スローガン株式会社 代表取締役 伊藤豊社長
“ベンチャー企業への人材採用サービスで社会に貢献”
JR神田駅からほど近く、約1200年前に創建され、江戸時代には相撲取りが信心すると“出世”すると言われたとされる神田の出世不動尊(大日山東潮院)。そのすぐ左側のビルの4階に今、飛ぶ鳥を落す勢いの人材採用サービスの会社があります。それが今回お邪魔したスローガン株式会社です。
本日は自転車ではなく、徒歩にて約3分。4階の応接室で伊藤社長へのインタビューのスタートです。
ベンチャー企業の採用のお手伝い
ベンチャー企業の成長に欠かせない2つの要素があります。“資金”と“人材”です。“資金”に関しては日本にもベンチャーキャピタルがたくさんあり、有望なベンチャー企業を探し出し、資金面からの支援を行っています。
日本経済の成長・発展にはベンチャー企業の成長が不可欠で、その成長支援をしていきたいと考えていた伊藤社長は、“資金”面ではなく、ベンチャー企業に不足するもう一つの要素“人材”に注目します。
支援のやり方として、直接的に採用のコンサルティングを行うと大変に手間も時間もかかりますので、メディアを持ちWEBでマッチングをさせる成功報酬型の“求人サイト”を運営することを思いつきます。
ベンチャー企業向けと称したWEB上での求人サイトはすでにいくつかありました。しかし、どれもあまりうまくいっているとは言えない。その理由を分析した結果、実にシンプルなことに気づいたそうです。それは、“学生が行きたいと思うような会社がない”ということです。
そこで伊藤社長はスローガン株式会社のサイトに掲載する求人会社を厳選したのです。お金をもらえばどこでも掲載するということではない、厳選されたいいベンチャー企業、おもしろいベンチャー企業のみが紹介されている求人サイト“Goodfind”が生まれました。
この“Goodfind”が現在学生にもベンチャー企業にも大変な人気を博しており、このサイトのおかげで最近、一流といわれる大手企業への就職ではなく、優良なベンチャー企業に就職していく学生が増えているのです。
◇Goodfind http://www.goodfind.jp/
ベンチャー企業に就職すること
ベンチャー企業にすると学生にとって何がいいのか?を伊藤社長にお聞きしました。
就職に大手企業を選ぶ大きな理由はその安定性です。しかし、規模の大きな企業に就職するのが本当に安定か?と伊藤社長は疑問を投げかけます。以前優良で大手であった企業が倒産するケースも増えてきました。企業は倒産しなくとも、早期退職やリストラなどで、就職した大手企業から投げ出されるケースも増えてきました。
では、究極の安定とはいったい何か?それは各人がいつ会社からジョブマーケットへ投げ出されても、引く手あまたの人材であることだと伊藤社長は言います。今日会社を辞めたら、いったいどれだけの人が声をかけてくれるか?が問題だと言うのです。
成長するベンチャー企業は、確かに不安定で不完全だけれども、その改善改革に関与できるとすれば、それはお金を払っても体験する事のできないまたとない自己成長の機会だというのです。
また、ビジネスの世界では人脈づくりが大事ですが、大企業にいても増えるのは社内人脈がほとんど、ベンチャー企業では社内に人が少ないわけですから、外部との付き合いが多く社外の人脈がどんどん増えます。しかもベンチャー企業や中小企業であれば相手が経営者であることも普通です。
さらにベンチャー企業には問題点がゴロゴロ転がっている。これらの問題は、大企業であれば、それぞれ改善する部署があり担当の役割が決まっている。自分には関係ない人が改善してくれる。ところがベンチャーでは気づいた人が口出ししないといけない。自分から改善しないといけない。そうしなければ問題はそのままなわけです。
“私がやらなきゃ、誰がやる”。そこで生まれる“全権意識”、“自主性”、“自立性”がベンチャー企業に勤めることによって生まれる最大の成果だと伊藤社長は強調します。
なるほどこの“全権意識”、“自主性、”自立性”を持つビジネスマンは、どんな企業にとっても喉から手が出るほど、欲しい人材でしょう。
超大企業に就職して分かってしまったこと
優良なベンチャー企業への就職を勧める伊藤社長ですが、伊藤社長は東京大学を卒業後、日本IBMという世界的な超大企業に勤務します。
日本IBM、いわゆるエクセレント・カンパニーですが、入社してみて伊藤社長が気づいたことは、実はそこにいる人たちが必ずしもエクセレントではないということです。
確かにブランド力は高く、社内の仕組みは素晴らしい。普通の人でも会社はちゃんとゲタをはかせてくれて、それなりの仕事ができるのです。そこでは一人突出せず、横並びで普通に過ごしていくことが重要なのです。
ある時社内で会計ソフトを作成している子会社への出向者を募集しており、上記のような感じを抱いていた伊藤社長は早速応募します。全社員30名の小さな所帯ですが、行って見てびっくり。さまざまな問題が山積しています。伊藤社長はエンジニアとして出向したのですが、問題は各部署にまたがっており、営業を含めて全員がワンフロアーにいるため、営業の困ってる問題も耳に入ってしまう。耳に入れば口出しせざるをえません。この会社での活動が自分の経営者意識を目覚めさせてくれたと伊藤社長。人が育つのは小さい企業だと確信するに至るのです。
スローガン株式会社の誕生と成長
出向生活を2年体験し日本IBMに戻った後、独立に向けての準備を開始します。
日本IBM自社だけでなく、得意先も日本屈指の大企業ばかりです。多くの大企業と接する機会が増えるに従い、“大企業というのは、本当に世の中を良くしているのだろうか”という疑問に思い至ります。
折しも日本経済は停滞期に突入し、多くの会社がリストラなどで縮小していく時期、ベンチャー企業の支援へと的を絞って独立へのビジネスプランを練っていきます。特に人材面に的を絞り、優秀な学生が突出した能力開発に不向きな大企業ではなく、成長するベンチャー企業で就業することをサポートすることにより、ベンチャー企業にとっても、学生にとってもメリットをもたらせることができるビジネスプランをスタートさせました。
設立から2年間ほどは、事業モデルで右往左往しましたが、3年目から現在の形ができ始めましたと伊藤社長。
大学での教育カリキュラムの不足を補うため、スローガン株式会社では、“もう一つの大学”というコンセプトで学生向けのセミナーを開催しています。就職予備校などとは違い、すべて無料。非常に将来が不確定な時代、自らのキャリア形成をどう考えればいいのといったテーマや成長著しいアジアなどグローバルに働くための方法などといったテーマに人気があるようです。
成長するベンチャー企業
掲載する企業を厳選するのが、スローガン株式会社の運営する“Goodfind”の最大の特徴です。その選定の基準はなんでしょうか?
事業自体が素晴らしく、業績がいいことはもちろん、その会社の経営者の価値観が重要ですと伊藤社長。特にその人材観には大きな差があります。新卒学生の能力や可能性を重視する経営者もいますし、端から新卒は駄目だ、学生は使い物にならないという経営者もいます。そこはしっかり見極めていきます。もちろん学生の人達にお勧めするのは前者の考え方の経営者のいる会社です。
伊藤社長の率いるスローガン株式会社では、現在まで累計で16名の正社員を採用しており、うち10名が新卒です。ちゃんと自社でも実践しているのです。正社員のほかに学生アルバイトやインターンが23名とスローガン株式会社の大きな戦力になっており、そのまま就職するという学生もいるようです。
2005年の創業以来、7期目に入ったスローガン株式会社。接すれば謙虚で真面目な人柄がすぐに感じられる伊藤社長。これからは会社の活動における“社会的意義”を大切にしたいとのこと。神田の出世不動尊の霊験あらたかな地で、これから益々の成長が楽しみです。
◇スローガン株式会社
http://www.slogan.jp/