興産信用金庫 前川秀樹理事長
“人に優しい信用金庫として90年”
今回お邪魔したのは、千代田区内に本店のある唯一の信用金庫である興産信用金庫の前川秀樹理事長です。全23店舗のうち、千代田区内に5店舗が集まっています。
本店は神田紺屋町(現在は神田須田町の仮店舗)、本部は神田神保町の神保町支店の上にあります。立春を過ぎたとは言えまだまだ寒い風の中、靖国通りから白山通りを右折して興産信用金庫の本部に到着。
理事長室に案内を頂きまして、前川秀樹理事長にインタビューのスタートです。
基本理念からスタート
興産信用金庫の活動はさまざまにわたっていますが、その源流はすべて“基本理念”で、そこからスタートしていますと前川理事長。
その基本理念とは
- (1) 地域社会の繁栄に貢献する
- (2) 経営体質の強化を推進する
- (3) 役職員の資質の向上、福祉の増進を図る
というものでして、この基本理念は“経営方針”として具体化されていきます。
- (1) コンプライアンスを徹底します。
- (2) お客様一人ひとりへ価値のある商品・サービスを提供します。
- (3) 地域社会の「良き企業市民」としてCSR経営を展開します。
- (4) リスク管理にもとづく成長性の確保と財務の健全性を図ります。
- (5) 役職員の倫理観の向上、働き易い職場環境を確保します。
- (6) 地域金融のプロフェッショナルとなる人材育成に努めます。
というものです。
さらにこれらは、経営戦略、中期経営計画へとつながっていきます。今回の企業探訪でお話を頂いた各種の取り組みはすべて基本理念からスタートしています。
多くの企業が理念や方針を掲げるにも関わらず、日常活動はそれらとはかけ離れている場合が多い中、興産信用金庫ではこのようなマネジメントの仕組みを愚直に進めているのです。
さまざまな中小企業への取組み
信用金庫のお客様は個人と法人に分かれます。個人のお客様へのサービスとして、1泊旅行や年金を受け取る方々へ振込月毎に実施する年金感謝デーでのプレゼント(特に12月の”鮭or米“は好評)などといったサービスを興産信用金庫では取り組んでいるとのことですが、今回は企業探訪ということで、地域の中小企業の方々へのサービスというところに集中してお話をお伺いしました。
昨年の9月には地域の中小企業のビジネスマッチングを推進していきたいということで、“ビジネス交流会”が開催されました。榊原英資元財務官という超大物の講師を迎え、セミナーの後に参加者が交流を図るという場を設けました。300社ほどが参加し、大変盛大に執り行われました。“資金面からだけでなく、ビジネスに役立つ場”を提供したいという発想からこの企画は生まれましたと前川理事長。
また、中小企業庁が音頭をとり、豊富な知識と経験を持った企業のOBと経営課題を抱える中小企業をマッチングさせようという“新現役マッチング”という施策があります。興産信用金庫ではこの企画に賛同し、推進策として“新現役交流会”を開催のうえマッチングの場を提供し、18社の企業と60名のOBの参加があったそうです。これもまた中小企業の経営課題解決に資することを目的とした興産信用金庫の取り組みの一つです。
さらに、多くがオーナー企業であり、経営者が忙しく率先垂範で動かなければならない中小企業にとって、企業経営者が“自社のことを振り返る機会”は思いのほか少ないのが現状です。そこで経営者が自社のことを振り返るために有効なのが“財務診断サービス”です。収益性、効率性、安定性、流動性、成長性、規模という6つの指標から企業分析を行います。同規模や同業他社との比較でいったいウチの会社の強みと弱みはどうなってるの?ということがはっきりします。ちなみに“無料”だそうですので、財務診断サービスを興産信用金庫の提供している幅広いサービス活用のきっかけにされてみてはどうでしょうか?
興産信用金庫の取り組みは上記以外にも多岐にわたっておりますが、決して軸がぶれている感じがしません。P.F.ドラッカー博士のファンであるとおっしゃる前川理事長。ドラッカー博士のもっとも有名な言葉“われわれの事業の目的は何なのか”その定義をしっかりと行って取り組みを行っているからだと思います。
人に優しく
個人と法人に対してさまざまなサービスを提供している興産信用金庫ですが、前川理事長のもっとも強い思いは、“人に優しい信用金庫”でありたいということのようです。
その具体的な取り組みの一つが、職員の“サービス・ケア・アテンダント資格”の取得です。平成22年度で110名が合格し、取得者累計335名、新人を除く全員が取得したのだそうです。
“サービス・ケア・アテンダント”とは、以下のような取組みだそうです。
- ① ハンディキャップを抱えた人たちも社会の中で普通に暮らせる優しい環境を作っていくというノーマライゼーション社会を前提とする。
- ② 子供から大人、高齢者、病気の方、妊婦さん、障害者、外国人まであらゆる人に対して公平なサービスを提供するというユニバーサルサービスという考え方を基にする。
- ③ サービスを提供するあらゆる場面においてお年寄りや身体の不自由な方々にとどまらず、困っている全ての方々へのサービスに主眼とする。
昨今の金融機関の職員の方々は、金融のことだけでなく、法務、会計、税務、労務などは様々なことを学ばなければならないので、勉強しなければならないことが非常に多いのですが、それらの知識のベースとして“サービス・ケア・アテンダント資格”の取得を推進しているのだそうです。“知識の教育だけでなく、心の教育が大事なんです”と前川理事長。
地球環境保護という観点では、エコグリーン定期預金を通じての“緑の東京募金”の取り組みも積極的で、お客様へのお声掛けを積極的に行い、年々寄付額は増加しています。
また、地域への取り組みということに関して、東京商工会議所千代田支部、千代田区しんきん協議会、そして私ども財団法人まちみらい千代田の各種取り組みへも大変に積極的に協力を頂いております。最初にご説明を頂いた基本理念の“1.地域社会の繁栄に貢献する”ということもしっかりと取り組まれているのです。
5年前の創立85周年では、CI(コーポレートアイデンティティ)を導入し、どちらかというと地味だったイメージを一新。ブランドマークは、マークそのものに大空の写真を使うという大変に明るく斬新なものです。
さらに、興産信用金庫は来年度で創立90周年を迎えます。現在、本店のビルは建て替え中で、夏場に完成する予定だそうです。単なる事務の拠点としてだけでなく、地域の方々や中小企業の方々に活用してもらえる場としても考えていますとのこと。“人に優しい”信用金庫として飛躍する大きなきっかけになることが楽しみです。
(おまけ:この企業探訪も今回90社目です)
◇興産信用金庫
http://www.shinkin.co.jp/kosan/