中小企業のバックオフィスの効率化
1.バックオフィス業務について
バックオフィス業務とは、企業のフロントエンドサービスやビジネス活動とは異なり、顧客と直接的な関わりが少ない業務で、企業経営に必要な経理や人事などの事務的な業務のことです。特に中小企業では経理と人事が分かれていないことが多いため、ほぼ経理や総務の人が給与計算なども含めて一手に担っていることが多いかと思います。この経理や人事の業務は、効率化できるITツールが多く出てきているにも関わらず、多くの中小企業においては業務が長年にわたって変化していない領域です。その要因は、長年務めているバックオフィスのスタッフが安心して仕事ができることを優先し、過去と同じ方法で業務を行い続けているため業務改革ができていないことと、税理士などの専門家もIT活用を想定していないことが要因となっています。
一方で、近年、様々なITツールがSaaS(Software as a Service)で登場し、少額の投資で効率的な業務運営を実現することができるようになってきています。
今後、バックオフィス業務のIT活用による効率化をどのように進めればいいのかをお伝えしていきます。
2.バックオフィス業務の効率化のポイント
バックオフィスの効率化のポイントになる業務は、会計業務、経費精算業務、給与計算業務などがあります。特に見直しを進めるポイントは会計システムにどのようにつなげていくかを考えながら業務の流れを構築することです。
(1)会計業務の業務効率化のポイント
【会計業務について】
会計業務は企業の取引を記録することを目的とした、お金の出入りを帳簿にした決算までの一連の業務のことです。帳簿をつけて保存して、税理士に書類を送って決算事務を委託するケースや、会計ソフトで仕訳をいれて、データを税理士に送って決算をしてもらっているところがあります。今回は、会計ソフトを利用している企業の効率化のポイントについて見ていきます。
【会計業務の効率化の着目点】
会計業務において、業務効率化のポイントは二重三重にデータ入力作業をしていないかを確認します。例えば、債務を支払うために買掛金管理台帳などをExcelなどで作成していて、さらに同じデータを会計ソフトにも入力しています。他にも、買掛金台帳から月末に銀行へ振り込むときもそのデータを見ながらネットバンキングなどへ金額を入力することもあります。
こうした、同じ内容のデータにも関わらず、手作業での入力が複数回行われるためミスがないかのチェック作業が増えていき業務を肥大化させます。
【会計業務の解決方法】
会計ソフトは、多くのツールがCSVファイルなどでの仕訳のインポート機能をもっています。最近のITツールでは請求書をスキャンしてアップすると、AI-OCRとオペレーターが変わりにデータ入力を行い、銀行への支払いデータ作成とともに、仕訳データ化できるものが出てきています。
参考ツール
マネーフォワード クラウド債務支払:https://biz.moneyforward.com/payable/
(マネーフォワード クラウド債務支払は、マネーフォワードクラウド会計のスモールプランやビジネスプランに契約していると10件まで費用は変わらず、その後、1件300円+オペレーター入力20円。)
Invox:https://invox.jp/
(仕訳プランまで入れると月額料9,800円となり、オペレータ確認ありだと1件100円。)など
こうした会計ソフトと債務管理ツールなどを利用して、データ入力そのものを外部に出し、二重三重のデータ入力作業をなくして効率化し、入力ミスを防ぐことができます。
(2)経費精算業務
【経費精算業務について】
経費精算業務は、社員が使用した経費を申請し、会社がその経費の支払いを行う一連の業務です。社員が提出する際に、紙フォーマットの精算書類を使っているところや、Excelなどで入力して、社内で申請しているところなどがあります。
【経費精算業務の効率化の着目点】
経費精算業務において、営業がExcelなどに入力したものを、経理担当者も会計ソフトへデータ入力し、さらに給与計算ソフトにも入力するなど三重にデータ入力作業がおきています。例えば、営業社員が交通費や会議費などの発生した経費をExcelなどでまとめ、交通経路や領収書など証憑を経理に一緒に提出します。経理では、提出された経費の証憑とExcelを確認し、時には別途調べるなどして問題がなければ営業社員へ経費を支払います。支払い方法は、現金で精算しているところや、給与とあわせて支払っている企業などがあり、その後、経費精算内容について会計ソフトへ入力しています。
(3)給与計算業務
【給与計算業務について】
給与計算業務は、従業員の給与の計算、給与明細の作成、給与支払いをおこないます。給与計算は、従業員の労働時間から残業代の計算、休日出勤手当を計算し、勤怠集計を行い、給与明細を作成します。
【給与計算業務の効率化の着目点】
タイムカードの場合は、経理側で手入力をして集計している場合に、転記ミスが起きる可能性があります。また、Excelなどで記録をしている場合には、法律違反の勤務状況に気づけない状態になっている可能性があります。
【給与計算業務の解決方法】
問題となる勤怠管理についてクラウド型の勤怠管理ソフトを使うことで、最初に設定をしっかりと行えばデータ集計は自動的にシステムが行います。
給与計算ソフトは勤怠管理と連携するものを選ぶことで、毎月の業務をミス無く実施できます。
参考ツール
マネーフォワード クラウド勤怠:https://biz.moneyforward.com/expense/
(マネーフォワード クラウド勤怠は、マネーフォワードクラウド会計のスモールプランやビジネスプランで5人まで費用が含まれています。6人以上1人300円)
KING of TIME:https://www.kingoftime.jp/(クラウド従量課金 1人300円~。)など
こうした勤怠管理ソフトと給与計算ソフトを使うことで、毎月の給与計算のミスがなくなり手戻りや勤怠の集計ミスがないかの確認を減らし効率化していきます。また、給与計算ソフトと会計ソフトや経費精算ソフトとの連携があるかどうかなども確認することで、転記作業を減らすことができます。
3.最後に
このように、バックオフィス業務の効率化に向けてSaaS型のITツールが多く出てきたことで、システム投資にまとまった大きな開発コストをかけずに1人いくらという形での利用が可能になってきました。
少額の予算であっても、バックオフィス業務の効率化は実現できるようになってきており、バックオフィスの効率化だけでなく、営業などのフロント側の作業も効率化することで会社の生産性を上げることができます。