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企業評価を高め借入力・資金力をアップしよう!

がんばる中小企業応援リレーコラム 
~ 企業の社会価値を高める ~

第3回 企業評価を高め借入力・資金力をアップしよう!
中小企業診断士 倉持 紘宇(くらもち ひろのり)

 このリレーコラムも3回目となりました。
共通のテーマは、「企業の社会価値を高める」ですが、今回は趣向を実務的にして、中小企業・小規模事業者の方々の「借入力アップ」について、まとめてみました。
 区の経営相談員として、営業資金や創業資金の融資あっせんのお手伝いをしております。斡旋した案件が、金融機関や東京都信用保証協会(以下「金融機関等」といいます)の承認が100%得られるよう願っておりますが、実情はなかなかその様にはまいりません。
 そこで、今回は、融資の手順とポイントについてご案内します。皆様の会社の評価(信用度)を高め、必要な資金をスムースに借り入れができるよう、少しでも参考になればと思います。

1.融資判断の基礎

(1)融資は「信用」がもとで
 融資は、「信用事業」といわれるとおり、「信用」が基盤となっております。金融機関の資金は、お客様が信用して預けた「預金」が源泉です。金融機関は、この資金を、皆様を信用して貸付ける訳です。それだけに、各支店、担当者が、自分の思い思いに融資の可否を判断する事はありません。
 各金融機関とも、金融庁の「中小企業の金融検査マニュアル」等をベースに、「信用度」の基準となる「会社の格付」をして、融資判断の材料にしております。従って、借入をする場合、この「格付」は、避けて通れません。つまり、如何にして、「格付」を高くするかが第一の関門になるのです。

(2)「会社の格付(信用度)」
 それでは、その「会社の格付」とは、どのようなものでしょうか?あらましは、次の表のとおりです。

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さて、皆様の会社はどのランクになるでしょうか? 取りあえず、あてはめてみて下さい。大変厳しい内容と思いませんか?
実際に、中小企業の場合、①の「正常先」は少なく、東京都や各区の経営相談所にお見えになる会社・事業者の方でも、①の方はあまりないようです。
また、金融機関等も、格付だけで融資の可否を判断するわけではありません。
しかし、借入を申し込む場合、自分の会社の格付けを念頭に置いて、対策を講じる必要があります。

2.融資判断の 3 要素

 お気付きかもしれませんが、格付の材料は、会社の財務内容、つまり決算書です。決算は、既に「終わった」ことで、変えようがありません。
 しかし、金融機関等が、企業の過去の実績だけで、融資の可否を判断するとしたら、あまり実績のない会社やこれから成長する会社の芽を摘んでします。
 そこで、「過去」だけでなく、「現在」や「将来」も考慮することになります。過去の実績が振るわなくても、現在の実績・取組みが十分で、かつ将来性があれば、評価が上がり、借入の可能性が出てまいります。
 それでは、会社の評価を高めるためにはどうすべきか、留意すべきポイントを、過去・現在・将来に分けて考えてみましょう。
 まず横軸に「人」「物」「金」及び「お客」の「経営の要素」、縦軸に過去・現在及び将来の時間をとしたマトリックスを用意します。会社の課題が何所にあるかよく見えて、金融機関等にも説明し易くなります。

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(1)過去の評価:決算は誠実に
 評価の材料は、主として決算書です。
繰り返しますが、決算書は、変更はできません。従って、不用意な決算操作は、会社の信用を落とし、後々迄借入の障害となりかねません。特に、次の点にご留意下さい。
 ①無理な利益の計上はしない:減価償却費、厚生年金保険料等の社会保険料等の必要経費を計上していない、在庫・棚卸資産を売上(売掛金)に振替計上する等の例は×点です。この様な、見せかけの利益計上は、金融機関等の「プロ」の目には一目瞭然、信用を損ないます。
 ②マトリックスの「改善策」欄:来期に改善すべき課題(要素)を1~2 に絞って記入。③金融機関等への報告:決算の結果が悪いと、金融機関等への報告が辛(つら)くなり、足が遠のきます。しかし、悪い時こそ、金融機関に報告しましょう。その結果、適切な助言、営業の支援、更には必要な資金援助を頂けることが多いのです。

(2)現在の評価:社長さんの考えを具体化する判断の材料となる資料は、試算表、今期事業計画・予算書・予実対比表等です。
 前期欠損である、累積欠損がある等の格付け②、③の会社は、これらの資料を整備して、現在の評価を高める必要があります。
 ①事業計画、予算書:前期の課題を 1~2 点に絞り、その具体的な改善策を取り込んだ計画を作成しましょう。格付け②、③の会社は、この前期課題が適切に把握されて、今期改善されていれば大きなポイントとなります。「計画は社長さんの頭の中」というのは困ります。具体的に「見える化」し、ご自分で説明する事が大切です。
②計画が未達の場合:試算表、予実対比表で、後半期の見込みも添付し、具体的に説明する必要があります。

(3)将来の評価:(事業計画書)
 格付け③以下の会社は、融資承認を得るのはかなり難しいと思われます。将来性を認めてもらうことになりますが、そのためには次の様な対応が考えられます。
 ①本政策:債務超過を圧縮する方法として、社長さん等からの長期借り入れがある場合は、資本金に振り替える等資本金の増資策を検討する。
 ②中期経営計画の作成:会社の課題を抜本的に見直し、3~5 年の経営計画を作成します。その場合大切なことは、全社員の参加のもとに作成し、計画達成が社員のメリットとなることを周知することです。
 ③経営革新計画の申請:お勧めしたいのは、経営革新計画の作成・申請です。これは、中小企業新事業活動促進法に基づく中期的な経営計画のことで、新たな販路の開拓、商品・サービスの開発、生産方式の導入等新事業に取り組む計画等が対象となります。この計画を東京都に申請し、承認を得ますと日本政策金融公庫の低利融資等の支援措置が用意されています。作成にあたっては、東京都中小企業振興公社や商工会議所等の「無料」相談が何回でも利用できます。
 経営が壁に突き当たっている格付けランクが③~⑤の会社は、借入は難しいといわざるを得ません。起死回生の策として経営革新計画の作成をお考え下さい。
 着手から承認まで、早ければ8 か月~10 か月程度の場合もあり、急がば回れです。

3.補助金、助成金の活用

 中小企業・小規模事業に対しては、「新ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「下請中小企業自立化補助金」等様々の補助金・助成金制度があります。
 申請書の作成が面倒で、なかなか取り組めないとの声も聞こえますが、殆どの申請書は、上記経営革新計画の申請書の応用が可能です。その意味でも、まず経営革新計画の作成をご検討下さい。
 なお、経営革新計画や補助金・助成金制度について、関心のある方は千代田区の経営相談コーナーに是非お越し下さい。お待ちしております。