株式会社インド・ビジネス・センター 代表取締役 島田卓社長
今回お邪魔した会社は、日本企業がインドとのビジネスを行う際のサポートをしている株式会社インド・ビジネス・センターです。最近では世界中が中国に続く次なるビジネス展開の主戦場としてインドをとらえています。
カレーの本場インド、お釈迦さまの生まれたインド、ガンジーの率いたインド、貧民層の多いインド、象のいるインド・・・それら以外に私はあまりにもインドについて知りません。それもほとんど噂のレベル。まったくもって正確ではありません。ビジネスの世界では、インドは本当はどうなっているのか?インドとのビジネスを始めて20年という経験を持つ、島田卓社長にインタビューをしました。
100回切れば100回違うのがインド
12億人にならんとする人口、日本の約10倍の国土、都市と農村、複雑な民族構成、貧困と急速な経済の発展など、インドは様々な表情を持つ国です。日本はどこを切っても大体似たようなものですが、インドの場合には、100回切れば100回違うインドの断面が出てくるんです。だから“インドはこういう国だ”と一言でくくれないんです、と島田社長。
ただ海外とのビジネスをしようとする企業にとって、潜在的な政治のリスクが非常に低い国であることは間違いないとのこと。いくら市場が大きかろうと、成長性があろうと、いつ政治的な混乱が起きるか分からない国は企業としては非常に怖い。もちろんインドにも国内で地域的な紛争はあるけれど、外資系の企業がそれほど振り回されることもない。またインドは、軍隊が政治に介入できないという文民統制の仕組みが確立している点も安心です、と島田社長。
さらに、インドの魅力はいろんな分野でマスコミなどで取り上げられています。
・12億の人口/若者の人口は日本の22倍
・生産年齢(15歳~59歳)人口は2035年まで拡大。
・2010年以降のGDP成長率8%(IMF予測)
・政府が支援する魅力的な投資環境(経済特区)
・国民の高い英語力とIT力
スズキ成功の要因は“人”
インドでもっとも成功している日系企業といえば自動車のスズキ株式会社。島田社長が行った鈴木治会長へのインタビュー記事によると、2009年4月~2010年3月、スズキのインドの子会社であるマルチ・スズキの年間生産台数は、100万台を超えました。そしてスズキのインドでのシェアは約50%とダントツの第1位です。スズキの日本国内の生産が100万台を切ったことを考えると、これがいかにすごいことか分かります。インド全体の車の生産台数は、現在年間200万台ですが、これから10年後の2020年には、1,000万台まで拡大するだろうとの予測です。
鈴木治会長がインドに乗り込んでから足掛け30年、成功の要因は、それだけで1冊の本になっているほどさまざまな分析が行われているようですが、最も重要な要因を一つだけあげるとするとそれはやはり“人”。スズキの場合には特に、現在のマルチ・スズキの会長R・Cバルガバ氏との出会いが決定的だったようです。
スズキだけでなく、二輪の分野ではホンダが大活躍。ホンダのホームページによれば、インドにおいて現在の第一工場(生産能力155万台/年)に加え、 第二工場(60万台/年)の建設を決定しました。二輪の分野でもインドは巨大な市場なのです(年間1000万台超)。ちなみに日本では、全メーカーの二輪の生産を合せても100万台に達しません。
産業の技術がもっとも集積されたと言われる自動車でこの状態ですので、その他の機械や部品の技術水準も年々向上しているそうです。世界中の企業が、先を争って技術指導などの投資を行っているためです。
株式会社インド・ビジネス・センターの事業内容
株式会社インド・ビジネス・センターには、大きく分けて2つの事業の柱があります。インドに進出する日本企業へのコンサルティング事業と、インドについての情報提供サービス事業です。
(1)コンサルティング事業
・インド進出に関しての各種アドバイス
・インド市場調査
・現地法人、事務所の設立サポート
・人材採用サポート
・講演・研修サービス
など、インドに進出する企業やインドにおいて事業を拡大したい企業の総合的なコンサルティングサービスです。以前は大企業が中心でしたが、最近は中小・中堅企業からの問い合わせが増えてきているようです。
株式会社インド・ビジネス・センターの強みは、インドでの人脈。島田社長が20年にわたってインドで築いてきた人脈が最大の強みです。人を得られれば事業の80%は成功すると言われるように、特にインドのような国では現地のパートナーが重要で、人材紹介まで株式会社インド・ビジネス・センターでは行っています。インドの優れた人材(キーパーソン)と自社の持つ技術を組み合わせる、周到な戦略立案のサポートをしてくれるのです。
(2)情報提供サービス事業
株式会社インド・ビジネス・センターではWEB配信ニュースサービス「ビジネスプレミアム」という有料会員制サイトを運営しています。インドの通信社と提携し、毎日20本のニュースを日本語で配信するほか、過去4年間のニュースをデータベース化し、会員が検索できるようになっているそうです。このサイトの会員は、日本語で作成されたインドの著名人の略歴、各種統計調査といったデータベースも使用できます。
そのほかにも、無料のインド情報ポータルサイト「インドチャネル」や有料の月刊誌「INDO WATCHER」、月次業界レポート「インド自動車業界月次レポート」、インド進出ガイドブック「インド投資便覧」など、インドに関する膨大な情報を日本企業に提供しています。
自社の再認識からスタート
世界中が注目するインドですが、中小企業としてはどのようにインドを見ればいいですか?とお聞きしたところ、まず世界の中での自社の立ち位置をはっきりさせることですと島田社長。
自社が扱っている商品・製品について、現場を直視し現状を正しく把握する。その際に、世界のビジネスパラダイムが大きく変化していることを認識し、柔軟な発想で現状を読み解く必要があります。モノづくりをしているメーカーの場合、労働集約的モノづくりを考えれば安価な労働力に目がいくわけですが、現在のモノづくりでは高い付加価値を得るためには知識集約的モノづくりが必要とされており、その際には知的人材の有無がメーカーの勝敗を分けることになるのです。
その上で自社はこのままでビジネスを継続していけるのかを問いかけなければなりません。このままでやっていけるのなら、それを継続していくほうがいい。しかし、もしやっていけないのなら、どうするか?
・縮小し最後には消滅する
・激戦の国内の競争に勝ち抜く
・国境を超え世界に活動の場を求める
この3つから自社の岐路を選択していくことが必要となると島田社長は言います。
その中で、インドを工場としてとらえるか、市場としてとらえるか、人材調達先ととらえるか、またはそれらの組み合わせか、企業経営者の先見性と決断力が求められます。
幕末、日本は300の藩に分かれ各藩が合従連衡を繰り返しながら、明治維新を成し遂げました。それから130年を経た現在、交通機関の発達により地球は急速に小さくなり、一つ一つの藩が、いまでいえば国のようなもの。日本はインド、中国などどの国と合従連衡し、どのように生き残っていくのか?日本は現在、平成維新の必要な時を迎えていますと島田社長。
その昔、インドは日本から遠すぎると言われましたが、今では飛行機に乗れば順風で7時間、逆風でも9時間で行き来ができるのです。アジアの巨象がすでに動き出し、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えていることに気付かされました。インドから目が離せません。
◇ 株式会社インド・ビジネス・センター
http://www.ibcjpn.com/