キハラ株式会社 木原祐輔 社長
今回おじゃましたキハラ株式会社は、北海道から沖縄まで日本全国の図書館へのトータルサービスを提供し続けている会社です。
木原社長によれば大手事務機器メーカーを除けば、図書館専門でやっている会社は全国でも4社ぐらいしかないという非常に珍しい業種の会社です。具体的にいうと図書館の設備、各種用品、業務管理のシステムなどが取扱製品です。
神田駿河台にある歴史を感じる本社ビルの応接室で木原祐輔社長とご子息の木原一雄社長室長にお話をお聞きしました。
図書館の活用度
ところで皆さん、最近図書館に行っていますか? 私は自宅近くにも、職場近くにも図書館がありながら、ここ数年足を運んでいません。すみません。・・・ということで、まず最初に図書館の活用方法を4つのレベルに分けて確認しましょう。
(1) 4級レベル:図書館で勉強する。
受験生なんかがよく勉強してますよね。私も中学生のころに家にエアコンがなくて夏休みにあまりの暑さに図書館に行って勉強した記憶があります。
(2)3級レベル:図書館で本を借りる。
書籍だけでなく、CDやDVDなんかも最近は貸し出ししていてなかなか充実しています。借りるのはいいが、返すのが面倒くさい、というわがままな人(私を含む)のために、駅やコンビニで返却を受け付ける図書館も最近はあるそうです。
(3) 2級レベル:図書館で調べる。
何か調べたい場合に図書館は大きな力を発揮してくれます。図書館で調べたいテーマを聞くと関連書籍やもっと深い調べ方なども教えてくれるのです。ただ、この部分はどうやら日本の図書館は欧米に比べて遅れているようで、それは図書館の使い方の教育のレベルに問題があるようです。
(4) 1級レベル:図書館と連携する。
図書館の持つ資源と自社の持つ資源を連携させてお互いによくなっていこうというレベルです。役所、文化施設、学校、病院、企業などが地元図書館との連携方法を模索する動きが活発になってきているようでこれから注目の動きです。
トータルサービスで図書館を支える
というような感じですが、図書館自体もどんどん進化していて、その進化を支えているのがキハラさんです。特にキハラさんが他社と違うのは企画・開発・提案・配送・設置までトータルに行なうことができる点なのだそうです。
さすがに電動式移動棚や入退館管理システム等の製造は協力会社に外注しているそうですが、そのほかは全部キハラのスタッフが行ないます。設備の設置工事まで行なうのです。
東京、大阪、名古屋、北海道、福岡、仙台の6箇所に営業所があるのも、きめ細かいサービスを提供するためです。100名ぐらいの会社でこんなに営業所を出しているのでもわかるように、お客さんである図書館のために不効率なこともずいぶんやってますよと笑う木原社長。
キハラさんの一番の経営基盤である「図書館との深い信頼関係」を維持・発展させるために日常的なコミュニケーションやアフターフォローが不可欠なのです。
新しい図書館の動きを敏感に察知して「企画提案」することも重要です。
(1)新しい展示方法や設備
(2)効率的な管理システム
(3)防犯・防災対策
(4)環境に配慮した商品
(5)ICタグ
などなどまだまだあります。
キハラさんの社員のみなさんは提案する内容が多岐にわたっているので、勉強しなくてはならないことがいっぱいありますが、企画をしたり提案することが社員のヤリガイにもつながると思いますというのが木原社長の考え方です。
成長・発展させてきた秘訣は
木原社長は1965年に先代社長の急逝の後を26歳で引き継いで以来40年にわたり会社を率いてきました。社長を引き継いだころからすると社員数は3倍ほどになっています。
成長・発展させてきた秘訣はなんですか?とお聞きしたところ、
1) 社員に恵まれたこと
2) 本業に専心したこと
3) よく勉強してきたこと
かなぁ、と。
地域の文化遺産を図書館が中心になって保存する活動が始まったり、高級りんごで有名な長野三水村で栽培から童話までを扱う三水アップルミュージアム(現:いいづなアップルミュージアム)のような地域専門図書館ができたりしています。また、地域の文化・産業拠点としての図書館の役割が見直され、学校でも調べる学習が取り入れられたりして図書館への期待が高まる一方、行政の予算の問題で指定管理者制度の導入や図書館の評価の基準の見直しなど図書館経営の見直しも迫られています。
木原社長はすでに考えておられるようですが、このような大きな変化の中で図書館のビジョンや経営戦略といったところまで踏み込んだ企画・提案、つまり図書館へのコンサルティング機能がキハラさんに求められる時期がすでにきていると感じました。
図書館へトータルサービスを提供して92年、全国の図書館へ新しい提案を続けるキハラ株式会社でした。
◇キハラ株式会社
http://www.kihara-lib.co.jp/