株式会社マジカルポケット 代表取締役 平田茂邦 社長
“IR活動支援を通じて会社を元気に、日本を元気に”
今回おじゃました株式会社マジカルポケットは、第3回千代田ビジネス大賞特別賞の受賞企業の1社です。
新聞の経済面などを見ているとIR(Investor Relations)という言葉を見ることがあります。企業が株主に向けて自社の経営状況や活動状況、財務内容、業績動向などを発信する活動をいいます。上場している企業の義務という面もありますが、先進的な企業ではIR活動を積極的に展開し、企業価値の向上に結び付けています。
株式会社マジカルポケットはこのようなIR活動、株主向けの広報活動の支援を行っている会社です。IR活動を支援するこの業界は老舗の会社の寡占状態で、新規参入は困難だと誰もが思っていたのですが、株式会社マジカルポケットの平田社長は弱冠24歳、徒手空拳からスタートし、設立8年にして、現在全上場会社3,665社のうち約400社にサービスを提供するまでに成長しました。その秘密は一体どこにあるのでしょうか?
財団法人まちみらい千代田から徒歩で5分。駿河台下交差点近くの会社で株式会社マジカルポケットの平田茂邦社長へのインタビューのスタートです。
資料印刷サポート事業(1本目の柱)
上場企業は四半期ごとや年度ごとに決算短信などの資料を作成し、投資家やアナリストに公表します。その際の資料の印刷は、早く、正確で、なおかつ発表まで厳重に機密が守られたものでなければなりません。この資料印刷サポートが株式会社マジカルポケットの事業の柱の一つです。
株式会社マジカルポケットは“神田という地の利”を活かし、創業間もなくからまずこの資料印刷サポート事業を拡大して行きました。“神田という地の利”というのは、
・IRの説明会の多くがお隣の大手町で開催される
・東京証券取引所が近い
・地場産業である印刷会社が何社もある
といった点です。神田に来て6年目ですが、本当に地の利を享受させてもらっていますと平田社長。
株式会社マジカルポケットの資料印刷サポートの特徴はその内容にまで踏み込んで企業情報を校正する点だそうです。間違いがあると大問題に発展しかねないIR資料だけに、IRに特化したスタッフが校正を行う株式会社マジカルポケットの正確さは企業にとって非常に魅力があるのです。
株式会社マジカルポケットは早くて小回りのきくこの資料印刷サポート事業で上場企業に食い込んで行きました。この資料印刷サポート事業で関係した顧客に向かって、次のWEB事業を提案していくという戦略が見事に当たり、WEB事業が短期間で多くの企業に活用されるようになったのです。
WEB事業(2本目の柱)
IRポケットとは株式会社マジカルポケットが開発した、オリジナルのIR情報の自動更新サービスのシステムです。
上場している各企業は、発表すべきIR情報を東京証券取引所に送らなければなりませんが、IRポケットを活用すると東京証券取引所に蓄えられたIR情報の更新と同時に、自動的に会社のIR情報を提供するWEBサイトの情報も更新されるのです。
企業のIR情報担当者は、東京証券取引所に情報を送るだけでなく、アナリスト、マスコミ、主要取引先などさまざまなところに情報を同時に提供せねばならず、この時期IR業務の担当者は繁忙を極めるのですが、その解消に株式会社マジカルポケットのIRポケットは大きく貢献しているのです。
数字や文章だけでなく、グラフ、英語なども自動的に更新されますし、企業ごとにデザインや内容を非常に自由に設計できるため、IRポケットという自動化システムを使ってIR情報を画一的に発表しているという感じは全くない、手作り感があるのが特徴です。
IR業界大手のサービスが法定開示書類への対応に重点を置いたサービスであるのに対し、株式会社マジカルポケットのサービスは株主・投資家の目線での情報提供という点に特徴があり、企業から高い評価を得ています。
制作事業(3本目の柱)
日本ではようやく企業から株主へ情報配信することの重要性が認識されてきました。株主へのサービスのための資料を制作する仕事が株式会社マジカルポケットの3本目の事業の柱です。
代表的なサービスは株主通信の制作。株主に企業の活動内容や業績を報告し、株主に企業への理解を深めてもらうための冊子の制作をしています。そのほか株主総会で使うパワーポイントの作成や株主へのアンケートの代行なども行なっているそうです。株主の多い企業ではWEBでのアンケートも行なっているのだそうです。
今回の大震災の結果、大震災の影響など記した分各社のIR資料のボリュームが増え、かつ各社ともIR資料を配布する範囲も増やしたために配布部数も大幅に増加したということです。
株式会社マジカルポケットが目指すもの
企業がIR活動を行う大きな目的の一つは、投資家への適正な情報を提供することにより、企業の資金調達力を高めることです。しかし、平田社長はもう一つ目的があるといいます。それは株主総会の機能の強化です。
企業が資金調達力を高めていくことにより、競争力を強化し、それが日本の競争力を高めていくことになると平田社長は言います。残念ながら外国のビジネスマンから見ると、最近の日本の企業は魅力が乏しく、働きたくないと思われているようで、IR活動の支援を通じ、日本の企業が競争力を高めて魅力的になるよう貢献することを平田社長は目指しています。
株主総会の機能の強化については、いたずらに株主の権利を主張したり、投資家の目先の利益を追いかけるためのものでなく、株主としてその企業を応援できるような関係作りに貢献したいと平田社長は言います。インターネットやスマートフォンの活用、個人投資家や海外投資家への配慮、動画での配信などさまざまな取り組みを行っています。優良な株主とは企業にとって最大の顧客であり、応援団でもあるはずです。株式会社マジカルポケットでは株主と企業の双方にとってメリットのある株主総会を企業に提案しています。
株式会社マジカルポケットはこれまでにない新しいIRの形を模索し続けているのです。
社員の成長が企業の成長
株式会社マジカルポケットは、現在11名の少数精鋭の企業です。これだけの仕事をたった11名で!と感じますが、やはり大変なハードワークのようです。しかし忙しい中でもまだまだ勉強をしていかないといけませんという平田社長。3カ月ごとの目標管理制度も導入し、社員の成長のための時間も費用もかけています。
株式会社マジカルポケットのスタッフの皆さんは、大きな2つの軸の能力開発をしていく必要があります。
(1) 一つの軸は、印刷、製本、デザイン、制作、WEBといった“商品の軸”
(2) もう一つの軸は、企業のビジョン、戦略、組織、業績といった“企業経営の軸”
株式会社マジカルポケットのIR支援サービスは印刷やデザインといった形だけでなく、企業経営の内容そのものにも踏み込んでいくため、この2つの軸でのレベルアップが求められるのです。
社長が32歳、営業スタッフのほとんどが20歳代という若い組織において、この2つの軸の双方の成長を目指していかなくてはならないため、株式会社マジカルポケットでは人材教育に大変な力を入れているのです。
社員の成長が会社の成長であり、社員一人一人のレベルアップを果たすことによってはじめて、さらに多くのお客様にレベルの高いサービスを提供できると平田社長は断言します。
新しい形での企業のIR活動の支援を通じ、企業を元気にし、日本経済全体の活性化に貢献する“大志”を抱く株式会社マジカルポケットの活動から目が離せません。
◇株式会社マジカルポケット
http://www.mpocket.jp/
◇第3回ビジネス大賞の概要はこちら
https://www.mm-chiyoda.or.jp/business/biz-prize3rd.html