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株式会社奥野かるた店取締役 奥野伸夫 会長

オリジナルかるたで日本遊具の伝統を守る老舗legwork_noimage

 神保町の交差点近くで昼食を終えて帰る途中、”奥野カルタ”というレトロな看板と昔懐かしいゲームの品揃えに誘われてフラフラと店内に入ったのが、奥野かるた店との初めての出会いでした。

 店内に入った瞬間一気に30年ほどタイムスリップ。かるた、トランプ、カードゲーム、百人一首、すごろく、花札、囲碁、将棋、麻雀、ボードゲーム、手品、知恵の輪などなど懐かしい遊び道具のオンパレードです。テレビゲームのなかった時代、寒い日は子供も大人も室内遊びで盛り上がりましたよね。ちなみにウチの家はお金のかからないトランプ専門でした。ババ抜き、神経衰弱、大富豪(大貧民という地区もあるらしい)など、冬みかんを食べながら、こたつに入って時間を忘れてやりました。懐かしいなあ~。なお、いっしょに行ったスタッフは軍人将棋(行軍将棋)を見つけてえらく感動してました。(人によって感動する物はだいぶ違うようです)

 一般的に子供が遊ぶ普及品だけでなく、レトロで懐かしいもの、海外のもの、さらには江戸・明治・大正・昭和の歴史的で芸術性の高い貴重なものも置いてあります。古い百人一首も飾ってありますが、とっても素敵です。これら展示してある品々を見るだけでも行く価値はあります。

 前置きが長くなりましたが、今回は神田神保町にお店を構える奥野かるた店の奥野会長を訪問させて頂きました。

奥野かるた店の商品は”かるた”

 奥野かるた店は創業大正10年の老舗です。取扱商品はさきほどご紹介したとおりですが、特徴的なのはオリジナルのかるたやカードゲームです。現在発売中のものだけでも60種類以上あります。奥野会長に最近よく売れたのはどれですか?とお聞きしました。

(1)漢字博士・・・ヘンとツクリを組み合わせて漢字をつくる知的なカードゲーム。大好評につきNo1からNo3まで発売中。

(2)四字熟語合わせ・・・遊びながら四字熟語が覚えられて一挙両得。これまた大好評で続・四字熟語合わせも発売中。

(3)恐竜博士ディノカード・・・80種類の恐竜を最新の研究とリアルなイラストで紹介したカードゲーム。

(4)進化のかるた・・・アンモナイト、三葉虫など古代の動植物の進化を辿るかるた。絵札は復元画の第一人者小田隆氏による本格派。

(5)宮沢賢治木版歌留多・・・宮沢賢治の代表作50作を題材にした歌留多。とにかく版画が素晴らしい。特装版と普及版があります。

(6)武井武雄犬ぼう・・・今なお人気の高い童画家武井武雄が全盛期に作成した犬ぼうかるたの復刻版。ユーモアあふれる絵札は遊び心いっぱいで思わず笑顔がこぼれます。

(7)お魚かるた・・・築地市場で60年ほど前につくられた幻のかるたの復刻版。ユーモラスな絵札と機知に富んだ字札がとっても素敵です。

(8)お料理いろはかるた・・・料理研究家である中江百合氏が料理のコツや心得をよんだかるた。昭和の台所風景が伝わる懐かしい絵札は中江昭男氏の作品。

(9)百人一首 敷島・・・(社)全日本かるた協会監修の小倉百人一首の決定版。鑑賞用と競技用の2枚のCDがついています。

 お気づきだと思いますが、奥野かるた店のオリジナル商品は、人気キャラクターや一時の流行を追ったものはないのです。高い品質の本物を長く販売していきたいというのが、奥野会長の考え方です。まだまだありますがとても全部は紹介出来ません。是非ご自身でお店に行って、素晴らしい絵札と字札の世界を見てもらいたいと思います。

 現在は仕入商品もたくさんありますが、大手玩具メーカーと同じような商品を扱っても勝ち目はないので、すこしずつかるたやすごろくを中心にした奥野かるた店らしいオリジナル商品に絞っていきたいとのこと。

商品は狭く、販路は広く

 奥野かるた店の扱い商品は非常に狭くニッチですが、販路は非常に広いのです。日本全国の大型書店への直販、取次を通じての中小書店や百貨店への卸売、ネット販売、直営店舗という具合です。取扱商品を絞り込んで深いノウハウを蓄積し顧客からの圧倒的な評価を得る。同時に販路は幅広くしてその商品分野ではナンバーワンとなるのが、中小企業の代表的な戦略の一つですがこれを忠実に実行しているのが奥野かるた店なのです。

 年間で3つから4つ出されるオリジナルの新商品の企画はスタッフのみなさんで検討しているそうですが、お客さんからの持ち込みの企画もあるのだそうです。奥野かるた店では自社で工場を持っていませんので、商品の企画と販売をやり、製作はカードメーカーにお願いするわけですが、奥野かるた店のオリジナル商品のほとんどはなんとあの任天堂につくってもらっているのです。今や世界屈指のゲームメーカーである任天堂ですが、もともとはかるたや花札を作っていて、なんと今もその事業を継続しているのです。花札といえば顧客からヒジョーに厳しい品質が求められる商品ですので、任天堂のつくるカードの品質はかるたなども含めて非常に高いのです。創業当初からの取引ということもあり、奥野かるた店は任天堂と直取引している数少ない企業の一つです。

奥野かるた店の歴史と展望

 奥野会長のお祖父さんは奥野藤五郎という方で将棋の棋士であり駒師でもありました。棋士としては五段、そして駒師としてもものすごく有名な方です。日本将棋連盟所蔵の”宗歩好島黄楊柾目盛り上げ駒”は戦後、名人戦にのみ使われたという名駒中の名駒。名人駒と呼ばれるこの名駒をつくった人物が奥野会長のお祖父さんであり、奥野かるた店の前身奥野一香商店の創業者なのです。奥野会長のお父さん奥野徳太郎氏は棋士という不安定な道は選ばず、現在のような卸売業を中心に事業をつくっていったのだそうです。戦争による疎開での事業中断などもあり、神田神保町で再開したのが昭和27年。これ以来書店ルートを中心に開拓し順調に事業を拡大してきました。ところが昭和40年代に入るとかるた、トランプ、花札、百人一首の売上の伸びが止まり、昭和55年の任天堂ゲームウオッチ、昭和58年にはファミコン登場という遊具業界の大激変が起こります。

 このような大激変のもと、消費者にもっと近づきたいということで昭和54年には現在の地に路面店をオープン、そしてさまざまな商品の中、”かるた”に特化し、本格的に奥野かるた店のオリジナルかるたの企画開発を始めたのです。一般的な玩具業界とは一線を画し、”かるた”という狭いけれど奥の深い商品に特化する戦略がこの時期に形成されたのです。

 今後は学習、食育、環境問題、防犯・防災など教育的・社会的なテーマを扱った商品、歴史的で芸術的な作家の作品を扱った商品など大手のメーカーでは扱わないけれど社会にとって価値のある商品を世に送り出していきたいとおっしゃる奥野会長です。また千代田区で永年商売をしていることもあり、千代田区の郷土かるたもいつか機会があれば手がけてみたいということでした。千代田区は江戸城址をはじめとした史跡に恵まれ、題材にはこと欠きません。是非この企画が実現することを期待したいと思います。

 なお、夏の期間だけですが軽井沢に”軽井沢ちいさなカルタ館”を開館されています。毎年テーマを変えてさまざまなかるたを展示しているそうで、最近は毎年避暑で訪れる観光客や地元の人も楽しみにしているようですので、少し先ですが来年軽井沢に行かれたらお立ち寄りになってはいかがでしょうか。奥野会長が店主として迎えてくれますよ。