catalogue/

金物商からスタート

 栃木一夫社長は3代目だそうでして、栃木一夫社長の祖父が麻布十番で始めた金物の小売商がスタートです。社史によると1913年(大正2年)ですから、株式会社栃木屋は再来年で創業100周年を迎えられます。2代目を継いだ栃木一夫社長の父親は現在の神田の地に本社を移転します。

 当時、金物の小売商として日本電気株式会社の寮に鍋、釜、包丁など金物を納品していたのだそうです。日本電気株式会社といえば通信機器で有名な会社。ある時日本電気株式会社の通信機器のキャッチクリップの納品をスタートしたのだそうです。これが大変に好評でその後日本電気株式会社の通信機器の機構部品全体に商売を拡大していったのだそうです。とうことで株式会社栃木屋では当初は“通信機用機構部品の栃木屋です”と言っていたのだそうです。高度成長期に入り日本電気株式会社の成長に引っ張られていく形で株式会社栃木屋も成長していきます。

 その後日本電気株式会社以外の通信機器メーカーにも営業を開拓し、さらには通信機器以外の機構部品にも製品を広げていきました。会社の組織も拡大していきます。
 三代目である栃木一夫社長は学校を出た後、サラリーマンとして会社勤めを行い、27歳の時に株式会社栃木屋に入社します。営業マンとして活躍するうち、40歳の時に先代社長が亡くなられ、三代目として社長に就任されました。 

栃木屋はファブレス・メーカー

 株式会社栃木屋は、“TOCHIGIYA”というブランドを持っていすが、自社工場はなく製造は日本全国にある協力工場で行っています。企画、開発、設計と物流を行ういわゆるファブレス・メーカーです。今では先端の経営方式として一般化してきましたが、昔は工場を見せろと得意先に言われ困ったこともあったといいます。協力工場は100社以上あり、株式会社栃木屋を中心にして高い結束力を誇っています。ちなみに株式会社栃木屋では協力会社のことを“お取引先”と呼んでいます。
 株式会社栃木屋のパンフレットを見ますと、主要納入先(得意先)の会社名がでています。世界を相手に活躍している日本を代表する機械メーカーがずらりと並んでいます。株式会社栃木屋への信頼を物語るものと言えるでしょう。
 “株式会社栃木屋はモノづくりをお手伝いする会社だ”と栃木社長は言います。製品開発や製造でのアイデア、コストダウンの手法、安心安全への取り組みなど、得意先への提案が大事だということです。その提案活動をサポートするため、株式会社栃木屋では700ページにおよぶ総合カタログ、WEBカタログ、2D-CAD,3D-CADデータの入ったディスク・カタログなど取り揃えています。

株式会社栃木屋の3つの取り組み

株式会社栃木屋では3つの特徴ある取り組みを行っています。
(1)環境への取り組み 
 全世界が地球環境保護への取り組みを加速させています。株式会社栃木屋でも環境への取り組みは積極的に行っています。
 ① ISO14001(環境マネジメントシステム規格)の認証取得
 ② 3R活動(循環型経済システムの構築)の研究・推進
  1) Reduce(リデュース)
  2) Reuse(リユース)
  3) Recycle(リサイクル)
 ③ 環境配慮設計の推進/地球に優しいモノづくり
 ④ 栃木屋グリーンマーク/RoHS指令への対応
(EU市場への輸出の際の指定6物質(鉛、水銀、カドミニウム、六価クロム、PBB,PBDE)への規制)

(2)品質への取り組み
 品質に関しては株式会社栃木屋の得意先である日本の機械メーカーは、寸法、外観、納期、耐久性など極めて厳しい基準を要求しますので、株式会社栃木屋では品質に関しても改善を継続してきました。最近は時節柄、放射能に関しての分析も要求されることもあるそうです。
 ① ISO(品質マネジメントシステム規格)の取得
 ② クレーム撲滅プロジェクト
 ③ R&Dセンター(2007年3月川口に開設)
  1) 得意先からの高い品質要求への対応
  2) 製品の品質試験
     ・荷重試験(精密万能試験機)
     ・3次元形状測定(3次元測定器)
     ・発塵量測定(クリーンブース・パーティクルカウンタ)
     ・耐食性試験(塩水噴霧試験機)
     ・化学物質測定器(蛍光X線分析装置)

(3)コンプライアンス(法令順守)への取り組み
 コンプライアンス(法令順守)への取り組みもしっかり行っています。
 ① 消費生活用製品安全法への対応
  得意先機械メーカーだけでなくエンドユーザー安全・安心に使用してもらえるための、原材料や製造工程の定期的確認、事故情報の収集、告知体制の構築など
  ② PL法への対応
  製品リスクアセスメントを開始
 ③ 輸出貿易管理令への対応
安全保障に係る輸出管理の関連の法令の順守と体制づくり

最後に社長として株式会社栃木屋で会社経営で心掛けていることをお聞きしました。

(1) ガラス張り
 まず最初に“ガラス張り”ということを心掛けていますと栃木社長。具体的には“ウソをつかない”“ごまかさない”ということだそうで、お客様に対してはもちろん、社内でも“ガラス張り”であることを徹底させています。“ウソをつかない”“ごまかさない”ということは“人間関係における信頼関係”の条件です。企業経営においても全く同様。得意先、協力会社、社員の間の信頼関係がすべての基礎です。“ウソをつかない”“ごまかさない”という非常に基本的なことですが、完全にできている会社は少ないのではないでしょうか。

(2) 仕事で手抜きをしない
 仕事のやり方に関しては、手順が決められているものは手順どおり行い、手抜きを絶対にしないこと。これは高品質な製品を維持していく上での条件です。
 川口にあるメカニカルパーツセンター(MPC)は物流センターですが、現在の総合カタログだけでも4500点、特注品など含めると数千点の在庫の管理を行うわけですが、注文があれば1点からでも出荷する大変に手間のかかる仕事です。まさに誰かがちょっとでも手を抜くと倉庫は大混乱になることは間違いありません。仕事の手抜きをしないことはこのような膨大な作業を行う上でも絶対に守らなければならない基準です。

(3) コミュニケーションを大事にする
 挨拶、言葉づかい、礼儀などはコミュニケーションの原点であり、社風を形づくるので大変に重視していますと栃木社長。また年1回の全社員参加の社員旅行、協力会社と社員全員で行う新年会なども、事業所が全国に分散しているため重要な行事となっているようです。
 栃木社長は本社にいる役員から毎朝仕事に関する報告を受けるそうですが、これもトップ自らが行うコミュニケーション向上のための一つの施策です。

(4) 会社、商品、仕事を好きになる
 会社を好きになる。商品を好きになる。仕事を好きになる。会社で仕事をしている時間は人生の中で大変に長いので、仕事が嫌いだとつまらない人生になる。仕事をしていく上で、会社、商品、仕事を好きになるということは仕事を成功させる上でも欠かせない考え方です。

 アジア地区の経済発展、日本の産業構造の変化、円高の進展などで大手メーカーの生産拠点が海外に移転していく中、今後の国内のモノづくりの構造変化にどう対応していくか。そしてそれに対応して株式会社栃木屋も海外への展開をどうするか。栃木社長は成長著しいアジア地区を視野に入れて新しい株式会社栃木屋の展開を構想しているようです。

◇株式会社栃木屋
http://tochigiya.jp/