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寶紙業株式会社 榊原社長 林副社長

社員の能力アップで激戦の業界を勝ち抜くlegwork_noimage

 紙業界は「再編統合」で大激戦

 千代田区はご存知のとおり伝統的に印刷・出版業の集まっている街でして、印刷会社、出版社、書店がいっぱいあります。今回はその印刷・出版になくてはならない「紙」の問屋、寶紙業株式会社におじゃまをして、榊原社長と林副社長から生き残りの秘訣をお聞きしました。

 創業は昭和15年ということですが、創業の10年間は日本中が戦中・戦後の大混乱期で、紙が統制品だったこともあり、昭和26年に寶紙業株式会社として組織化してスタートするまで会社も大混乱期だったようです。

紙の業界は

(1)製紙メーカー →(2)代理店(一次流通) →(3)卸商(二次流通) →(4)ユーザー

という流通経路になっているようでして、寶紙業は卸商(二次流通)に位置します。最近の業界の流れを一言でいうと、「再編統合」です。製紙メーカーは日本製紙グループと王子製紙グループに集約されてきており、代理店も統合が進み、メーカー・代理店の商権を無視した直売で東京に200社上あった卸商も今は130社程度、将来は100社を切るだろうというのが林副社長の予測です。
 つまり、ボヤボヤしていると会社が亡くなってしまうとても厳しい業界なのです。

 そこで寶紙業が勝ち残っていく戦略は何か?という問いにずばり

「社員の能力アップです」

というお答え。
 寶紙業が扱う紙は大手メーカーが製造している汎用性のある紙でして、極端に言えばどの卸売でもどの紙でも取り扱えるため、商品での差別化は出来ないといっていい。価格にしても少数の大メーカーの製品を扱っているので、大きな差は付きようがない。
 ということは、一人一人の社員が得意先へ提供するサービスの質が会社の業績を左右することになります。

社員の能力アップの方法

 ということで、寶紙業の生き残りの秘訣は他にもあるのでしょうが、今回は特に寶紙業が最も重視している「社員の能力アップ」の方法に関して突っ込んでお聞きしました。

 まず特徴的なのは社員の採用。
 寶紙業では高校を卒業して大学の夜間部に入学した人のみを新入社員として採用するのです。入学金と1年目の学費は会社が奨学金として貸し付ける制度もあります。勉強はしたいけれど資金的な理由で昼間の学部には行けないので、学びながら働くことを選んだ皆さんです。ダラダラ4年間過ごす多くの学生とは考え方が違いますよね。ただし、途中で大学を辞めちゃったら会社はクビになりますので、気をつけましょう(笑)。

 次は資格の取得支援です。
 日本洋紙板紙卸商業組合がやっている紙営業士(ペーパーアドバイザー)。
紙ということで名前は軽いのですが(失礼)、なかなか難しい資格のようでして合格率は25%程度だそうです。
この資格をとりますと手当が付くのです。

 さらに係長以上になりますと月1回、自分でセミナーや講座に参加することが隠れた査定の要素となっています。みなさん自分の興味のある分野に関して探し出してきて会社に申請して参加しているようです。

 まだあります。
 これは社員全員ですが、読書感想文。読む本は自分で決めるそうです。本が読まれなくなったら寶紙業も商売になりませんから、せめて社員も本に親しんで欲しいというのが社長の願いです。

 まだまだあります。
 これも社員全員ですが、各事業所のある町内の清掃活動。町内をきれいにする、会社をきれいにするというのが、自分の心をきれいにすることにつながります。自分で清掃したところは自分で汚したくないと感じます。
 寶紙業の倉庫や作業現場では、昔から責任者の方の指導により時間があれば現場の清掃をしていた習慣があり、清掃に関しては現場がリードしてくれているとのことです。品質管理、在庫管理などに整理・整頓・清掃は不可欠の要素ですので、このあたりも寶紙業の強さの秘密かもしれません。

 ちょうど今やっている親孝行月間なんていうのもありますよ、と言われて、それはなんですか?とお聞きしますと、対象は社長以下全員ですが、ことに新入社員は入社した月の翌月、つまり5月に1日の有給休暇と実家までの交通費を支給し、最初の給料の中から親御さんにプレゼントをするという制度です。ものをプレゼントする人もいるし、食事に誘う人もいる。
 大学の夜間部にしかやれなかったということで、親御さんとしては少し子供に対して負い目を感じている場合もあるでしょう。その子供が最初の給料でプレゼントをくれて、感激しない親御さんはいませんよね。
「その親の姿を見て、子供はさらに人間的に成長するのです。これも社員教育ですよ。」
というのが榊原社長のお話です。入社3年目までは感想文も提出します。

経営計画書が会社の羅針盤

 そして最後になりますが、寶紙業の羅針盤となっているのが社長が毎年作成する経営計画書です。
 この経営計画書は社長が中小企業家同友会メンバーを中心とするさまざまな人やさまざまな場所に出かけていって社長が勉強をして作成しているものです。社員に勉強しろと言うだけでなく、ご自身も何人かの師を持ち謙虚に勉強をされているんですよね。この経営計画書の内容は大変なボリュームでして、寶紙業においてはこれが社員教育のテキストになっているのだと思います。

 経営計画書は朝礼で輪読され、四半期ごとに進捗がチェックされるそうです。経営計画書を作成し始めて13年目だそうですが、これだけ継続して徹底することは寶紙業にとって大変な力となっています。製品や商品に大きな違いが出しにくい時代にあって、顧客の満足を向上させる決め手は社員の方々の日常のサービスであり、トラブル対応、クレーム対応などの緊急事態に社員の方々の能力のレベルが試されます。

 寶紙業は目先の知識やテクニックだけでなく、人間的な成長を目指して社員教育に取り組んでおられると感じました。社員教育の重要性は分かっていても、すぐに目に見える結果が出ないだけに取り組みが十分でない中小企業が多いのが現実でしょう。社員教育に真正面から向き合い、真剣に一つ一つ取り組んでおられる経営姿勢に素直に感動しました。

◇寶紙業株式会社
http://www.takara-shigyo.co.jp/