【第17回】「植栽とアフターサービス」
古くなっても価値の落ちないマンションに共通する特徴の一つに、魅力的な植栽があげられます。ビンテージマンションといわれるマンションには、必ず手入れの行き届いた緑が植えられていることに気づきます。 また、新築販売時の広告には、よく建物を彩る緑や花のイメージが描かれていますね。では、新築時のマンションの植栽はどの様に設計されるのでしょうか。
都内の場合は、マンション建築計画の際、東京都が定める緑化基準を満たすように計画されます。また、建物の設計と一体化して植栽設計を行うことが一般的です。しかし、建物の設計者は植物の専門家ではありませんので、緑化基準は満たしていても、適切でない植栽が行われてしまう場合があります。例えば、湾岸のマンションに塩害に弱いツツジやモミジを植えてしまうような場合です。
新築マンションを購入すると、売主との契約として、アフターサービスが付いています。
アフターサービスとは、引渡し後の不具合について、売主が無償で補修するサービスのことです。アフターサービスは、瑕疵担保責任とは違い、瑕疵の有無にかかわらず、一定の不具合を補修するというもので、売買契約により売主と買主の間で交わされる約束です。サービス期間は業界団体の「アフターサービス基準」に基づいていて、ほとんどの場合2年間とされています。このアフターサービスは、植栽にもついています。植栽のアフターサービスは、枯れ補償が1年間となっています。
それでは、引き渡しから1年過ぎて植栽が枯れた場合、このサービスが受けられないのでしょうか?
言うまでもなく植物は生き物です。アフターサービス期間中に間に合うようにと、地中に張った根を掘り起こしてまで確認することは出来ません。明らかに不具合があった場合は、サービス期間を過ぎても、売主が良心的であれば、対応をしてくれるでしょう。そのためには、管理組合がしっかりと交渉することが必要です。また、アフターサービスの範囲では、枯れてしまった植栽と同じものを植えることになりますが、新築時からの設計ミスが原因で、その土地に合わない植栽を植えてしまったような場合は、同じものを植えてもまた枯れてしまいます。
そうならないように、枯れた原因を専門家に調べてもらうことが必要です。植栽が枯れる原因は様々あります。環境条件(土壌、水はけ、日当たり、風)や管理条件(病気や害虫の放置、水やり不適)などを慎重に調査し、改善する必要があります。
大きく樹木の種類を変更するような場合は、敷地の植栽デザインの変更につながる可能性があるため、広く意見を求め、管理組合総会で承認してもらう必要があると考えられます。手入れが行き届いた植栽は、マンションの印象を良いものにし、住まいとしての快適な環境を作り、そこに住む人々に喜びを与えてくれるばかりでなく、資産価値の向上にもつながるでしょう。
次回は、【第18回】「マンション住民とお祭り」です。