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【第12回】「理事会の引き継ぎを上手くするには?」

マンション管理士 飯田 勝啓

 「理事長を引き継いだが、何から手をつけたらよいかわからない」という相談をよく受けます。多くの管理組合は「輪番制」という、理事が一年で交代する方式を採用しています。立候補で長く理事を務める組合を除けば、引き継いだ最初はこれまでの経緯がよく分からないまま理事会がスタートし、運営に慣れてくる一年の最後になって任期満了、交代になったという話をよく聞きます。何も分からないまま、管理会社担当から「前期の理事会で決まったことです」と契約への承認を迫られたり、そうでなくても管理会社の言いなりに動いている管理組合が多数あることも事実です。かといって、ボランティアの役員を何年も務めることは難しいでしょう。こんな悩める管理組合でも、いろいろな解決策があります。

対策① 任期の延長

 管理組合役員の任期を二年とし、半数を一年で入れ替える方法です。これにより、前期の流れを知っている理事が半数残ることで、継続性が確保されます。平成25年度に実施した国土交通省のマンション総合調査によれば、役員任期2年制を採用している組合は35.4%。また、役員の半数改選制を採用している組合は24.7%となっています。ただし、一般的には役員の任期は管理規約で定めることになっているため、任期を変える場合は規約の改定が必要となり、そのため十分な合意形成が必要となります。

対策② アドバイザー

 任期を延ばせない場合には、3ヶ月~6ヶ月程度の引き継ぎ期間を設ける方法もあります。前期の理事がアドバイザーとして、引き継いだばかりの理事さんをリードします。

対策③ 引継書の作成

 理事会が終了し、次期に引き継ぐ際「引継書」を作成します。この中に取り組み中の案件がどこまで進んでいるのか、次に何をすればよいのかを具体的に記載しておきます。理事会としてするべきことが分かれば何事も進めやすくなります。

 引き継ぎに関連して、管理会社との関係にも少しふれておきましょう。ややもすると管理会社から受け身になりがちな理事会ですが、理事会が主体的になれば、この傾向を払拭できます。一般的に理事会には管理会社が同席することが多いのですが、管理会社の評価や管理委託契約の更新を検討する場面では、管理会社抜きで役員だけで話し合う機会を持つようにしましょう。それだけでも主体的な管理組合運営につながります。このように、ちょっとした工夫で円滑な理事会引き継ぎと主体的な管理組合運営を可能にすることができるでしょう。

次回は、【第13回】「マンションの火事で思うこと」です。