昭和測器株式会社 代表取締役 鵜飼俊吾社長
2007年の11月に企業探訪でお邪魔した振動計一筋40年の昭和測器株式会社が、この度第1回千代田ビジネス大賞の優秀賞を受賞されました。ということで再び、鵜飼社長を訪問しインタビューをしました。
昭和測器株式会社は、振動計の日本におけるリーディングカンパニーです。他社ではできない超微小振動(ナノメートル単位:1ミリメートルの100万分の1)振動計など、振動計についての奥深さはどこにも負けません。詳しい製品ラインアップはウェブサイト(http://www.showasokki.co.jp/)を見てもらえればと思いますので、今回は経営戦略やマネジメントを中心にお話をお伺いしました。
中小企業が生き残るための3点セット
40年以上にわたり成長発展を続けてきた昭和測器株式会社ですが、鵜飼社長によれば中小企業が生き残るには、次の3点セットがなければならないとおっしゃいます。
(1)高い技術
(2)確実なニーズ
(3)中小規模の市場
やはりなんといっても“高い技術”です。他社には負けない、マネのできない高い技術がなければ価格競争に巻き込まれてしまいます。つぎに“確実なニーズ”です。世の中のニーズとこちらがもっている技術(シーズ)が結びついてビジネスが成立するのですから、世の中に確実なニーズがなければなりません。そしてその市場の規模は中小規模でなければならない。市場が小さすぎればビジネスにならないし、あまり大きい市場ですと必ず大企業が参入してきて中小企業は踏み潰されることになります。
昭和測器株式会社は、この3点セットが見事にそろっています。振動計測器についての他社にマネのできない高い技術があります。そして振動計測器というのは自動車、産業機械、航空機、船舶、電気機器、建築構造物など、さまざまなところに使われています。つまり確実なニーズがあるわけです。そして最後の中小規模の市場。幅広く使われている割には振動計というのはそれほど大きな市場ではないため、大手企業が本格的に参入してきてもあまりうまみがありません。だから、日本中の有力メーカーが振動計測器に関しては昭和測器株式会社の製品を使ってくれるのです。
新製品比率50%が目標
40年以上にわたり継続的な成長を果たしきた昭和測器株式会社の秘訣はなんですか?と鵜飼社長にお聞きしたところ、ずばり“新製品開発”とのこと。そのためにはまず世の中の動きを見極めることが必要だとおっしゃいます。鵜飼社長が会社を始めた頃、昭和測器株式会社の顧客は造船業が多かった。しかし徐々に製鉄業に移り、次に自動車製造業、そしてコンピューター関連業へと移っていったのです。まさに日本経済の移り変わりとともに変化をしています。当然顧客のニーズも変化していきます。このような変化はゆっくりとやってきるので、ボンヤリとしていてはその変化に気づかないのです。みんなが気づいたときには、もう遅いのです。変化の初期段階でそれに気づき、いち早く新製品開発に結び付けていくことが昭和測器株式会社の継続的な成長を支えているのです。
最近では世の中全体で安全・安心ということが注目され、顧客から安全・安心を守るためのニーズも多いのだそうです。昔からある発電所用の振動計などだけでなく、数年前エレベーターでの死亡事故が続きましたが、その後はエレベーターの安全をチェックするための振動センサーの開発依頼が増えたり、一方食品関連では、異物混入をチェックするため肉のスライサーにつける振動計への引き合いなどがあり、安全・安心が昭和測器株式会社の開発のキーワードになっているとのこと。
顧客満足とはもう一歩踏み込むこと
次に昭和測器株式会社で掲げている“顧客満足”ということについてお聞きしました。顧客満足の要素は3つあると鵜飼社長。まずは品質の徹底です。検査が厳しいことで有名な検査機関によるISO9001の認証取得、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底などメーカーとして品質の徹底は絶対にゆずれません。次に価格。お客様との長い関係を保っていくためにも、価格はできる限り努力して安く提供しているのだそうです。
ここまでですと多く会社とよく似ているのです。しかし鵜飼社長はもう一つあるとおっしゃいます。それは“もう一歩踏み込んだサービス”です。たとえば、設置した機械の点検に顧客に呼ばれた際に、ついでに他の機械も点検して帰ってくる。また、点検の際に発見した250円の電池切れをこちらの負担で交換してくるなど、ちょっとしたことですが、顧客からすれば“ここまでやってくれるのか”という感動をするのです。感動してもらうためにやっているわけではないけれど、“もう一歩踏み込んだサービス”これが顧客満足を支えている3本の柱の一つなのだそうです。マニュアルではできない会社の文化・風土、そして社員の皆さんの心からのサービスだと思います。
鵜飼社長の信念
前回の企業探訪でもご紹介をしたとおり、鵜飼社長は東洋哲学の大家安岡正篤氏を氏と仰ぐ大変な熱心な勉強家であり、経営者が正しい心がけを持たなければ会社は決して永続しないという信念をお持ちです。その中で経営者の心がけについてのいくつかをご紹介します。
(1)経営者は自分の“身の丈”を考えなければならない。調子に乗って“身の丈”を超えた無理な設備投資などをすると必ず大きな失敗をする。
(2)油断すると人間の“欲”は無制限に大きくなる。経営者の落とし穴はそこにある。普通で“足る”ことを知り、欲望を制限することが経営者には必要。
(3)会社の売上、社員数、設備、機器、評判など“見栄”を張ってはならない。“見栄”を張っても何もいいことはない。
(4)自分から主体的に“チャンス”を求めなければ“チャンス”はつかめない。“チャンス”自体は誰にでも平等に訪れる。つかもうとするかどうかは自分自身の心がけ次第である。
まだまだご紹介したいお話がありますが、キリがありません。
1年半ぶりにお邪魔しましたが、昭和測器株式会社の経営家戦略と鵜飼社長の経営信条には見事なまでにブレはありませんでした。世界中に不況の嵐が吹き荒れていますが、振動計測器の専門メーカー昭和測器株式会社の着実な成長はまだまだ続きそうです。
◇ 昭和測器(株)
http://www.showasokki.co.jp/