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株式会社インフロー (2012年7月より株式会社ピーバンドットコムに社名変更)代表取締役 田坂正樹 社長

“高い志で成長を続けるプリント基板製造の革命児”legwork-vol80

 最近の電気・電子機器の中を見ると必ずと言っていいほど、集積回路や抵抗器、コンデンサなどが貼り付けられたプリント基板が入っています。このプリント基板の設計、製造、実装を手がけているのが、今回企業探訪した株式会社インフローです。
 3月に行われました第3回千代田ビジネス大賞で見事優秀賞を受賞されました。株式会社インフローは2002年設立ですが、革新的ビジネスモデルを構築し、快進撃を続けています。その秘密はどこにあるのでしょうか?
 JR四ツ谷駅を降り、新緑のきれいな外濠公園沿いを歩いて株式会社インフローが入居している五番町のビルに到着。代表取締役田坂正樹社長にインタビューのスタートです。

株式会社インフローの特徴は

 インタビュー冒頭、業界のことを何も知らない私が“プリント基板って誰が開発したんですか?”という素朴な質問をしたところ、田坂社長が早速調べてくれました。オーストリア人のPaul Eislerという人が考案し、日本には昭和11年に入ってきたそうです。それ以来、日本のプリント基板製造産業は拡大を続け、現在は日本における一大産業でして、1兆2000億円ほどの規模があるそうです。
 現在の日本の電気・電子産業には欠かすことのできない部品、装置であるプリント基板業界。新しいとは言い難い業界でなぜ2002年に創業したばかりの株式会社インフローが成長を続けてこられたのでしょうか?

(1)E-コマースの徹底
 株式会社インフローの最大の特徴は、インターネットだけで受注するE-コマースを徹底している点です。顧客を回る営業マンはおらず営業コストはかかりません。プリント基板をつくって欲しいお客さんは必ず株式会社インフローの“P板.com”というホームページ上から発注するのです。受注データはすべて曖昧さのないデジタルデータ。その後の工程の大きな省力化につながっています。

(2)4つの地域の提携工場
 次の特徴は製造の日本、韓国、台湾、中国の4つの地域の工場と連携し、それぞれの技術や設備による得意分野に合せて、発注がなされるのです。これも製造コストのダウンに貢献していることはいうまでもありません。ただし、株式会社インフローではその品質管理と納期管理を徹底している点が他社とは違います。プリント基板というお客様の製品の頭脳部分を担う装置ですので、品質管理や指導には海外の現地に指導員を送り込んで指導することも多いそうです。さらに納期管理に関しては納期順守率99.97~99.98%という超高水準です。お客さんが1万回頼んで、約束した納期が遅れるのが2~3回というのですから、驚愕の数値です。海外の物流は遅れることが多いので、韓国、中国、台湾の主要地域には毎日飛行機便を予約してあり、いざという時は社員がハンドキャリーで持ち込める体制を作っています。さらに国内の輸送が遅れる場合には、成田空港からはバイク便でお客様へお届けすることもあるとか。採算は関係なく、納期を必ず守るという株式会社インフローの姿勢が表れています。プリント基板が遅れることにより、その後の工程がすべて遅れてお客さんに迷惑をかけてはならないという田坂社長の信念です。

(3)ローエンド製品に特化
 プリント基板はその複雑さに応じて、階層構造になっており、高性能コンピューター用のものは何十層になっているものもあるらしいのですが、株式会社インフローでは片面・2層から8層までのローエンドの製品の製造に限定して受注しています。これもコストダウンに貢献しています。
 プリント基板の製造というのは、最初の版をつくる費用、イニシャル費用がかかります。これが結構高く、電気・電子機械メーカーの担当者の悩みの種でした。株式会社インフローではE-コマース、海外生産、生産方法の創意工夫など大変な努力の結果、プリント基板の製造にかかるイニシャル費用を従来の事業者と比較して70%減まで落とすことに成功したのです。株式会社インフローはプリント基板製造の後発組です。70%減という衝撃の価格を提示できなければ、電気・電子機械メーカーの発注者を振り向かせることはできないと田坂社長は考えたのです。

プリント基板製造事業を始めたわけ

 株式会社インフローはいわゆるベンチャー企業として2002年に田坂社長が立ち上げました。田坂社長の前職は金型やメカトロニクス製品で有名な大企業です。そこで半導体をインターネットで売るというビジネスを立ち上げた経験から、プリント基板を通信販売するという現在の株式会社インフローの事業をスタートさせました。
 プリント基板製造はベンチャー企業に向いているんですよと田坂社長。理由は次のとおり。
① 100%受注生産で製品在庫が不要である。
② 法人向け受注が中心で安定したおり、信用を得ることができればリピート受注ができる積み上げ型のビジネスである。
③ これまで誰もやったことがなかった。
 事業を立ち上げて、この事業はやっていけるなと確信したのはいつですか?とお聞きしたところ、3年目か4年目でしたとのこと。
 株式会社インフローでは営業マンが一人もいないのですから、お客さんが興味を示しているとか、間もなく発注してくれそうだという営業プロセスの情報が一切ないのです。これは経営者として大変不安です。そしていきなりインターネットを通じてコンピューター上に発注が来るわけです。
 1日の注文が20件~30件ほどで安定的になったとき、田坂社長はやっとこの会社はつぶれないなと感じ、それが3年目から4年目にかけての時期だったそうです。(ちなみに、これまで約3,000日ほどの営業日数で1件も注文がなかった日はたったの1日だそうです。)
 これでつぶれないだろうという確信を得て初めて、それまで役員だけでやってきた事業で、社員を採用し始めたのだそうです。
 創業時の一番の問題は、実はインターネットの安定性でしたと田坂社長。2002年というとインターネットバブルが崩壊し、インターネットそれ自体への不安もまだまだあった時期。そんな不安定なインターネットを通じて、プリント基板という重要な部品を発注して大丈夫なのか?という不安を持つお客様に、どのように“P板.com”に転換してもらえるか?もちろん品質には自信があったわけですが、その最大の戦略が従来価格比70%減という価格破壊であったのです。
 価格破壊戦略は見事に成功。スタート当初は、企業の開発部門の担当者の方々に研究・試作用として利用されることの多かった“P板.com”ですが、リーマンショック以来、メーカーの製造コスト全体の見直しが始まり、購買部門が利用の中心となって会社全体で“P板.com”を活用してもらうことが多くなっているようです。
 開発部門、購買部門というと大企業をイメージしますが、株式会社インフローの10,000社ほどのお客様のうち、約半数が20名以下の中小企業だそうです。株式会社インフローは大企業だけでなく、日本の中小企業の大きな支えにもなっているのです。

電子工作コンテスト

 株式会社インフローは年に電子工作コンテストを主催しています。年々その規模は拡大し、電子工作コンテスト2010では、151作品が応募、28作品が受賞しました。どんな作品が受賞したのか?まずは下記のサイトをご覧下さい。
http://www.p-ban.com/ele_con/prize/
 なぜ、こんなコンテストを主催しているのか?一言で言えば、“イケてる電気・電子業界にしたい”からだそうです。ITなどどちらかと言えば、ソフトウェア業界が重視される昨今の日本、ハードウェアももっと注視されるべきだと田坂社長。
 “アイデア→ロジック→組み立て”という感動を世界に流布し、イケてるといわれる電子業界にしていきたいというのが、田坂社長の夢なのです。
 省電力のためのLED、電気自動車、スマートフォン、ロボットなど猛烈な開発競争の中で、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアも発展が求められています。そのための人材の啓蒙の一つとして電子工作コンテストを行っているのです。

これからの事業展開

 これまで順調に成長してきた株式会社インフローですが、これからの展開は次の4つの方向を考えていますと田坂社長。
(1) 海外への市場の展開(目標50%)
(2) ビギナー電子回路技術者向けの試作用プリント基板作成サービス“パネルdeボード”の展開
(3) 電子工作コンテストを中心とした啓蒙活動
(4) 1個からの半導体の販売など新しいサービス開発
 現在までの成功に満足することなく、次々と新しい展開を発想し、着々と手を打っている株式会社インフローです。
 センサーに関しても事業を行っている株式会社インフローでは、そのノウハウと人脈を活用し、今回の大震災からの復興に役立てるべく放射線測定器を開発し、どのような形で被災地に役立ててもらうか検討中だという田坂社長。
 田坂社長をリーダーとし、スタッフの皆さんが持つ高い志が株式会社インフローをこれからさらなる高みに引き上げていくように感じられました。

◇株式会社インフロー
http://www.inflow.co.jp/

※2012年7月より株式会社ピーバンドットコム(http://www.p-ban.com/)に社名変更

◇第3回ビジネス大賞の概要はこちら
https://www.mm-chiyoda.or.jp/business/biz-prize3rd.html