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“モノ”「制約条件の理論(TOC)による生産性向上」

がんばる中小企業応援リレーコラム 
~ 企業の“経営資源力”を高めよう ~

“モノ”「制約条件の理論(TOC)による生産性向上」
  中小企業診断士 草刈 利彦(くさかり としひこ)

1.ムダな在庫で利益がでる?

 経営者のみなさん、会社の目標はなんでしょうか。そう、お金を儲けることです。利益がでないと、従業員への給与の支払に困りますし、新設備導入も困難になります。社会貢献活動どころではなくなります。そんなこと今さら言われなくてもわかっているよ、と多くの経営者は思っておられるでしょう。ところが、従業員さんになると、その点は怪しいのです。
 
  先日しっかり原価管理を行いたいという企業にお伺いした時のことです。工程の資料を見ていると、10台の製品受注に対して、16個の部品を製造していることを発見しました。6個も多い。6個多く製造した理由を聞いても現場の方は答えられませんでした。その6個の部品は「在庫」になります。部品の材料費、製造に掛かった労務費などの費用は回収できません。利益を出すという会社の目標からすると「在庫」は悪です。TPS(トヨタ生産方式)では無くすべきムダを以下の7つに分類していて、在庫のムダも入っています。

① 作り過ぎのムダ
② 手待ちのムダ
③ 運搬のムダ
④ 加工そのもののムダ
⑤ 在庫のムダ
⑥ 動作のムダ
⑦ 不良をつくるムダ

現場は指示どおりの作業をやっているだけ。生産指示をだした生産管理部門が悪いのでしょうか。そもそもそのような生産指示などは出ていなくて、余分な材料があったから、その内使うだろうから、事前に作っておこうと現場が判断したのかもしれません。いずれにせよお金を生まない「在庫のムダ」を発生させたことには変わりません。ところが、経理部では別な見方をします。下の図をみてください。

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利益 = 売上高 – 売上原価
売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 - 期末在庫

なので、期末在庫が増えればそれだけ利益が出ることになるのです。お金を生まない在庫がふえると、利益が出る。実はこれは原価会計のダークサイドだと私は思います。

 

2.収入は制約プロセスにより制限される

 別な事例を見ましょう。企業A社は次のような2つの工程で製品を製造しています。

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  裁断工程は製品1個あたり6分掛かります。加工工程は製品1個当たり9分かかります。 この製品の1週間あたりの利益は現在40万円です。現在利益はほぼない状態です。さて、裁断時間を1分にする機械を40万円で購入する提案がでました。この投資案件について皆様はどう考えられますか。製造時間は15分から10分になるので、生産台数は増えるので投資するという考え方があります。本当でしょうか。裁断工程の処理能力が上がっても、加工工程の処理能力は同じなので、生産台数は増えず、売り上げも変化しない。したがって、利益が増えないのです。すなわち、会社の目的である利益は、製造能力のボトルネックである加工工程により決まっているということなのです。

収入が制約プロセス、すなわちボトルネック(例では加工工程)により制限されているというのが制約条件の理論です。

稼働率をあげることが大切ということを盲信して、ボトルネックではない裁断工程をフル稼働させ、ボトルネックである加工工程の前に仕掛品として在庫の山を築いたりしてはいけないのです。TPSではそれを「作り過ぎのムダ」、「在庫のムダ」として戒めています。
作らなくてもよいものを作らないように、TPS では「かんばん」を発明しました。後工程からきた「かんばん」がないと部品を製造しないことになっています。いつ生産しないかを明確にしているのです。

(注)TPS(Toyota Production System)はトヨタ自動車の生み出した、工場における生産活動の運用方式の一つです。かんばん、7つのムダなどのコンセプトを含んでいる。

 

3.制約条件に着目し継続的改善を行う

  制約条件の理論の英文名はTheory Of Constrainです。頭文字をとってTOCと言います。スループットという評価指標をTOCでは使います。システムが販売を通じてお金を生み出す速さのことです。たとえばA社のスループットは現在1週間あたり40万円です。TOCでは以下の5つのステップによりスループットの継続的改善を行います。

ステップ1 システムの制約条件を見つける
ステップ2 制約条件を徹底活用する
ステップ3 制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
ステップ4 制約条件の能力を高める
ステップ5 制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る

(ステップ1)
TOCでは工場内の製品流れを鎖にたとえ、鎖に常に弱い輪があるように、A社の加工工程のようにスループットを制限しているプロセスが存在するとしています。ステップ1ではいちばん鎖の弱い輪(A社の加工工程)をみつけます。
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鎖の両端を引っ張ると、一番弱い輪が切れる。鎖の強さはいちばん弱い輪に依存します。

(ステップ2)
ステップ2では制約条件を徹活用します 。A社では加工工程がふる活動できるように、材料切れにならないように工程の前に安全バッファーを置きます。

(ステップ3)
A社の裁断工程は加工工程の材料切れを起こさせてはいけません。裁断工程のような非制約資源は、加工工程のような制約資源より早くもなく遅くもなく動くべきなのです。安全バッファーは多くても少なくてもいけないのです。

(ステップ4)
ここでは、制約条件の能力アップを考えます。たとえば、シフト勤務を導入するとか、加工機械を増やすなどが考えられます。

(ステップ5)
 制約条件の能力を高めると、ボトルネックになっていたところが、他の所に移る可能性が出てきます。たとえば、A社の加工工程を2シフト制にすれば、単位時間当たりのスループットは倍になり、ボトルネックが裁断工程に移ります。そのような点に注意しましょうというのがステップ5です。
 ここまで、作れば売れると仮定してきましたが、生産能力が需要をうわまわることだってあるはずです。その場合には制約条件が販売に移ったと考えることができます。

 

 4.TOCは全体最適を目指す

  現場で生産性向上活動をおこなった結果ある工程では人が減ったと喜んでいると、実は従来からあった仕事を隣の工程に移しただけということもあります。また、制約工程でもないところの改善を一生懸命行ったものの 、スループット向上がないと嘆く現場もよく見かけます。
  どれも部分最適を追求するだけで、全体最適の視点が欠けている結果です。TOCはそのようなムダな活動を避け、全体最適を目指す活動を支援する考え方です。
  TOCはフォードシステムとTPSのDNAを引き継いでいると見ることが出来ます。フォードシステムは流れ生産を生み出しました。また、TPSは多品種少量生産での流れ生産実現を目指しました。両者ともスループットを最大にするために、全体最適を追求しています。
TOCは製造ラインだけでなく、あらゆる業種で活用できるように発展してきています。スループット向上に着目し、全体最適な生産性向上に取り組み、日本企業の元気を追求しましょう。