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“ヒト”「コーチングで自発的に活動する組織にしよう!」

がんばる中小企業応援リレーコラム 
~ 企業の“経営資源力”を高めよう ~

“ヒト”「コーチングで自発的に活動する組織にしよう!」
中小企業診断士 貝井 英則(かいい ひでのり)

1.経営者のみなさん、こんなお悩みを持っていないですか?

「従業員が社長である自分の指示待ちになっている。」

「もっと、自分で考えて仕事をしてくれたらいいのに。」

「仕事への取組みが他人事みたいに感じられる。」

「最近の若手社員が何を考えているのかさっぱりわからない。」

そのような経営者のお悩み、「コーチング」で解決できるかもしれません。

2.「ティーチング」と「コーチング」の違い

コーチングとは、人を育て、目標達成を促すためのコミュニケーションの手法です。部下の中にある答えを、質問を投げかけ、提案を促すことで引き出します。コーチングにより、社員の主体的かつ自発的な行動を促すことができます。一方で、これまでの一般的な手法は「ティーチング」と呼ばれ、上司が正解をすでに持っており、その答えを部下に指示や命令を用いて教えます。

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大量生産、工業化の時代には、ティーチングで手早く部下に答えを教え、それを効率的に実行すればよかったのです。しかし、今日では、ニーズの多様化、産業のサービス化が叫ばれています。それぞれの従業員が個人の能力を発揮し、目に見える成果を上げなければ、厳しい競争に生き残れなくなっています。「昔は、仕事は怒鳴られながら、目で盗んで覚えたものだ。」と思われるかもしれません。しかし、経営環境が変化するように、社員の気質もその育成も、時代とともに変化します。そのような変化に対応できなければ、人が採用できず、定着せず、育たない会社になってしまい、企業経営の大きな足枷になりかねません。

3.コーチングに必要な3つのコミュニケーションスキル

(1)傾聴
相手に共感しながら、話にじっくり、心を込めて耳を傾けることです。傾聴により、相手に自信を与え、信頼関係を築くことができます。傾聴するときは、話しやすい態度、うなずきとあいづち、オウム返し、気持ちを汲み取る言葉(共感のことば)、効果的な質問などの傾聴技法を使いながら、話を聴いていきます。

(2)承認
相手を正面から受入れ、存在を認めることです。ざっくり言えば、ほめるということです。しかし、単にほめるだけではありません。「できている部分」「やればできる部分」を的確に伝え、困難があっても最終的には「できる」という自己効力感を与え、モチベーションを上げるものでなければなりません。広い意味で相手の存在や行動を認めることで、「自分自身の存在を認めてくれている」と感じます。単にできあがった結果をほめるだけではなく、そのプロセスをひとつひとつほめることで、モチベーションが上がります。

(3)質問
適切な質問を投げかけ、視点を変え、気づきを与えることです。「質問」は、相手の中にあるものを引き出すうえで、とても重要なスキルです。

質問の投げかけを受け、部下は自分の頭で考え、自分で答えを生み出していきます。質問に答えるためにはまず自分の頭で考えなくてはなりません。考えるプロセスで頭の中が整理されていきます。効果的な質問は、頭の中の漠然としていた考えをより具体的なものにしていくことに役立ち、視点を変えて新たな可能性を見出すことを助けます。

4.「GROW」モデル

目標の設定(Goal)、現状(Reality)の明確化、行動計画(Option)、意欲(Will)の喚起(動機づけ)の頭文字をとったGLOWモデルは、コーチングの代表的な会話モデルです。ただし、必ずしもこの順番で行う必要はありません。
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一般的なコーチングのセッションは、理想の結果を思い描き、大切にしたい価値観、理想的なありたい姿を明らかにし、すでにできている現状を確認し、現状と理想のギャップを埋めるために、まずとりかかるアクションを設定する、という流れで行われます。

とくに目標の設定は重要です。しかし、実際のビジネスの現場では、目標は会社方針やノルマなどの形ですでに目標が設定されていることが通常です。もちろん、社員の理想や価値観と会社からの目標がリンクした目標を設定すれば、社員はその目標の達成への強いモチベーションが喚起されます。最終的にはそのような組織が理想です。しかし、まずは、会社からの目標を、自発的かつ自主的に達成できる社員を育成することを目指しましょう。

 

5.実践!コーチング

甲社長と営業マンである乙社員の、コーチングを用いた会話の例を見てみましょう。

甲社長「今月は売上目標に達していませんね」

乙社員「すいません。」

甲社長「今月の売上が達成できなかった原因は何だと思う?」

乙社員「A社への売上が思うように伸びなかったことです。」

甲社長「では、なぜA社への売上が伸びなかったのかな?」

乙社員「うーん。」

甲社長「では、逆に今月上手くいったことは何かな?」

乙社員「思ったより、B社への売上が多かったです!」

甲社長「おめでとう!具体的にいくらくらい売れたのかな?」

乙社員「○○万円です。」

甲社長「なぜ、B社への売上が上がったのかな?」

乙社員「そうですね。あっ、新製品のX製品が好調だったんですよ。」

甲社長「なるほど。X製品が売れたんだね。では、なぜX製品が売れたのかな?」

乙社員「えーっと。今までのY製品よりも性能がいいからでしょうか」

甲社長「それもあるよね。B社でとくに売上が伸びたのはなぜかな?」

乙社員「それは、B社に訪問した際に山田部長とお話ししているときに、○○で○○な製品が欲しいと仰っていたんです。それで、X製品をお勧めしたらすごく気に入って下さって。」

甲社長「山田部長のニーズを引き出したんだね。じゃあ、A社への訪問ではどうだったかな?」

乙社員「最近、A社に訪問する機会がなかなかなくて。」

甲社長「どれくらい訪問していないのかな?」

乙社員「えーっと。最後に訪問したのが3か月前ですね。確かに、待っているだけだと、注文がこないですよね。すぐにアポをとって訪問してきます!」

甲社長「そうだね。訪問しよう!」

乙社員「はい!」

甲社長「では、A社以外に売上目標が達成できなかった原因はないかな?」

乙社員「えーっと。」

甲社長「たとえば、C社への売上も前月から減っているんだけど、これはなぜかな?」

乙社員「あー、C社は今月値引きしたんですよ。」

甲社長「なぜ、値引きしたのかな?」

乙社員「競合のD社がC社に営業をかけてきまして。それに勝つために安い見積もりを出したんです。」

甲社長「うちは価格競争はしない、という方針じゃなかったかな?」

乙社員「すいません。どうしても受注したくて。実際に受注できましたし。」

甲社長「なぜ、値引きしないと受注できないのかな?」

乙社員「え、だって、お客様は安い方を選ぶに決まっているじゃないですか。」

甲社長「お客さんは価格だけで選ぶのかな?もし、君がお客さんだったら、価格だけで選ぶかな?」

乙社員「もちろん、品質や納期なんかも考慮しますよ。」

甲社長「そうだよね。じゃあ、うちも品質や納期もアピールすればいいんじゃないかな?」

乙社員「あっ。そうですね。確かに、値段だけじゃなくて品質や今までの実績なんかをアピールすることもできますよね。」

甲社長「じゃあ、いままでの話からすれば、来月はどういう行動をとるかな?」

乙社員「A社をはじめ、最近訪問できていないお客様への訪問を増やして、ニーズを引き出してきます。また、品質や信頼性をお客様にアピールして安直な値引きはしません。」

甲社長「わかった。ぜひ、がんばってくれ!」

乙社員「がんばります!」

いかがだったでしょうか。

「売上が達成できてないないじゃないか!どうなってるんだ!なんとしても達成しろ!」と怒鳴るだけで終わっていないでしょうか。
上記のコーチングの内容を要約すると、「お客様を定期的に訪問しなさい。値引きをするな。」というだけの話です。しかし、その結論を社長から伝えるだけでは、社員はやらされ感を持ち、問題の本質も理解できず、モチベーションも上がりません。
コーチングにより、社員が自ら気づき、自発的な行動を促しているのです。
コーチングの手法を使うのは、一見すると時間や手間がかかると思われるかもしれません。しかし、それによって自律的に行動ができる部下や、新しいアイディアを生み出せる部下を育成できれば、指示を待たなくても動いてくれるので、トータルでは社長の時間の節減にもつながっていきます。
最初から上手くいかないかもしれません。コーチングにはスキルや経験が必要な側面があります。まずは、社員の話を遮らず、肯定的にじっくり聞いてみること(傾聴)から始めてみましょう。