一般財団法人 高度映像情報センター(AVCC) 久保田了司理事
東京霞が関といえば、中央官庁が集まっている地区として有名ですが、文部科学省の古~い建物があったあたりの地区が再開発され完成しようとしています。その一角に霞が関グローバルナレッジセンター(仮称)なるものができるらしいのです。千代田の知の伝道師を自認しております。私(えっ?いつから?ほんと?)といたしましては、早速調べる必要があります。ということで、調べました結果、その企画運営をするのは財団法人高度映像情報センター(以下、AVCC)だということが判明致しました。早速、連絡をして理事の久保田氏にお話をお伺いすることができました。
視聴覚から情報通信・マルチメディアへ
AVCCは、1966年に設立された財団法人です。まずは、業務内容のご紹介ですが、以下のような感じです。
(1)普及啓発事業
ITに関する情報提供・交流・ネットワーク化
デジタルライブラリーの推進
公共ホームページ[good site]運動
ネットワークフォーラムの開催
(2)コンサルティング事業
調査研究・システム設計、CM、コンテンツ作成・運営
地方自治体の情報化、ネットワーク化、電子化を支援
(3)オペレーション事業
コンテンツ制作、教材開発、運用支援
映像(デジタル)コンテンツの企画作成
双方向遠隔教育&オンデマンド学習システムの運用
といった具合に、非常に幅が広い。しかも、私には相当難しそうです。ということで、今回は特に霞が関グローバルナレッジセンター(仮称)のことも含め、映像技術を活用した教育支援事業に的を絞って久保田理事にお話を伺いました。
まず、学習・教育の歴史からインタビューのスタートです。その昔よりずう~っと教育・学習のやり方といえば、一つの教室に生徒が集まって生の先生の話を受講するというのが当たり前でした。今風に言うと、”ライブ”です。”ライブ”は、講師の熱気や息づかいが伝わって素晴らしいのですが、その場所にその時間に行かないと受講できないという難点がありました。そのなかで国が音頭をとりまして、テレビやビデオなど映像技術を教育の中に取り入れようという動きが始まりました。学校に黒カーテンのある視聴覚教室ってありましたよね。普通の教室と違ってテレビが置いてあってなんだか私なんかは妙にドキドキしたものです。
しかし、1985年、ISDNの登場と通信衛星の商業利用開放によりいっきに”遠隔教育”が広がりました。予備校なんかでも衛生教室がたくさんつくられました。同じ場所でなくても受信設備があればどこでも受講できるという教育革命です。
さらに、ウインドウズ95が登場した1955年あたりをさかいにし、インターネット技術とDB技術の爆発的発達によりいつでも随時教育を受けられるという環境が急激に整ってきたのです。そして、21世紀に入りいよいよ”いつでもどこでも学べる”オンデマンド学習が本格化してきています。最近は企業や大学・専門学校などもPCでのオンデマンド学習が当たり前のようになってきましたよね。
AVCCでは、このように刻々と変化する学習環境を有効に活用して、学生や社会人がもっと効率的に学習でき、社会の中でパワーアップできるように支援をしているのです(教育支援事業)。AVCCが研究しているのは、映像技術そのものではなくて、それを活用するシステムや方法を研究して、普及しているのです。
具体的に言えば、”e-Learning”を取り入れたい企業に対して、そのシステム、コンテンツ、そして運用体制までも含めたサポートをしています。多くの企業や自治体がシステムやコンテンツまではひととおりできるのですが、運用体制をどうするかというところまではなかなか力が及ばないのだそうです。だからうまく行かない場合が多い。AVCCでは、その部分のサポートもしっかりやっているのだそうです。
AVCCが提供する教育内容
AVCC教育支援事業では、実際の教育コンテンツ作成もして公開をしています。人に勧めるだけでなく、”e-Learning”の実践をAVCC自ら行っているのです。”e-Learning”教材だけではありませんが、ビジネスマンや学生が能力向上のため教材をいっぱい集めた”しごと力向上教材ガイド”というサイトをAVCCで運営しています。いろんな分野に及んでいますので、まずは以下のサイトを見てみて下さい。
http://www.kyouzai.info/(運用停止)
※http://www.avcc.or.jp/を参照ください。
もう一つは、”viedeobrowser.jp”というサイトです。ビジネスマナーやビジネススキルなど役立ちそうな無料のコンテンツがいろいろ納められていますで、ご興味のある方は、以下のサイトをご覧になってしっかり勉強して下さいね。
http://www.videobrowser.jp/
※videobrowser.jpは「霞が関ナレッジスクエア」へ移行しました。
3つめにお薦めなのが、”エキスパートスタジオ”です。企業に入って10年目のビジネスマンのインタビューです。AVCCでは、新入社員の入社3年以内の離職率が非常に高いということをなんとかしたいという思いから、会社に入る前に、入社10年の社員は本当はいったい何をしているのかを正確に伝え、職業選択の際に参考にしてもらおうという趣旨です。求人と求職のよりよいマッチングを促進しようということです。入社10年目の活躍する中堅社員のインタビューがその内容です。
当たり前ですが、ヤラセはいっさいなし。バリバリがんばっている内容もありますが、苦労話もしっかり収録されているようです。まだ始まったばかりで現在4名ですが、これからいろんな業種・職種の10年生をどんどん登場させていこうという計画だそうです。これを見て自分もこんな職業につきたいなあと思ってがんばるような若者が増えていくことをねらっています。ご興味のあるかたは、以下のサイトからどうぞ。
日本の学校教育の中では、あまり職業選択教育というのを重視してこなかったんじゃないかというのが私の実感です。高校でも大学でも将来自分がつくべき職業についてその職業の知識を学んだり、自分の適性や希望を見直して職業を深く考えたりという機会はほとんどありませんでした。就職する前に、その仕事に関しての情報を収集できるという学校と企業を結ぶ活動をAVCCでこのような形で始められたのはすごく価値があると思います。
霞が関グローバルナレッジセンター(仮称:現 霞が関ナレッジスクエア)
いよいよ霞が関グローバルナレッジセンター(仮称)の話になりました。この地区は、霞が関と虎ノ門の接点にありして、文部科学省、金融庁、会計検査院などが入る中央合同庁舎第7号館整備事業(PFI)において展開される産官学連携エキスパート育成プロジェクトの一つです。
セミナーを収録してそのまま配信できるセミナースタジオ、遠隔地でも参加できるTV会議室、収録・編集・コンテンツ製作の設備機器を備え、グローバルな遠隔講座(教育)が簡単にできるようになります。これまで映像は金がかかると思われ中小企業には敬遠されがちでしたが、霞が関グローバルナレッジセンター(仮称)では中小企業でも気軽に映像を使った教育やサービスを提供できるようにしたいとのことでした。自社の商品やサービス、また社内教育に映像を使えないかと考えている方には朗報です。まだ正式名称が決まっていませんが、オープニングまでしばらくありますので是非注目しておいて下さい。
全国の大学や専門学校、図書館、企業、行政、国際機関などを結び、遠隔教育の大ネットワークをつくり、世界中のどこでもいつでも必要な教育が受けられるようにしていこうという壮大な計画の拠点でもあります。さきほど紹介した「エキスパート・スタジオ」や「viedeobrowser.jp」などもここが完成すればそちらで製作されることになります。
映像関連ビジネスでは、その設備機材のほとんどが日本製であるにもかかわらず、コンテンツやその活用方法は諸外国に遅れをとっている我が国日本。ハード分野だけでなく、ソフト分野での巻き返しがこのAVCCの運営する霞が関グローバルナレッジセンター(仮称)からスタートする予感がします。
◇一般財団法人 高度映像情報センター
http://www.avcc.or.jp/