株式会社リテールサポート 代表取締役 山内三郎 社長
小売業にとって万引きは非常に頭の痛い問題です。下手をすると利益のほとんどを万引きでとられてしまうなんてこともあるのです。ある雑誌を見ているとその万引きを捕まえてくれる会社があるというのです。雑誌を見た後にホームページをチェックしました。これはプロだと直感して早速企業探訪の取材を申し込みました。それが今回おじゃました(株)リテールサポートです。すごく忙しい山内社長ですが、快く取材に応じてくれました。
万引を捕まえる会社?
ところで皆さん、なんで商品を盗むのを”万引き”っていうのか知ってますか?私は分からなかったので調べました。お店の棚に並べてある商品を間引いて盗むので、”間引き”。これが語源で途中に”ん”が入って”まんびき”になったそうです。”万”は当て字のようです。
しかしまた山内社長はなぜ万引きを捕まえる仕事を始めたのか?これを最初にお聞きしました。山内社長のお父さんはもともと警備会社をやっていて、山内社長はその会社に入ったのですが、警備員を派遣するという仕事なのでほとんど他社との差別化ができない。ちょうど山内社長が入社したころはベンチャーブームだったこともあって、山内社長は100個以上の新しいビジネスを考えたのだそうです。その中の一つがこの「万引きを捕まえる仕事」だったのです。
最初は警備員を派遣している小売の店舗を対象に万引きを捕まえるプロを派遣していたのですが、実はこの仕事が大変なノウハウビジネスであるということに気づいたのです。しかもこれをマニュアル化できると確信した山内社長はそのノウハウ収集に取りかかります。このビジネスは大当たりして、スーパーや書籍を中心に着々と顧客を増加させていきました。万引防止に対するノウハウだけでなく、万引されにくい店舗レイアウトや設備や防犯カメラなど万引きを防ぐプロ集団としてのポジションを築いたのです。
商品ロス防止は奥深く幅広い
万引防止は専門的にいうと商品ロス防止策の一つと言えます。商品ロスというのは小売業では一般的に使われている言葉で、なんだかの理由でなくなっちゃった商品のことを言います。
例えば、鉛筆を100本仕入れます。
その後、鉛筆が50本売れたとします。
とすれば残りの在庫は50本のはずです。
ところが、棚卸(実際に数えて)をしてみると48本だったりすることがあるのです。2本足りない!
この2本の差を”商品ロス”と呼びます。なんと驚くべきことに小売業ではこの商品ロスは売上の1.7~1.8%程度あると言われます。年商10億円の企業で1,700万円~1,800万円です。ものすごく大きい。年間の経常利益が1%とか2%という小売業も多い中でこの商品ロスは本当に大きいのです。
商品ロスの原因が以下の3つに分けられると山内社長は言います。
(1)万引き
(2)社内不正
(3)伝票管理の不徹底
万引きを捕まえる仕事からスタートした(株)リテールサポートですが、現在は社内不正防止、伝票管理の改善という商品ロス防止全体を事業の領域として活動する会社になっているのです。
社内の不正を防止する仕事もけっこう会社からのニーズが多いようです。社内不正は業務を知り尽くした中堅社員がやる場合が多いため、平均すると万引きの20倍の被害があるのだそうです。顧客や業者との癒着なども含めると大変な被害額になります。業務を監査して不正を発見したり、不正が起こらないように改善したりするというのがこの仕事です。
万引きや社内不正は実質ロスといい、これとは違って伝票管理上のものは形式ロスといいます。このロスも企業には大きな損失も生み、伝票システムの改善や業務そのものの改善が求められます。当然現在の伝票システムはコンピューターでの処理がほとんどなので、コンピューター・システムの改善という領域にも業務は広がっているようです。
また企業のさまざまな不祥事が続き、法令の遵守、企業倫理の確立が求められる中、その方面の仕事も増えているようです。2005年の個人情報保護法に続き、2006年には公益通報者保護法が施行されました。今後、企業の内部者による外部通報が増加することは間違いがありません。企業における内部通報窓口の設置も推奨されています。
(株)リテールサポートでは「社内110番」という名前で内部通報窓口の代行サービスをスタートさせています。企業にとっては企業内部者による外部機関への直接告発を防止でき、社員にとってもいきなり危険な外部への通報という手段をとる必要がなくなるということから好評を得ているようです。
ダントツと独自ノウハウ
小売店の店舗間の競争はますます激化し、現場では少量多品種化が進み商品管理の手間がどんどん増える中で、人件費を抑えるために現場ではパート化が進んでいます。超大手のスーパーであれば、コンピューター・システムに大きな投資して省力化を図ることも可能でしょうが、中堅以下のスーパーでは独自でそんな投資は無理です。
ということで(株)リテールサポートのようなノウハウを持ったコンサルティング機関の助けが有効なのでしょう。商品ロスの防止というような企業内部で活用する経営ノウハウはほとんど社外に出ませんし、自社で考えるとすると大変に長い経験が必要なのです。
(株)リテールサポートは、現在35名ほどのスタッフがいらっしゃるようですが、それぞれさまざまな業界の商品管理や商品ロス防止のノウハウを持ったプロだとのこと。これまで試行錯誤を繰り返して蓄積してきた商品ロス防止のノウハウには絶対の自信がありますよと山内社長は話されています。
ただし、ノウハウを提供するだけでなく、商品を管理するのは人の仕事なので、その人に対する組織的なコーチングもしっかりしてくれるようです。やっぱり最後はそれをやる人の問題ですからねえ。
物を売ったり、仕入れをしたりなど会社の”攻め”の部分は会社が自分でしっかりやってもらって、万引防止や社内不正の防止など経営の”守り”の部分は当社に任せて欲しいと山内社長。商品ロスの削減は必ず結果がでますし、成功報酬型のコンサルティング報酬体型もあるようです。商品ロスというと小売業の問題という感じがするかもしれませが、社内不正の改善、伝票管理システムの改善ということであれば、製造業や卸売業など幅広く活用できるのではないかと思います。
業務の深さも、顧客の幅もこれから益々発展していく予感のする(株)リテールサポートでした。
◇株式会社リテールサポート
http://www.retail-support.co.jp/