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株式会社丸三電機 代表取締役 竹村元秀社長

高品質へ徹底的にこだわりつづける経営」legwork_noimage

 コンピューターをはじめ多くの産業機器は稼働中に熱が発生します。これは機械にとっては非常にやっかいな問題です。この熱をどうにかして逃がさなければならない。この問題を解決するのが、金属板を通して放熱する部品で、「ヒートシンク」といいます。今回おじゃましたのは、半導体用の「ヒートシンク」のリーディングメーカーである株式会社丸三電機です。竹村元秀社長にインタビューをさせて頂きました。株式会社丸三電機は、第1回千代田ビジネス大賞の優秀賞受賞企業です。

秋葉原の部品商からスタート

 株式会社丸三電機は昭和38年、秋葉原で誕生しました。株式会社秋葉原ラジオストアーの設立に参画していた竹村元秀社長の叔母が、秋葉原ラジオストアーの営業の一部を譲り受け、スタートしたのだそうです。最初は電子部品を販売する商社でした。
 竹村社長は、奈良県橿原(かしはら)市より大学に入学するために上京。卒業すると叔母の会社に入社して、15年間営業マンとして働くことになります。その中で商社機能の限界を強く感じるようになりますが、不良品や納期遅れ、コストアップなど、いくら改善の要求をしても結局のところメーカーに依存しているため、思うような改善ができない。こんなことをしていていいのかと考えていたのだそうです。
そこで昭和60年、自社生産に乗り出します。ヒートシンクメーカー丸三電機の誕生です。さらに工場で生産するだけではなく、製品提案や技術提案を行いさらに高いお客様のニーズを満たすために自社製品の開発にも進出します。開発・生産・流通という現在の体制はこうして作られたのです。

経営理念

 そんな中、平成2年7月突然叔母である社長から、社長を継承するように告げられます。8月に社長就任。それまでも幹部として活躍してきた竹村社長ですが、社長となるとわけが違う。何をどうしていいのか分からない。そこで近所の本屋に行って社長業に関しての本を6冊購入。猛勉強をしたのです。
 そこで決めたことが以下の3点。
(1) 経営理念を作ること
(2) 社員の健康診断をすること
(3) 人事労務の諸規定を作成すること

 健康診断はすぐに実行、人事労務の諸規定も外部の専門家の助けを借りて翌年には作成したのだそうです。
問題は経営理念です。経理理念を作成するといっても、これはそう簡単ではない。再び本屋に行って経営理念のついての書籍を買いまくって猛勉強したのだそうです。3ヶ月間の熟慮の結果、生まれたのがその後の株式会社丸三電機の骨格となる以下の経営理念です。

 『高品質・高効率の部品を供給(開発・生産・流通)することにより電子業界をはじめとする、あらゆる業界の発展向上に貢献する』
 『社員の“豊かさ”に向けて、企業福祉の増進・充実をめざし、その人生を有意義ならしめる』

この経営理念は事業計画書の最初に掲げられ、現在でも株式会社丸三電機のあらゆる行動の基盤になっているのです。

社訓

 経営理念と一緒に作成されたのが、社訓です。これがまた深い。
(1) 感謝 
あらゆる物、あらゆる人に時空を超えて感謝すると説明されています。現在お世話になっている人ということだけでなく、過去にお世話になった人、将来お世話になるであろう人などへの感謝です。これは創業社長から受け継がれている精神なのだそうです。
(2) 誠実(まごころ)
営業マンとしての社長の体験から生まれてきたのが“誠実”という社訓。営業マン時代は褒められることはほとんどなく(良くてあたり前)、クレームの処理ばかりだったという竹村社長。そこで“誠意に勝る戦略なし”ということに行き着いたのです。
(3) 協調
「人ひとりの力には限界がある。協調して無限の力を生み出す人間主義の経営を行なっていく。」という竹村社長の宣言です。「本当に社員の“豊かさ”にまで手が回せるようになってきたのはここ数年です。」とおっしゃる竹村社長ですが、処遇だけでなく、研修制度や人事制度など社内の改善にも余念がありません。
(4) 挑戦
株式会社丸三電機では、挑戦することが“あるべき姿”なのだという気迫に満ちた社訓。どんなに能力や知識があっても、挑戦する気力がないと何も創造できません。社員全員が自分の役割の中で新しい挑戦をすることが求められるのです。ヒートシンクでは日本有数の株式会社丸三電機ですが、その技術を使って精密加工部品という新しい事業への挑戦も始っています。

経営方針

 経営理念や社訓は毎年変化しないものですが、経営方針は会社を取り巻く環境変化に合わせながら、毎年社長から示されます。社長就任以来ずっと、3月に社長が3泊4日の山ごもりをして作成します。1年間の会社の資料、書き記したメモなど丹念に振り返りながら作成するのだそうです。4月上旬にその内容を社内に発表。発表といっても書いたものを配布するだけではありません。社長自ら重要ポイントを詳しく説明するのです。そして各部門、各人はそれぞれの役割の中で自分の目標を設定する作業に入ります。そして6月1日の新事業年度を迎えるのです。
 経営方針を示す会社は多いのですが、株式会社丸三電機が他社とは違う点があります。
(1) 経営方針それぞれに関して社長の解説がついていること。経営方針はどうしても短い言葉で抽象的に表現しなければならないことが多い。そこで社長が経営方針一つ一つに関して詳しい解説を書いているのです。これがまことに分かりやすい。製品には素人の私の頭にもスッと入ってくるのです。
(2) さらに、重要ポイントまでついています。解説の中で出てきたポイントに関してさらに掘り下げているのです。ここまでしつこい経営方針書も珍しい(失礼)。
(3) この解説の中に“現在の自分の行動を否定しなければ、改善はない”という一文が出てきます。株式会社丸三電機では“お客様に喜んで頂く”ということが経営理念の中に組み込まれていますが、社員に対し自分の行動、判断をそれに基づいて確認するように竹村社長は迫ります。そして、いやまだまだ喜んで頂いていない、今のままではダメなんだと否定できた時に初めて、新しい行動や改善につながっていくというのです。これはあらゆる我々の行動に応用できる、大変に深い話だと思います。

 経営理念に鑑み、その実現に向けて現在、何を行なうのかを具体的に示したものが経営方針になっています。

品質方針

 株式会社丸三電機はISO9001(品質マネジメントシステムの国際基準)、ISO14001(環境マネジメントシステムの国際基準)を全社一括で取得しています。
 その中で品質方針、環境方針を示さなければならないのですが、特に100%良品の製品をお客様に提供することを基本の目的とする株式会社丸三電機では、品質方針の徹底も特徴的です。一部ですが品質方針を紹介します。竹村社長の品質へのこだわりはほとんど信仰といってもいいレベルです。
 1. 品質はすべてに優先する
  *低品質だとすべて出遅れる。
 2. 品質があるからコストダウンができる
  *低品質だと安く造れない、合理的価格で販売できない。
 3. 品質があるから納期(量)が確保できる
  *低品質だと納期が遅れ、量を満足させられない。
 4. 品質があるから拡販出来る
  *低品質だと信用と市場競争力を失い売上が減少する。
 5. 品質があるから利益が確保できる
  * 低品質だとマイナス経費が倍増する。プラス投資ができない。

 株式会社丸三電機も現在の世界不況の波から逃れることはできず、売上は減少したようですが、この不況期に向かい竹村社長は動じる様子はありません。それは販売会社としてのお客様への正直な対応、製造会社としての品質の徹底、開発会社としての一年一新製品など、会社として“正しいこと”をやってきたという自信です。立ち上がりは相当早い時期に訪れるでしょう。
 社長就任直後の資産バブル不況、秋葉原全体を巻き込んだITバブル不況、現在の金融バブル不況と竹村社長は3つの大きな不況を乗り越えてきました。不況とは自らを反省できる時期であり、不況を他人のせいにせず、自社を成長発展させるきっかけとする大きなチャンスなんだと竹村社長はおっしゃいます。経営理念に基づく経営、経営理念による活動で、成長発展してきた株式会社丸三電機とその社員の方々ですが、経営理念の追求によって一番多くのものを得てこられたのは竹村社長ご自身であるような気がします。

◇ 株式会社丸三電機
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