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株式会社ポポンデッタ 代表取締役 太田和伸社長

鉄道模型は続くよ、どこまでも~♪legwork_noimage

 皆さん鉄道模型はお好きでしょうか?もしお好きなら今日お邪魔した会社はたぶんご存知のはず。鉄道模型販売の株式会社ポポンデッタです。この度第2回千代田ビジネス大賞をみごと受賞され、急遽企業探訪ということになりました。前日行われた授賞式の熱気も冷めやらぬ3月18日(木)、(株)ポポンデッタ秋葉原店の5階に太田和伸(おおたかずのぶ)社長を訪問しました。

中古品のネット販売からスタートし、現在10店舗

 (株)ポポンデッタは、1999年に太田社長がインターネット通販で始めた中古の鉄道模型販売がスタートだそうです。熱烈な鉄道模型マニアであった太田社長ですが、まだ勤め人であった太田社長にとっては新品の鉄道模型は結構高い。そこで中古品を探そうとしましたが、中古品を扱う店舗はあるのかないのか分らないぐらいのごく小さい規模で、少なくとも太田社長自身は中古品を買うことができなかったのです。 それでは自分でやってしまおうということで、当時定着してきたインターネット通販での中古鉄道模型の販売をスタートしました。
 その後は実店舗である秋葉原店のオープンから始まり、現在10店舗で売上は8億円を突破、アルバイトを含めた社員は約100名だそうです。さらにこの4月に津田沼と仙台に出店予定、5月には越谷と京都というように順調に事業を展開されています。

太田社長は2足のわらじ

 太田社長は現在、太田和伸税理士事務所の所長つまり税理士でもあります。ポポンデッタ秋葉原店の5階は、太田和伸税理士事務所なのです。創業当初は税理士事務所職員として、現在は税理士事務所の所長として、永く中小企業の経営に関与してきた太田社長ですが、その経験が現在の(株)ポポンデッタの経営にも大いに役立っているといいます。たとえば事業計画や資金繰り計画の作成など、職員時代から関与先の会社のお手伝いをする中で、そのノウハウを蓄積し、ポポンデッタの経営にも非常に役立っていると太田社長。逆に、(株)ポポンデッタの会社経営者としての経験も、関与先経営者へのアドバイスに役立っているといいます。税理士という専門家としての外部からのアドバイスということに加え、会社経営者でもあるという共感が生まれるのだと思います。「ポポンデッタと税理士事務所の仕事の割合はどのぐらいですか?」とお聞きしたところ、「2:1ぐらいかなあ、でも収入の割合としては1:1ぐらいだから、会社の社長というのはわりに合わない仕事なのかなあ(笑)」と太田社長。

ポポンデッタの特徴は

 業界の中では鉄道模型店というのは、多店舗展開ができないと言われていて、太田社長が2店目を出すときにも周囲からはおもいっきり反対されたそうです。ところが現在は10店舗、もうすぐ新たに4店舗ということで、どこがこれまでのお店と違うのでしょうか?とお聞きしました。

①スタッフの選定
 まず“スタッフの選定”ですと太田社長。鉄道模型の店舗スタッフに求められる能力は大きく分けて2つ。
 1)1つ目は鉄道模型の知識
 2)2つめは接客マインド

 両方の能力が高いに越したことはないのですが、初めからそのようなスタッフは少ない。普通のお店は鉄道模型の知識だけを重視するのですが、ポポンデッタでは接客マインドに注目したのです。鉄道模型の知識は少しばかり低くても、接客マインドのある人もスタッフとして採用し、鉄道模型の知識が高いスタッフとバランスよく配置するようにしたのだそうです。採用方法もホームページからは鉄道模型の知識の高い人、一般広告からは接客マインドが高い人を採用するようにしているとのことです。
 全スタッフは担当の職場が決まったら、1年以内に自分の職場の後継者を作らなければならないという1年ルールというのがあるそうで、これがスタッフの早期育成に大変に役立っているようです。店舗が日本中に広がっているので、やはり一番気を使うのはスタッフ同士のコミュニケーション。会議のやり方など現在工夫して試行錯誤中ですと太田社長。

②豊富な在庫
 次なるポポンデッタの特徴は“豊富な在庫”。通常の鉄道模型小売店は1カ月程度の在庫だそうですが、ポポンデッタは4か月分の在庫です。鉄道模型を製造する場合、小売店から6カ月ほど前に先行注文をとり、それを問屋が集計して、メーカーがそれに合わせて生産するという形態で、1度製造したら2~3年製造しないため、発売して人気が出るとあっという間に売り切れますが、不人気だと在庫の山ということになるのだそうです。だから普通は怖くて在庫を多く持てないのです。
 多店舗展開しているポポンデッタでは、全店の店長が他店の在庫を見られるようになっており店舗間で融通がききます。豊富な在庫と多店舗間の在庫管理のPOSシステムが、ポポンデッタの大きな特徴なのです。

③他にはない店舗づくり
 3つめの特徴は他の店舗にはない店づくり。一番特徴的なのは自分の鉄道模型を走らせることのできるレンタルレイアウトが全店舗にあること。秋葉原店では店舗2階のほぼ半分がこのレンタルレイアウトで、1番線から10番線まで同時に10台を走らせることができるのです。私が見学させてもらった時にも4名ほどの方が自分の鉄道模型を走らせ、熱心にその走りをチェックしていました。お店にとってこんなお金もスペースもかかる施設は普通作らないのですが、中古品の買い取りをしている時、鉄道模型の趣味を途中でやめてしまう人たちからその理由を聞き、最大の理由が引っ越しなどで自宅に走らせる場所を確保できなくなったことだということに気付いた太田社長。それなら思う存分自分の模型を走らせることができ、家族や恋人をつれてきても楽しい場所をつくろうという決意で、このレンタルレイアウトを作成しました。

④豊富な自社企画
 まだまだ特徴はあります。初心者向けの鉄道模型教室の定期的開催やスターターキット。東京ビックサイトやJR駅ビルなど大型商業施設への出張イベント。ポポンデッタのファンの方に60cm ×90cmのボードを渡して各々景色(ジオラマ)を制作してもらい、一同に会してそれを全部連結して鉄道模型を走らせる“ポポ鉄クラブ”というファンの集い。さらには世界の鉄道を見に行こうという旅行企画(第1回目はイギリスの保存鉄道)など盛りだくさんです。どれも太田社長やスタッフの方の手作りの企画であり、そこがファンの方々の高い支持を得ているようです。

⑤ファミリー層への浸透
 最後に最も大きな特徴は、従来の鉄道模型店がマニア向けだったのに比べて、マニアのニーズも十分に満たしながら、ファミリー層へ鉄道模型を普及しようとしている点です。ショッピングセンターや駅ビルなど、従来では考えられなかったファミリー層の多い場所に出店しているのです。“鉄道の持つ楽しさをより多くの人にお届けし、鉄道模型の力で人と人のコミュニケーションを活発化する”という太田社長の強い信念がその背景にあります。

 東京の杉並で育った鉄道模型好きの少年が社会人となり、徐々に少なくなっていくおもちゃ屋さんや鉄道模型店の現状を憂い、本業のかたわらで自ら始めたインターネットの中古鉄道模型店は、創業10年を経て今やその規模は日本一です。しかし、太田社長の夢はさらに先を見据えており、今後10年で50店舗まで増やしていきたいとのこと。

 環境的な視点からも見直されている鉄道輸送。鉄道模型を家族・友人・恋人とのコミュニケーションの活発化に役立ててもらいたいという、太田社長の理念が実現する日は近そうです。

◇ 株式会社ポポンデッタ
http://www.popondetta.jp/