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中小企業のテレワークの実現ポイント

第2回 中小企業のテレワークの実現ポイント

      中小企業診断士 中原(なかはら) 裕之(ひろゆき)

 

 新型コロナウイルス感染拡大で、急激に広まったのが、在宅勤務、テレワークです。テレワークでの最大のメリットは、「通勤時間を省ける」ことです。通勤時間がなくなった分、仕事に打ち込むことができ、体力的にも精神的にも良いことに見えます。一方、テレワークでのメリットの前提として「テレワークができる環境か?」という点は否めません。

 今回は、中小企業においてテレワークを実現するには何が必要か、現状を踏まえ述べたいと思います。

 

1 テレワークの現状

「働き方改革」の代表格ともいえるテレワークの推進は、進んでいるとは言えない状況でした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大前後となる2020年3月と4月を比較すると、テレワーク実施率は、緊急事態宣言の影響もあり飛躍的に増大しています。特に東京都は、3月が23%だったのに対して、4月は49%と企業の約半数はテレワークを実施しています。業種や業務によって一律にテレワーク実施率が高いわけではありませんが、朝の通勤も以前の大混雑とは別世界になっており、全体的には出勤する人は減少していると思います。

(図1:都道府県別・テレワーク実施率 参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図1:都道府県別・テレワーク実施率

 

2 テレワークの導入ポイント 

テレワークでの話はICT(情報通信技術)の話題がフォーカスされます。Zoomなどビデオ会議の話がたくさん出たと思います。しかし、ICTはあくまでもテレワークの「手段」で、一つの視点に過ぎません。

ここでは、テレワーク導入においてのポイントを、3つの観点で紹介します。

 

(1)ICTの観点(情報システム部門)

 最初の観点はICTです。「手段」としてICT導入は情報システム部門で推進していきます。目的は、「オフィス以外でも、安全で適切なシステム整備で働けるICTシステム、ツールを選択、導入すること」です。導入ポイントは以下の通りです。

 ①ICT環境の現状把握とツールの整備

まず、テレワーク導入ができるかどうかの観点で、現状のシステム環境を把握することです。現状を把握した上で、ビデオ会議、チャットなどのコミュニケーションツールや、在宅勤務を意識した労務管理ツールなどの検討となります。ただし、これらの前提として「一人一台のPC」があります。

 ②セキュリティ対策

企業情報の機密性から、セキュリティ対策は最大の課題です。

まず、セキュリティ方針、ルールを示す「セキュリティポリシー」の確立を実施し、その方針に従いアクセスやウイルス対策の技術的な対策をします。ICT関連機器を設置している部屋への入退出、施錠などの物理的な対策を立案し、安心して使えるテレワークにします。

 

(2)人事・労務の観点

 テレワークを、さらにいえばそこで使用するICTを効果的に運用するために、適切な労働環境になるよう人事・総務部門による「ルール」作りが必要です。人事・労務の観点における導入ポイントは以下の通りです。

 ①労務管理制度の現状把握とテレワークにあった制度の整備 

通勤を前提として、現状の労務管理制度の現状を把握した上で、テレワークにあった労務管理に整備します。テレワークに整合した就業規則の変更、人事評価、勤怠管理の整備が必要です。また、社内教育、研修制度も在宅でできることも必要です。実際、新人教育をすべて在宅・テレワークで実施した会社もあります。

 ②在宅勤務によるコストの扱い

在宅勤務では、自宅で使用するPC、PCとの接続にて生じる通信費、自宅での電気代、椅子、デスク代など多数コストが生じます。また、毎日出勤する必要がないため、「通勤定期」をやめた企業もあります。これらのコストは基本会社負担のため、コストの扱いを検討する必要があります。

 ③健康管理

意外に難しいのが健康管理です。在宅で勤務する場合、動くことが少なくなるため必然的に運動不足が起こります。また、勤務時間に縛られない反面、生活のリズム管理も難しく、これらの影響で健康を損ねる方が多いと聞きます。従業員の健康管理も検討事項です。

 

(3)実施・推進の観点

 最後に企業として、テレワークを推進する観点が必要です。推進の目的は「テレワークを導入する上で用意すべき体制や理解を得る方法と、その後普及させていくために必要な体制を整備し、実行すること」です。ポイントは以下の通りです

 ①推進体制と導入部門のサポート体制の確立

まず、テレワークを推進する体制の確立です。主に経営企画、人事・総務部門を中心に推進していきます。また、テレワーク導入に対するサポート体制を、情報システム部門などと連携して確立する必要があります。

 ②説明会・研修会の企画・実施

 今回の新型コロナウイルス感染拡大に、いわゆる「なし崩し」でテレワークを始めたところもあるかと思いますが、テレワークを普及させるためには、本来テレワークに関する説明会、研修が必要です。「使い方=ICT」、「制度=労務管理」に関して説明した上、意見交換して進めるのが、本来のあり方です。

 ③テレワークの評価・改善方法の確立

テレワークを導入しても通常業務と比較してうまく行かないことがあります。実際、生産性が上がらないため、テレワークをやめた企業もあるようです。テレワークの状況のPDCAをいかに回し、評価した中から、生産性を上げるためいかに改善していくかが重要となります。

以上、「手段=ICT」「運用=労務管理」「実施・推進」の3つの観点で企業としてテレワークを進める必要があります。検討すべきことは多いことを承知の上、推進してください。

 

3 テレワークの課題

 ただ、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下にもかかわらず、通常通り出勤した人もおり、これらの現象は課題があることの証明であると考えます。

テレワークの導入の課題としては、データの共有、通信環境などICTの課題も多いですが、部屋、机などの自宅環境、仕事のオンオフの切り替えなど、労務管理での課題もあります。また、在宅により、オンオフの切り分けが難しく、場合によってはオーバーワークになる可能性があります。テレワークを続けるために、これらの課題の検討が必要だと考えます。(図2:テレワーク(在宅勤務)の課題 参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2:テレワーク(在宅勤務)の課題

 

4 中小企業へのテレワーク施策の活用

テレワークの導入は、現状、中小企業よりIT投資に多くかける大企業が進んでいるのは事実であり、従業員が100人以下の企業の導入率は20%以下です。(図4:企業規模別(従業員数別)・従業員のテレワーク実施率 参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図3:企業規模別(従業員数別)・従業員のテレワーク実施率

 

IT投資がなかなかできない中小企業に対して、国や東京都はテレワーク導入の促進のための助成金、補助金等公的支援制度を用意しています。施策の中には、「働き方改革推進支援助成金」のようなテレワーク導入コンサルティングなどソリューション関連を対象としたものもあります。

施策に関しては、認知はされていますが、まだ活用まで至っていないのが現状です。テレワーク導入検討をしている場合、自分で抱え込まず、ITや業務コンサルティングの専門家など関係者への相談の上、検討してみましょう。

(図4:テレワークに関する助成金・補助金・公的支援制度の認知度・活用度 参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図4:テレワークに関する助成金・補助金・公的支援制度の認知度・活用度

 

5 テレワーク実現の最大のポイントは「経営者次第」

 上述の通り、中小企業ではテレワークの導入率は低いのが現状です。ただ、大企業も実は過去のシステムとの整合性、および現状の業務体制で満足している経営者の決断で、テレワーク導入がしづらいという話も聞きます。逆に、とある10人規模のグッズ関連の卸売業の経営者の意思で、在宅勤務を実現し、今も継続していると聞いています。そのような話を聞くと、企業規模は関係なく、経営者の決断が大きい要素ということがわかります。

ビジネスの前提は必ずしも「対面」でなく、「非対面」の場面も増えています。経営者としては、「テレワークはあくまでも業務方法の手段の選択肢が増えた」と捉えて、現状を踏まえ、企業として、顧客から見て最適な業務は何か?という視点で、「新しい仕事様式」であるテレワークでの「業務改革」の検討をお勧めします。