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“経営”と“経営資源”

がんばる中小企業応援リレーコラム 
~ 企業の“経営資源力”を高めよう ~

“経営”と“経営資源”
 中小企業診断士 三浦英晶(みうら ひであき)

1.“経営”とは

 このコラムでは、中小企業の皆様に向け、経営についてのさまざまなトピックスをお届けしていますが、そもそも“経営”とは何なのでしょうか?これにはさまざまな答えがあると思いますが、ここでは、“経営”を以下のように定義してみましょう。

経営とは、“経営者”が、“経営方針”をたて、“経営資源”を用いて、“事業を回していくこと”。

リレーコラム差し込み

“経営”をこのように定義すると、これらの1つ1つの要素が、経営に大きく影響していると考えられます。

(1)経営者
  言うまでもありませんが、もしその中小企業の業績が良い場合、それはその企業の営業マンが優れているからではなく、技術者が優れているからでもありません。経営者(社長)の実力なのです。事業に必要なさまざまな最終決定は、最終的なリスクを負っている社長にしかできません。その最終決定の連続の結果が、企業の業績となって表れてくるのです。
中小企業(や小規模事業者)の場合は、オーナー社長の割合が多いため、その傾向がさらに強くなっていると考えられます。

(2)経営方針
  “経営方針”と一言で言っても、さまざまな解釈がありますが、ここでは、経営方針を以下の3つに区別してみましょう。
①  志
  これは、「社訓」や「経営理念」などの形で、企業のオフィスに掲示されていたり、ホームページに掲載されていたりする場合が多くみられますが、別の言葉に置き換えると、その企業としての“在り方”です。自分の企業は、世の中においてどのような存在でありたいのか、もしくは自分自身(経営者自身)がどのような存在でありたいのかという、経営において最も大きなテーマでしょう。
それゆえに、「信頼」や「お客様と共に歩む」など、短い言葉でまとめられているケースが多くみられます。しかし、その短い言葉の裏には、なぜ「信頼」が一番大切なのか、なぜ「お客様と共に歩む」ことにしたのか、といった経営者のたくさんの“想い”が隠されていることでしょう。
②  ビジョン・目的
  “志”を大前提として、その次に位置するのが、「ビジョン」と「目的」です。この「ビジョン」と「目的」も、言葉の定義が曖昧で、人によってとらえ方が異なるところではあります。
ここでは、「ビジョン」を、経営者が持っている理念、志していることから導き出した“経営者がなりたい未来の姿”と考えてみましょう。たとえば、ベーカリーであれば、「いつも焼きたてのパンを店に並べ、それを食べた人はみんな健康で笑顔になるパン屋」といった未来の店の姿や、数字目標などです。
次に、ここでの「目的」は、“何(どの分野)でナンバーワンになることを目的とするか”であるととらえてみましょう。言い換えると、お客様から「○○ならばこの会社(店)」と言われるかどうかです。たとえばベーカリーの場合は、「カレーパンならこの店」とお客様から言われ、世間に認められることです。
ここで言う“ナンバーワン”とは、厳密に言うと“シェアNO.1”のことです。なぜシェアNO.1をとらなければならないのか、それは、シェアNO.1の者だけが、その分野の価格決定権を持つことができるからです。NO.2以下になると、価格決定権を持つことができず、価格競争に巻き込まれることになります。価格競争に巻き込まれると、自分の商品やサービスを適正価格で販売することができなくなり、十分な利益を出すことができなくなります。また、他社との競争に労力を費やすこととなり、企業として顧客に良い商品・サービスを提供することに注力することができなくなってしまいます。シェアNO.1の者だけが、商品・サービスを自ら決めた価格で販売し、利益率の高い事業を継続的に行い、そして稼いだ資金でより良い商品・サービスを開発していく、という好循環を保っていくことができるのです。
③ 戦略
  “シェアNO.1”と言うと、大手企業や一部の優良な中小企業についての話で、多くの中小企業には無理なのではないか、と思われるかもしれません。しかしそうではなく、全ての企業において、“シェアNO.1”を目的とすることが非常に重要なポイントとなります。この“シェアNO.1”をとるために検討するのが“戦略”なのです。
たとえば、自動車業界においてシェアNO.1の状態にある大手T自動車は、車に乗るすべての年齢層をターゲットとし、グループ会社で軽自動車からトラックまでフルラインナップの車を取り揃え、世界中で販売を行っています。しかし、中小企業の場合、人材は限られ、使える設備も限られ、資金も限られ、経営資源が十分でない状況です。この状況でシェアNO.1をとるためには、どうすればよいのでしょうか?そのカギとなるのは“しぼりこみ”です。ターゲット顧客をしぼりこみ、取り扱う商品・サービスをしぼりこみ、販売地域をしぼりこみ、そして、そのしぼりこんだ範囲の中で、シェアNO.1をとれるように考えていくのです。“戦略”の“略”は、“省略する”ということで、いかに省くか、ということも戦略の大きなテーマとなります。

(3)“経営資源”を用いて“事業を回していくこと”
  以上の“経営方針”をもとに、それをどのように実行していくかという具体策が“戦術”です。“戦術”は、事業の“やり方”(手段、方法)であると言いかえることができます。そして、この“戦術”を実行していくことは、「“経営資源”を用いて“事業を回していくこと”」です。
 “経営資源”は、ヒト、モノ、カネ、情報、と区分されますが、事業を回していくために用いる全てのもの(形あるもの、ないものも含め)です。

 “事業を回していくこと”については、“事業”を以下の2つの業務に分類して考えてみましょう。
① 基幹業務(主活動)
 基幹業務とは、顧客に価値を提供する(=利益を生み出す)業務のことです。例えば、ベーカリーであれば、
食材を仕入れる→パンを製造する→パンを店舗で販売する
という一連の業務になります。
② 支援業務(支援活動)
 支援業務とは、基幹業務を裏でサポートする業務のことです。例えば、従業員の勤怠管理、売上の集計、仕入先への代金の支払い、新たな商品の開発などの業務になります。

2.中小企業と大企業の大きな違い

 ここまで、“経営者”、“経営方針”、“経営資源”、“事業を回していくこと”について述べてきましたが、この4つの中で、中小企業と大企業とでは大きく違うものがあります。それは、“経営資源”です。何が違うのか、それは“規模”です。中小企業が持っている経営資源は、大企業に比べて圧倒的に少ない場合がほとんどです。大企業は、多くの人材を抱え、大規模な設備を構え、資金力もあり、事業に必要な情報量も豊富です。この“規模”が大企業の強みの1つと言えるでしょう。

 逆に中小企業は、この“経営資源”が少ないがゆえに、それを補うために、戦略や事業の回し方を独自に工夫しているのです。しかし、戦略や事業の回し方を工夫するだけでなく、経営資源についても、量(ボリューム)は少ないながらも、1つ1つの“質(クオリティ)”を高めることで力を付けることができます。

 ということで、本年度のこのコラムでは、「企業の“経営資源力”を高めよう」をテーマに、以後4回に渡り、ヒト、モノ、カネ、情報、について、それぞれをパワーアップするためのトピックスをご紹介していく予定です。