株式会社リーテム 代表取締役 中島彰良社長
情報機器類等のリサイクルのリーディングカンパニーである株式会社リーテムに、2年前に企業探訪でお邪魔しました。その時よりも時代は、我々に環境への取り組みを求めるようになっています。そのような時代背景もあり、もちろん企業としての取り組みのすばらしさもあり、株式会社リーテムは第一回千代田ビジネス大賞の優秀賞を受賞されました。今回は二度目の企業探訪スタートですが、前回お話をお聞きした中島賢一(なかいじまけんいち)社長は会長となり、弟の中島彰良(なかじまあきら)社長が対応して下さいました。
2年前よりも進化した株式会社リーテムのお話をお聞きすることができました。
“埋めない”“捨てない”“燃やさない”
株式会社リーテムは明治42年に水戸でスタートした会社で、計算しますとなんと今年で99年目、現在の中島社長は5代目の社長です。平成9年に、支店のあった千代田区外神田に本社を移して現在に至っています。
情報機器の廃棄物を中心に、リサイクル企業として“埋めない”“捨てない”“燃やさない”というゼロ・エミッションを本気で追求してきた会社です。特に、平成5年にドイツから持ち込んだ金属機械の破砕と選別の機械システムを活用し、リーテム・リサイクルシステムを確立してからは、次々と時代をリードする取り組みを行なってきています。しかし、株式会社リーテムのすごいところは、リサイクルの技術だけではありません。
企業の社会的責任を明らかにするCSR報告書(Corporate Social Responsibility Report)を平成18年より作成し、公表しています。外部のコンサルタントを使って作成する企業が多い中、株式会社リーテムでは一貫して自社で作成しているのです。
また財務諸表や組織体制まですべて情報公表して、会社内の透明性を高めています。上場していない中小企業では、あまり情報公開には熱心ではありません。どちらかというと、なぜウチの会社の情報を公開しなければならないのかという考え方の社長が多い。株式会社リーテムの扱う環境というサービスは、非常に見えにくいということもあり、積極的に情報を公開して、顧客や社会に安心してもらおうという考え方なのだそうです。
平成14年には、東京都が進めるスーパーエコタウン事業に参画し、平成17年には城南島に最新鋭の工場を建設。平成20年には天皇陛下もご視察になられました。ちなみにこのスーパーエコタウン事業ですが、城南島と中央防波堤内側埋立地に日本でも最高の技術を持った8社の廃棄物処理工場が集まり、環境問題に関心のある人や企業にとっては一度は訪れなければならない場所となっているようです。遅ればせながら私も6月に見学をさせて頂く予定です。
さらに、平成19年度には経済産業省産業技術環境局長賞を受賞しました。これまでさまざまな表彰を受けてきた株式会社リーテムですが、自社のLCAへの取り組みを認められたことは非常にうれしかったと中島社長。LCAとはLife Cycle Assessmentのことで、ひとつの製品が「原料調達から廃棄」までに発生させる環境負荷を数値的に示す分析手法です。「原料調達から使用」までというのは一般的になっていますが、「廃棄」までというのはほとんど例がないのだそうです。水戸工場のLCA調査、東京工場建設時におけるLCCO2(※)調査及び工場操業におけるLCA調査の取り組みが評価されました。地味ですが非常に価値のある賞なのです。
※LCCO2とは・・・ライフサイクルシーオーツー。「建物を建てはじめるときから住人が住んでいる期間、解体にいたるまでのトータルの期間でその建物がどれだけの二酸化炭素を排出するかを示す指標」のこと。
日本、全国、そして世界に広がる活動領域
自社だけでは資源の円滑な循環は不可能であり、広範囲な環境問題を解決できないと考えた株式会社リーテムは、平成10年に全国リサイクルネットワークJ・RIC(Japan Recycle Improvement Committee)という廃棄物管理業者の全国リサイクルネットワークをスタートさせました。株式会社リーテムはその主幹事兼事務局を務めています。全国の廃棄物管理業務のレベル向上と統一化を目指して活動しており、さらに契約手続きや価格折衝までサポートしています。まさに業界のリーダーとしての役割を担っているのです。
さらに資源循環をアジア全体に広げようと、日本で培った網羅的な環境管理とゼロ・エミッション型のリサイクルシステムを導入し、国際資源循環のモデル工場を2009年に中国に建設する予定だそうです。
また国際的活動という意味では、2008年に早稲田環境研究所と共に北京で中国環境研究所を立ち上げました。環境・資源・エネルギーに関する調査・研究・コンサルティングを行なっています。
持続可能な社会を目指して
平成20年に中島彰良社長が就任し、大きく変わったものがあります。それは会社の理念です。事業そのものの説明をしたそれまでの経営理念に変わり、“サスティナブルな社会のために、グローバルな環境ソリューションを提供する”というものです。株式会社リーテムの事業としての方向性が、より一層明確になったと言えます。
1つめのキーワードは、“サスティナブルな(持続可能な)社会”ということ。株式会社リーテムが培ってきたさまざまな技術、そしてネットワークを活用し、資源の循環する社会のマネジメントを行なっていこうということです。その具体的な展開が地域でのエコセンター構想。個人・家庭単位や企業・学校・行政などの組織単位で行なってきた環境への取り組みのマネジメントを一本化し、地域全体での持続可能な地域社会を作っていこうという企画です。
もう1つのキーワードは“グローバルな環境ソリューション”ということ。環境の問題は日本だけでは決して解決しないことは、皆様ご存知だと思います。とうことで株式会社リーテムでは、中国をはじめとしたアジアや全世界的な環境問題解決策を提供しはじめています。
以上のように、株式会社リーテムの活動は廃棄物処理の分野だけに止まらず、非常にダイナミックに変貌を遂げています。その裏側には確固たるマネジメントのシステムがあります。これが株式会社リーテムの最大の特徴、強みです。リーテム統合マネジメントシステム(RISM)として、ホームページにもその方針が公表されています。
環境保全、情報セキュリティ、法規制遵守、労働安全衛生管理、委託先・売却先の遵法性の確認など、株式会社リーテムの活動の先見性と実行力は、すべてここから生み出されているのです。
どのような事業を行なっている企業も、自社に関わる環境という問題に関して無視することはできない時代になりました。環境問題から逃げて最後に大きな痛手を被るか、環境問題をチャンスとして捉え自社のビジネスの中に取り組んでいくか。分岐点となる時期が現在だと思われます。ビジネスのチャンスとして取り組んでいこうとする企業に株式会社リーテムは多くの示唆を与えてくれています。
◇ 株式会社リーテム ホームページ
http://www.re-tem.com/