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株式会社新世界 傅健興(ふうけんこう) 社長

神田神保町から広がる中華料理の新世界紀行legwork_noimage

 神田神保町には歴史的に有名な老舗の中華料理の店が多い。
 今回の企業探訪はその中で特徴的な光を放つ新世界菜館を経営する、株式会社新世界の傅健興(ふうけんこう)社長にその成功の秘密をお伺いした。

中華料理を食べるなら神田神保町

 神田神保町というと「本の町」という印象が大変に強い。それはそれで間違いではないのですが、実は中華料理店が結構多いのです。
 学生時代や社会人とて神田近辺で過ごしたことのあることなら分かると思います。しかも「新世界菜館」、「揚子江菜館」「三幸園」、「咸陽楼」など いわゆる老舗もたくさんあります。

 西神田に中国からの留学生を預かる宿舎があって今の日中友好会館ですが、神田周辺には中国からの留学生がいっぱいいました。留学生は相互扶助の精神が強いので一つ拠点ができるとどんどん増えました。集まった留学生達は当然お金がないから、中華料理店は店に留学生が来るとタダ飯を振舞った。近代中国建設の父である孫文は仙台で勉強してましたが、 活動の準備や段取りはこの周辺だったので必ず立ち寄ったようですし、中華人共和国建国時の総理周恩来なんかも神田で勉強をしたり飯を食っていたのです。そんなことで神田は一時中華街的な様相を呈していた時もあったのです。

 華僑の人たちは全世界で活動してますが、相互扶助というか、知り合いの金持ちを頼るという中国人気質のためにその街ごとに中国の出身地にかたよりがあります。社長の話によれば東京は寧波系の人が多いとのこと、傅社長もお父さんが寧波の人です。ちなみに横浜は広東系、長崎は北京系だそうです。今でこそ上海は大都市ですが、それはこの200年ぐらいの話で、それより前にあの辺の大都市といえば寧波でした。
 地図で見ると分かるのですが、寧波あたりから船で出航すると流れ流されて九州あたりに着くのです。遠い昔から寧波は日本との窓口で遣隋使、遣唐使は寧波で船を下りて長安まで歩いていんたのです。

新世界菜館の特徴は?

 新世界菜館の特徴は何かというとずばり3点です。

(1)上海蟹ナンバーワン
(2)紹興酒ナンバーワン
(3)技術とメニューの工夫

(1)上海蟹ナンバーワン
 濃厚な蟹味噌でおいしい上海蟹は最近日本でも食べられるようになりました。最初のころの上海蟹は品質がばらばらで、はずれも多かった。

 日本でおいしい上海蟹が安定して食べられるようになったのは傅社長の努力のおかげです。中国現地の上海蟹の生産状況が悪くてこまった傅社長は、自分で東京の渋谷区ほどの大きさの巨大な湖を使ってきれいに管理された養殖場を作ったのです。
 新世界菜館のホームページを見ると養殖場の写真が出ています。ちなみに天然の上海蟹もいることはいますが、中国の環境状況を知っている人は普通は避けます(笑)。

 新世界では自分の店だけでなく、卸売もしていて日本の有名中華料理店の上海蟹はほとんどウチの蟹ですよとのことでした。品質はもちろん、取扱量は日本でナンバーワンです。

(2)紹興酒ナンバーワン
 紹興酒、これは量ではなくて品質が日本一だという意味です。
 20年ほど前に、想像を超えたものすごくおいしい紹興酒を飲んだ傅社長はそれを輸入できる紹興酒を探したのですが、どの工場にいっても品質が一定しなくて困ってしまった。24リットルの瓶ごとに買うと1~2割は酸化している。
 これでは日本では通用しません。しょうがないから工場をまるごと買って、最高レベルの職人を雇って自分でつくっちゃった。このあたりが傅社長のすごいところです。これが今、新世界で出している

 「大越」

というブランドの紹興酒です。

 中華料理と同じように紹興酒も深いものがありそうですが、そのウンチクは私自身が飲んでからということにしましょう。ちなみに新世界に行くと3種類の紹興酒を味わえるテイスティングのセットがあるそうなので、みなさんも是非試して見て下さい。

(3)技術とメニューの工夫
 上海蟹と紹興酒の話はこのあたりにしまして、新世界菜館にはいわゆるお店の規模から考えると定番メニューは少なくて、季節に合わせて変わるメニューが豊富です。
 それはなぜかといいますと、各地よりその時期で安くておいしい材料を大量に仕入れて、それを工夫してメニューをつくるからだそうです。
 野菜などはたくさんとれる時期が一番おいしい、しかも値段は安い。中華料理はカットして調理するので曲がっていたり、大きかったり小さかったりする規格外の商品でも十分なのでさらに安い。そうすると、

おいしいからお客さんは喜ぶ、
     ↓
メニューの変更には技術と工夫が必要なので職人の腕は高まる、
     ↓
原価が安くなるので傅社長も喜ぶ

と、3者とも満足するのです。

 メニューを固定させてはいけませんよ、と傅社長は他の料理店へアドバイスするらしいのですが、面倒くさいのですぐに定番メニューを増やしてしまうのだそうです。
 さらに材料に関して傅社長のもう一つのこだわりは生産者の顔を見せるということ。公表するということです。新世界菜館で出している材料はみんな生産地がはっきりしています。
 そして生産者には新世界菜館で出している最終製品をお見せしたり、食べたりしてもらって、自分たちのつくった野菜などがどのようにお客さんへ出されているかを分かってもらうのだそうです。すごくみなさん喜んで、涙を出す人もいますとのこと。
 その結果、みなさん誇りと責任を持って材料を生産してくれるそうです。

経営者として大事なこと

 40歳まで料理人として鍋を振ってきた傅社長が現在のような事業家として成功された秘密はなにかなあと考えますと、以下のような点かなあと感じました。

(1)ナンバーワン商品を持つ。(上海蟹と紹興酒)

(2)世間の大勢とは逆を行く。
 世間(世界)の動向に注意を払い、体勢は気にせずに自分の信じた道を行く。いわゆる「逆張り」です。
 世間の流れに乗るだけでは決して成功できない。特に金融機関なんかが進めてきたことは必ず失敗すると思ったほうがいいですよ、とのこと。注意しましょう。

(3)迅速に行動する。
 最近食品業界では中国からベトナムにブームが移ってきていますが、傅社長のはなしではもう遅いそうです。今から進出してももういいところにはだいたい押さえられているのだそうです。

(4)その時その時の柔軟な対応
 傅社長は中長期的な計画は立てずにその時期その時期で大事な意思決定をしていくのことを身上とし、それによって柔軟な意思決定をしてこられました。

(5)最も大事なのは人脈
 自分には人脈のないビジネスはあり得ない、友人が命ですといいきる傅社長。特に異業種や異文化の人脈がビジネスのチャンスを広げるので、自分の仕事以外の世界と積極的につきあうことが大事です。ちなみに傅社長の趣味はワインとスキーだそうで、世界のスキー場に行ってワインを飲むのが楽しみだそうですが、この趣味によって広がった人脈も多いですよとのことです。

 新世界グループは新世界菜館(ディナーレストラン)、上海朝市(手軽な点心)、咸亨酒店(寧波家庭料理)だけでなく、中国に上海蟹、紹興酒、縫製の工場、ワイン、オリーブオイル、ノベルティ商品などの商社も展開するグループで、今回お話をお聞きした様子ではこれからもますます発展しそうな勢いです。

 まさに神田神保町の中華料理店から広がる新世界でした。傅社長は街づくりや観光振興に関していつも積極的に提言を頂き、千代田区としては大変お世話になっておりまして、これからも率直で、厳しくて、役に立つご意見をよろしくお願いします。

◇新世界菜館
http://www.sinsekai.com/