株式会社ジャパックス 大木敏夫 社長
みんなお世話になっているポリエチレンのごみ袋
私の住んでいる地区では、月曜日と金曜日が可燃ごみ、火曜日は不燃ごみ、土曜日は資源ごみでして、私はいつも出勤前にゴミ出しをするのですが、その際にいつもお世話になっているのがポリエチレン製の「ごみ袋」です。
何気なく使ってますが、もしこれがなかったら大変ですよ。
ポリエチレンでなく紙や布の袋だったら扱いにくくてしょうがない。ポリエチレンのごみ袋は軽くて破れにくいからとても扱いやすいわけです。たぶん皆さんもお世話になっているこのごみ袋で日本一を目指している会社が千代田区にありました。
それが株式会社ジャパックスです。
ポリエチレンのゴミ袋の会社に長年つとめて会社の日本一に貢献し、今度は独立してもう1回日本一のゴミ袋会社をつくろうとしているのが株式会社ジャパックスの大木敏夫社長です。
ジャパックスの海外生産戦略
ジャパックスの得意先で一番有名なところはどこですか?とお聞きしたところ、イトーヨーカドーグループで、PB商品のゴミ袋をグループ各社に供給しています、とのこと。ヨーカ堂、ヨークマート、ヨークベニマル、セブンイレブンなど日本全国を網羅する大変な数の店舗で販売されているわけです。ということは皆様もひょっとしたらジャパックスの製品を使っているかもしれません。またアスクルをはじめとする通販でもごみ袋を供給していますので、日本全国のオフィスにも広く浸透しているのです。
ただし、ジャパックスの得意先の7割は業務用だそうで、ビルメンテナンス会社、レストラン、病院などに業務用のゴミ袋を提供しています。ただしこれは直販ではなく、800社以上の業種別の専門問屋を通じて提供しているのだそうです。
さてこれからがジャパックスの特徴ですが、それはずばり
「海外生産戦略」
です。
現在ジャパックスの社員は30名足らずだそうですが、海外の生産拠点である協力工場がなんと25カ所とすごく手広い。しかも大手商社のお世話にならず、すべて大木社長をはじめとしたスタッフが1件1件開拓した信頼のおける工場だそうです。
国別にいうと中国、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムなど東アジア全域に広がっています。
海外生産成功の秘訣
汎用ポリエチレンごみ袋を海外生産する場合、原材料である樹脂は国内に比べて3割程度安く、工賃は現在一番安いベトナムあたりで日本の25分の1程度だそうです。これですと確かに安く製造できるはずです。しかし、これぐらいの知識なら少し海外ビジネスに興味のある方なら誰でも分かるし、少し勇気のある経営者なら海外生産を行うことは、今の世の中そう難しい話ではない。
ただし、ジャパックスのようにスタートから大成功して成長を続けていくことは結構珍しく、どうもうまくいかなくて撤退している会社も多いのが現実です。
なぜ、ジャパックスはうまくいったのか。
それを大木社長にお聞きしたところ、受注から納品までの全工程を完璧につなぎあわせることが大事ですよとのこと。
受発注システム、生産管理システム、在庫管理システム、国外・国内の物流システムなど全体が完璧につながって初めて円滑にものが動くので、1カ所でも詰まるとそこでものの流れが止まるのです。
それともう一つは生産拠点との信頼関係。
この工場に頼めば品質は間違いないという生産工場への信頼は、自分で工場に入り、現場のワーカーと触れ合うことで生まれてくるというのが大木社長の信念です。そのため大木社長は海外の生産協力工場に行っていることが多く、全然日本の本社にいない。
「なんでそんなに海外に行くの?年に1回ぐらいでいいでしょ」
とよく知り合いの経営者から言われますよと笑っておられました。
将来は海外との取引をしたいという若い経営者に、成功するための海外取引へのアドバイスをお願いしたところ、
(1)海外の工場や会社の現場に入って自分の目で現場を確かめること
(2)当たり前のことですが自らの専門分野を徹底的に磨くこと
(3)コミュニケーションのために少しでも自分で外国語を話すこと(社長自身今でも英語と中国語を勉強中です!)
(4)工場の経営者だけでなく現場のワーカーからの信頼を得ること
の4つですよというアドバイスを頂きました。
選択と集中で日本一を目指す
現在、ジャパックスは業界第2位の売上高だそうですが、将来の目標は業界第1位、売上は100億円が大きな目標かなあという大木社長。
「ただ数字だけにこだわるのではなくて、給与や労働時間の処遇を良くして一流の人材のいるいい会社にしたいというのが夢です。自分としては顧客の開拓、海外からの調達など最後まで現場にかかわりますよ。現場から離れると会社の舵取りを間違えますから」
とニコニコと笑いながらおっしゃる大木社長です。
顧客の要望で若干はゴミ袋以外もあるようですが、基本的にはゴミ袋に取扱商品を絞り込み、徹底した海外生産でコスト削減を実現させたジャパックスの「選択と集中」の戦略には中小企業として学ぶべきところが多いと感じました。
◇株式会社ジャパックス
http://www.japacks.com