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中小企業の成長戦略

がんばる中小企業応援リレーコラム
~景気回復期を上手に乗り切ろう!

第4回 中小企業の成長戦略
中小企業診断士 柳 義久(やなぎ よしひさ)

皆様、明けましておめでとうございます。2014年が、「失われた20年」を脱して成長の年となることを祈ります。
今回リレーコラムを担当します中小企業診断士の柳義久(やなぎよしひさ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

先日、とある中小企業の社長さんと話していると、アベノミクスの成長戦略に関連して、「我々にとって成長戦略ってどんなことでしょうね?」と聞かれました。

私は、とっさに、「もう半世紀も前になりますが、アメリカの経営学者が企業の成長戦略を提唱していますよ」と言って、その概略を説明しました。社長は一瞬わが意を得たり、という表情になり、社員と議論をしてみるということでした。

 私は、そのことに気を良くして50年も前にアメリカの経営学者・アンゾフが提唱した企業の成長戦略について解説したいと思います。この成長戦略は言われてみれば、実に分かりやすくて、そんなことかと思うのですが、実行するとなるとなかなか難しいことなのです。

 いつの時代も市場は変化し、消費者ニーズは変わっていくのですからアンゾフの提唱は常に新しいのです。景気の回復期だからこそ、市場の変わり目だからこそ必要になる理論だと思います。

【アンゾフが提唱した企業の成長戦略】

アンゾフは、1965年に出版した「戦略経営論(Strategic Management)」において、企業経営は、長期的な計画とその実施が重要であると説き、以下に説明する「成長マトリックス」を提唱しています。

企業の事業領域について、市場と製品の二軸を設定、それぞれを既存と新規とに分けることにより四つの象限に分類して経営戦略をどう展開するかを分かりやすくしました。

graf1

四つの象限では、それぞれ次のような戦略により成長することが可能であると、アンゾフは指摘しています。

(1)市場浸透戦略

今の製品分野と市場分野との組み合わせで、現在の製品群で現在の市場を深耕して成長していく戦略です。

例えば、千代田区内だけで営業展開している事業者が、工夫如何でまだまだ区内での需要開拓が見込める場合、区内のニーズを深堀して市場シェアを高めて売上をアップしていこうという戦略です。既存の製品群はまだまだ市場のニーズに十分耐えうる魅力をもっている場合です。

 (2)新市場開発戦略

現在の製品群を、新規の顧客層や海外市場の開発など新しい市場に向けて販売することにより、成長を図る戦略です。
例えば、前例の事業者が、隣の中央区や文京区などに営業展開をして売上を伸ばしていく戦略です。また現在の製品群は市場ニーズに耐えうる魅力を持っているが、国内は少子高齢化や人口減少が進んで需要も減少しているため、現在の製品群をもって海外展開を図っていくことなどもこの戦略です。

 

(3)新製品開発戦略

 現在の市場に対して、新しい製品を開発して販売し、成長していこうとする戦略になります。新品種を追加して売上高やマーケットシェアを高めることです。

 例えば、前述の千代田区内で営業展開している事業者の例でいえば、売れなくなった既存製品に変えて新製品を開発して展開したり、既存製品に新製品を加えたりして売上のアップを図っていく戦略になります。

(4)多角化戦略

 全く新しい製品分野と市場分野に参入して成長を図る戦略です。最も戦略的で成功すれば、売上高、マーケットシェアの上昇は大きくなりますが、投資のリスクも大きくなる可能性があります。

 例えば、印刷業の企業が、遊休土地を活用して介護事業を展開したり、飲食事業に乗り出したりするような場合です。この場合には本業とのシナジーが弱く、十分な経営ノウハウもないため、需要の開拓が思うようにいかないといったリスクを持っていることです。

 日本の大手企業は1980年代には挙って多角化に乗り出しましたが、90年代に入り、「選択と集中」といって本業に回帰する企業が目立ちました。

【中小企業の成長戦略への示唆】

 アンゾフの提唱した企業の成長戦略を概観してきましたが、企業にとってなぜ成長戦略が必要なのかということと、中小企業に適した成長戦略はどれかということについて考えたいと思います。

graf2

先ず、なぜ成長戦略が必要かというと、どんなに売れている製品であっても、あるいは今花形の企業であっても、その製品・サービスがお客様に行きわってしまったり、飽きられたり、技術が進んだりと様々な要因によって、成長が止まり、成熟し、いずれは衰退していきます。(上図参照)

 だからこそ、新しい市場を開拓したり、新製品開発をしたりして時代のニーズに対応して生き残っていくことが、製品にも企業にも必要であるということになります。

最後にアンゾフが提唱したマトリックスから、中小企業に適した成長戦略を示唆しておきたいと思います。

 まずは、市場浸透戦略をとることです。その理由は中小企業の場合、自社の良さを市場に十分アピールできていないケースが多いからです。自社の製品・サービスをきめ細かく浸透させていく努力をすることで成長の可能性は十分あります。

2番目は、対象市場を少し拡大してみる新市場開拓戦略をとってみることです。自社の製品・サービスがこれまで対象としてきた市場では相当普及したが、まだまだ製品・サービスに力がある場合、市場を変えてみる必要があります。前述のように隣の区に進出すれば需要があるような場合です。

 3番目は、自社の製品・サービスが市場内に行きわたったり、時代にそぐわなくなったりした場合は、新製品開発戦略をとることになります。すでに対象としてきた市場に対して新しい製品・サービスを提供していくことになりますが、これまでに築いてきた信用や知名度があるはずですからやりやすいと思います。

 最後に残ったのは多角化戦略ですが、経営資源を十分持っていない中小企業には難しい戦略だと言われています。本業で儲かっていて経営資源に余力があれば、全く新しいジャンルに挑戦するのもよいと思います。

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どの戦略をとるにしても、常に新しいことにチャレンジしていくことが必要です。景気の回復を見極めながら、御社にとって最適な成長戦略にチャレンジしてください。

2014年のご繁栄を祈ります。