第一環境アクア株式会社(2012年8月 第一環境株式会社に吸収合併) 代表取締役 宇山家昌社長
ホテル、病院、大型ビル、工場など不特定多数の人が使う施設からは毎日毎日、大量の汚水が発生します。この汚水を浄化する設備を提供するというのが、第一環境アクア株式会社の仕事です。我々も知らず知らずのうちにお世話になっているのです。
10年程前に、苦境にあった総合建設業から現在のような汚水処理設備の設計、施工、管理を行う事業へと特化し、見事に事業の再構築を果たしました。
第一環境アクア株式会社は、第2回千代田ビジネス大賞の優秀賞受賞企業です。神田小川町にある本社にて、宇山家昌社長へのインタビュースタートです。
水処理の会社
第一環境アクア株式会社は、不特定多数の人が利用するホテル、病院、大型ビル、工場など、大型施設から発生する汚水を処理する設備を提供しています。大型施設から発生する汚水は、環境汚染を引き起こす原因となる可能性があるため、汚水法、河川法、水質汚濁法などさまざまな厳しい規制が課されているそうです。
第一環境アクア株式会社は、それらの規制をクリアーするための水処理の設備や技術を提供しています。このような設備はだいたい施設の一番地下にあり、我々一般の人の目に触れることはほとんどありません。
汚水を浄化するのが第一環境アクア株式会社の仕事ですが、実際に汚水の処理をしているのは“微生物”だそうでして、この技術は大正時代に北欧で発見された技術なのだそうです。「基本的にはこの技術をずっと使っているんですよ」と宇山社長。もし、微生物を使う技術以外で水を浄化する技術を発明すれば、ノーベル賞ものだそうです。
ただし、汚水に含まれる油や化学薬品などの汚れがどんどん新しくなり、浄化すべきものの幅が膨大に広がっており、さらに微生物も環境に合せてどんどん変化・進化してきている。ということで基本技術は一緒でも汚水浄化の応用技術はどんどん進んでいるのだそうです。
第一環境アクア株式会社のコア技術は、バイオ接触酸化法(BCS)という、含油排水の処理技術で、特許出願済であり、他の技術と比べて、水を浄化した後に残る汚泥(産業廃棄物)の発生量が非常に少ないのだそうです。
水処理に特化する・・・社長の決断
第一環境アクア株式会社は水処理専門の技術会社ですが、もともとは総合建築・土木の会社でした。宇山社長も総合建築・土木出身です。当時、バブル経済崩壊後の日本経済の悪化にともない、年間40億円以上の工事をやっていながら業績は赤字。総合建築・土木業としてやっていくのであれば、この傾向は避けられないと判断した宇山社長は、大きな決断を行います。
それまでも一部行っていた浄化設備、除外設備、中水道設備など水処理に特化することに決めたのです。企業経営者にとって、企業規模を縮小する決断というのは非常に厳しいものです。実際年商は数分の一に減少しました。しかし、第一環境アクア株式会社が現在のような優良企業になって生き残っているのは、その決断があったからなのです。
一流で優良な顧客とお付き合いする
企業を経営する上での宇山社長の基本方針は、安定した経営を目指すために、“競争受注はしない”ということです。総合建築・土木時代には厳しい価格競争にさらされ、それでも仕事をとるために赤字受注など苦しい経営をされてきたのだと思います。独自の専門技術を持った会社であれば、それを理解してくれる顧客にいい仕事を提供していくことができます。そのためには独自の高い技術を持つことと同時に、一流で優良な顧客とお付き合いをしなければなりません。
第一環境アクア株式会社のパンフレットを見せて頂くと日本を代表する優良なホテル、食品会社、学校・ホテル、デベロッパー、ゼネコンなどが目白押しです。
一流で優良な顧客様との取引というのは、技術的にも高いレベルを要求されますが、その分それをクリアーできれば適正な利益を確保できます。こちらの社員のレベルも上がり、社員のプライドも高まるのです。一流で優良な顧客とお付き合いをするというのは、当初は苦労も多かったと思いますが、今となっては会社にとってのもっとも基本の戦略なのです。
真面目な会社
進歩する技術に追いつくために、教育に関しては毎月1回の勉強会を開催しています。社員は全員が参加します。「そうしないと水処理のプロとして技術の進歩に追い付けないからです」と宇山社長。社員だけでなく外注先や仕入先など協力会の方々とも年に3回は勉強会を開催しているそうです。
お聞きしておりますと宇山社長も大変勉強熱心で、月7~8冊の本を読み、勉強会やセミナーにも積極的に参加しているそうです。「ユニクロの柳井社長からは大きな影響を受けました」と宇山社長。社長が勉強熱心ですと、社員もやはり勉強熱心になるのでしょう。
「ウチの会社は私以外は真面目な社員ばかりなんだよな」と宇山社長。社員のみなさんはみんな仕事には熱心だし、家庭や家族思いの社員が多いそうです。少し幅を広げてもらおうと、仕事以外にも一つでいいから、きらりと光るものを持つように社員の方々に薦めているそうです。
つぶれない会社をつくる
宇山社長は、つぶれない会社をつくるのはどうするかということを考え、実践しています。たとえば、手形は使わない。現金以外の資産を持たないなどです。資金繰りが苦しいから安易に手形を使う、資金が余ったら投資用の資産をもつなどの、安易な経営を行った企業が大変な目に会っています。
さらにもう一つは、“しっかり納税する”ということ。実際ここ数年は4,000万円以上の納税をしているのだそうです。「世の中で企業の社会的な責任というとことがとりざたされていますが、企業の社会的責任とはやはりしっかり納税することだと思います」と宇山社長。利益を出して納税しなければ会社に内部留保ができないという、会社経営の王道を歩んでいらっしゃいます。
そのためには社内で経理を公開し、透明度の高い経営を心掛けているそうです。役員はじめ新入社員に至るまで、会社の業績が分かっているのです。社員のみなさんは自分たちのこととして会社の業績を見ているのです。そこには公私混同、節税対策、事業以外への投資などは行う余地がありません。
ちなみに社員の方には会社の株の取得を推奨しており、毎年10%配当を続けているのだそうです。この点も社員の皆さんが自分たちの会社であるという意識を持っている要因でしょう。
つぶれない会社にするために、明確な戦略を打ち出し、社員に経理を公開し、シンプルで力強い経営をしてこられた宇山社長。汚水の浄化だけではなく、会社も浄化してこられたのだと感じました。
◇ 第一環境アクア株式会社(2012年8月第一環境株式会社に吸収合併)
http://www.daiichikankyo.co.jp/