玉川衛材株式会社 代表取締役 玉川幸彦社長
突然ですが、私の手元にある学研の漢和辞典『漢字源』によりますと、“衛生”の“衛”という字は“外をとりまいて侵入を防ぎ中のものをまもる”という意味なんだそうです。“生”は人間の生命。つまり、
・われわれ人間の生命を外から守るのが“衛生”
・その衛生の材料が“衛材”
ということで今回お邪魔したのは、「予防・衛生分野」でキラリと光る優良企業玉川衛材株式会社です。玉川幸彦(たまがわゆきひこ)社長と玉川雅之(たまがわまさゆき)経営企画部長のお二人にインタビューをさせて頂きました。玉川衛材株式会社は第1回千代田ビジネス大賞優秀賞の受賞企業です。
マスクのトップメーカー
名前を聞くだけでもおぞましいという方もいる“花粉症”。今はだいぶ勢力が収まってきましたが、春先の季節には私のデスクから確認できるだけでも数名の花粉症スタッフがマスクをして業務に立ち向かっておりました。現在はインフルエンザ。新型インフルエンザ大流行の兆しもあり、国民を挙げてマスクには大変にお世話になっています。
玉川衛材株式会社はこのマスクのトップメーカーで、非常に高いシェアを占めています。皆様の周りにあるマスクの包装袋に、マスクをしたクマのマークが入っていたら、それは玉川衛材株式会社の製品です。
ガーゼ、包帯、脱脂綿を衛材3品というのだそうですが、ガーゼを口元に充てられるようにということで開発されたのが、現在我々がお世話になっているマスクの始まりで、それまでは炭鉱などで使われる布製のマスクで“からすマスク”といって、真っ黒だったそうです。現在のようなマスクが世界的に普及したのは、1918年のスペイン風邪の大流行の時で、その後に1928年にニューヨークに端を発した世界大恐慌が起りました。今回も新型インフルエンザ流行の兆しがあり、その後世界経済の大不況と重なっています。新型インフルエンザの流行と経済不況は何か関連があるのでしょうか?話が脱線しました。すみません。
衛材メーカーとしての使命
衛生材料が多く使われる時というのは、病気、怪我、事故などが起こった場合です。これは使う側の我々消費者にとってはうれしくない、つらい場合です。「だからウチの会社では売上をどんどん上げていくことが目標にはなりえない。そうではなくて、消費者の方々が病気、怪我、事故といったまさかの時に確実に最高の製品を使えるようにすることが会社の使命なのです。」と玉川社長はおっしゃいます。安心・安全な製品を安定的に提供することが使命です。安定的に供給するというのは、まず使用する材料を徹底的に吟味することです。いい製品もあるが、時々悪いのが混じっていることもあるなんてことになれば、消費者はもちろん病院や研究機関などは絶対に使ってはくれません。
工場は木更津と上海にあり、木更津工場はGMP(薬事法に基づいて厚生労働大臣が定めた医薬品等の品質管理基準。Good Manufacturing Practiceの略)というとっても難しい基準をクリアし、上海工場に関してはISO9001(品質マネジメント規格)とISO13485(医療機器の品質保証のための国際標準規格)をクリアしています。上海工場の工場長は、工場の優良な労使関係、毎年の成長、適正な納税などが認められ、市政府から模範工場長として表彰され、近隣の工場長を集めた勉強会の講師を務めるほどなのだそうです。
研究開発が会社の命
これまでマスクの話ばかりしましたが、玉川衛材株式会社の製品ラインナップはマスクだけではありません。
・衛生用品 ・救急絆創膏 ・医薬品 ・医薬部外品 ・救急セット ・フットケア ・サポートベルト ・冷却グッズ ・うがいぐすり ・衛生フキン・タオル ・洗浄剤 ・花粉グッズ
など、衛生材料の中でも大変幅広い製品を取り扱っています。そこで玉川社長に製品開発についてお聞きすると、ズバリ“製品開発は会社の命です。製品開発なくして会社の将来性はありません”とのこと。さらに詳しくお聞きするとポイントは3つ。
① 中小企業は人、物、金、情報のどれも十分ではないが、開発においては特に人が重要であり、一人ひとりが創造性を発揮できる風通しの良いフラットな組織づくりを行っている。
② 技術革新の速い現代社会においては自社技術だけでは製品開発はできない。産学協同での製品開発を行っている。大学では様々な素晴らしい技術が開発されているが、その技術を何に使うかという製品化とどこに販売するかという点に関しては企業に一日の長がある。いい技術があると思えば、積極的に大学を訪問しますと玉川社長。
③ 最後に知的財産権で開発にかかわったメンバーの権利をしっかり守ること。これも大事な点です。
明るく元気な組織づくり
次に玉川社長の組織づくりの考え方はどのようなものですか?とお聞きしました。
まず組織は社員みんなが明るく元気であるというのが一番大事だと。疲れた顔をしていてはお客様を満足させることはできないでしょと玉川社長。それぞれの人間の能力にはそれほど大きな差はない。能力より執念のある者のほうが成果を上げる。だから“すぐやる”、“必ずやる”、“できるまでやる”という事を社内で言い続けているのだそうです。
組織・人事の運営に関しては
① 男女、学歴、年齢など格差を設けず実力主義の組織にする。
② 幹部・社員の悪いところではなく、いい所を探して、適材適所の配置を行う。
③ 過去の経歴や実績にとらわれず将来性や可能性から考える。
④ 社長・幹部から率先垂範することにより社員一人一人の道徳性を高める。
⑤ 不正のできない予防システムをつくり、組織内に罪人をつくらない。
⑥ 会社として何事にも真面目に地味に取り組み信用を築くこと
まだまだ出来ていませんがこういった点を心掛けていますとおっしゃる玉川社長。
最後に“ウチは卸売ではなくメーカーなので、
・自社で製造する
・自社で販売する
・自社で開発する
という3つを会社全体が連帯してやってきたのがよかったのだと思います“とおっしゃる玉川社長。
強い信頼関係のもと、他社とさまざまな協力・協働はするけれども、けっしてどこにも依存しない“自律企業”。そして積極的に自分から仕掛けていく“主体企業”。この2つが玉川衛材株式会社を訪問させて頂いて私が受けた印象です。玉川幸彦社長は4代目、玉川衛材株式会社は今年で創業110年の老舗でもあります。これからまたまだその歴史は長く続きそうです。
◇ 玉川衛材(株)ホームページ
http://www.tamagawa-eizai.co.jp/