千代田区の外郭団体
公益財団法人まちみらい千代田 公式ウェブサイト

文字サイズ
標準 拡大
サイト内検索
お問合わせ
中小企業応援リレーコラム
お役立ちコラム

従業員の健康維持を疎かにしていませんか?

中小企業診断士 小田原 正佳(おだはら まさよし)

1.健康経営に取り組む意義

 従業員には健康であり続けてほしい。そう思うのは中小企業の経営を担われている誰しもが考えていることと思いますが、それを何かしらの行動に移せていますでしょうか?

 経済産業省は「健康経営」を次のとおりと定義しています。
 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
(出所:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

 従業員の方々が皆いきいきと元気に業務に取り組んでくれることが、生産性向上につながり業績も向上すると定義されています。職場は活気に溢れ、仲間同士の絆も深まり従業員の定着率向上にも期待できるでしょう。働きがいが生きがいにも発展し、ウェルビーイングにもつながっていきます。

 一方で、急な体の病気やストレスから心の病気などになってしまうと、会社を休まなくてはいけなくなるケースも多く、業務に大きな影響が出ることも考えられます。これらは1日2日で決して治るものではありません。もはや、従業員の健康維持は経営戦略の一つと言っても過言ではありません。

2.健康経営への取り組み方

 以下に取り組み方の参考例をご紹介します。

(1)経営トップによるメッセージ

 会社を代表するトップ自らが先頭に立ち、従業員に対して健康経営への取り組みの重要性・目的を発信していくことが求められます。経営方針などに従業員の健康増進について明文化することで社内の意識醸成のみならず社外ステークホルダーへのアピールにも繋がることでしょう。

(2)社内推進体制

① 専門部署
 健康経営を実行していくためには専門的に取り組む部署があることが望ましいです。
 健康経営を戦略の一つであると捉え、人事部門など労務管理を行う部署が主導すると通常業務との関連性も強いです。人事部門を設けていない場合においては、各部署の管理職を集ってプロジェクトチームを発足する方法もあります。部下への意識づけと行動変容を直接促すことで効果がより発揮することになります。

② セミナー、社内研修
 健康増進は収益に直結しないと、健康経営取り組みに後ろ向きな従業員には、ぜひ社外セミナーや社内での研修実施をご検討ください。従業員の健康増進意識向上、職場の環境づくり重要性を認識させることがとても大切です。
 東京商工会議所が主催する「健康経営アドバイザー」は自社内に健康経営を主導する人材を養成する研修として活用できます。旗振り役を複数人備えることで、継続的に取り組める体制としていきます。
(出所:東京商工会議所 https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/adviser/

③ 産業医、健康経営専門家派遣
 産業医は従業員の健康管理に関することが職務であり、具体的に健康診断や面接指導等の実施、作業環境の維持、健康教育や健康相談を行います。常時50人以上の企業では専任が義務付けられていますが、50人未満であっても安全配慮義務の観点から設置が求められています。
 健康経営専門家派遣は、東京商工会議所が東京都より受託している「東京都職域健康促進サポート事業」があります。企業・業種の状況に沿って健康づくりの課題が抽出でき、その課題の解決策を提案してもらうことができます。専門家のサポートを受けることで、健康経営を効果的に進めることができます。
(出所:東京商工会議所 https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/06/

(3)具体的な取り組み施策

 従業員の健康寿命の延伸、健康状態の確認については多くの施策があります。3つの施策をご紹介します。

① ウォーキングアプリ
 健康づくりは思い立った時は意欲もありますが、次第に低下していき長続きがしないというのが常です。すぐに効果が現れるものではないため、意欲が維持できる仕掛けが求められます。健康づくりを通して商品に代えられるポイントを獲得できる施策を自治体が多く提供しています。
 中でも気軽に進められる健康づくりとしてウォーキング施策が多く、施策例として以下表をご紹介します。

表:各エリアのウィーキング施策事例

(出所)
千代田区:ちよだ健康ポイント https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.chiyoda.walking.app&hl=pt&gl=US
北区:あるきた https://www.city.kita.tokyo.jp/k-suishin/kenko/kenko/kenko-yobo/arukitapoint.html
品川区:品川区ウォーキングマップ 私の散歩道 https://shinagawa-walk.mapweb.jp/
新宿区:SHINJUKU しんぽ https://shinjuku.karada.live/
葛飾区:かつしか健康チャレンジ https://www.city.katsushika.lg.jp/kenkou/1030183/1001793/1031550.html
杉並区:アプリで一緒に杉並ウォーキング https://www.city.suginami.tokyo.jp/kenko/undo/1073334.html
練馬区:ねりまちてくてくサプリ https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/hoken/kenkodukuri/kenkoukyanpe-n.html
埼玉県:コバトン健康マイレージ https://kobaton-mileage.jp/
横浜市:よこはまウォーキングポイント https://enjoy-walking.city.yokohama.lg.jp/walkingpoint/

 これらは参加無料ですが、エリア内に居住している、または勤務している方に限定している場合が多いです。
 ウォーキングは健康増進・維持だけでなく、気分転換などストレス軽減に効果もあります。貯まったポイントで商品を得られることでモチベーションにもなり、継続的な取り組みもできるでしょう。従業員の方が参加できるウォーキングアプリを探してみてください。

② 脳の健康チェック(認知症傾向の判定)
 65歳未満で発症する認知症を若年性認知症といい、発症年数は平均で51.3歳と言われています。現役世代であることから、発症すると経済的にも負担を強いられます。中小企業の経営者にとっても従業員が発症すると業務分担の検討や、雇用契約の見直しなど、苦しい選択に追い込まれることになります。
 認知症は早期発見が何よりも重要ですが、仕事でのミスが認知症によるものだとは気付きにくく、また「自分が認知症の傾向があるはずがない」と、認めたくないために検査からも遠ざかってしまいがちです。

 フリーダイヤルに電話をかけ、認知機能の変化をその場ですぐに簡単に検知し、早期の医療機関受診・診断が可能になるサービスをご紹介します。発話内容(年齢/日付)と声の質をもとに、AIが認知機能低下の判定をします。無料のため、お気軽にサービスをお試しください。(出所:NTTコミュニケーションズ https://www.ntt.com/business/lp/brainhealth.html

③ ストレスチェック
 厚生労働省が提供する「5分でできる職場のストレスチェック」は無料でセルフチェックできるサイトになります。ストレスは体調を崩すだけでなく、メンタル面も落ち込み長期的な病気休暇になりかねません。従業員の状況を把握し職場環境の改善に取り組みましょう。(出所:厚生労働省 https://kokoro.mhlw.go.jp/check/

(4)評価・振り返り

 健康経営を成功させるために、取り組み内容の評価・振り返りを行い、より改善を図っていく必要があります。
 客観的なデータとしては、セミナーへの参加人数、「健康経営アドバイザー」の取得人数のほか、中長期的には医療費の抑制効果も見えてくるでしょう。
 主観的なデータとしては、従業員へのインタビューがあります。取り組む上での簡単さや、意欲の維持ができたかなど調査したいです。健康経営を推進する役割の専門部署側の声も拾うのも有意義です。これらを通して持続的な健康経営とするための次アクションを検討していきましょう。

3.まとめ

 健康経営に取り組む意義、具体的な取り組み方法について記載をしました。取り組み方法については、できるだけ簡単にかつ無料なものを取り上げました。研修や産業医設置には費用がかかりますが活用できる助成金を最後にご紹介します。

(1)小規模事業場産業医活動助成金

 小規模事業場が産業医等と契約して産業医活動等を実施した場合、最大60万円の助成金が受けられます(年度毎に申請期日あり)。
(出所:厚生労働省 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/000941543.pdf

(2)心の健康づくり計画助成金

 事業者が、メンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき、心の健康づくり計画を作成し、当該計画に基づきメンタルヘルス対策の全部又は一部を実施した場合に、費用の助成を受けられます(R5年度については未発表)。
(出所:労働者健康安全機構 https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1251/Default.aspx

 それでは、健康経営を会社の重要戦略の一つとして取り組み、事業も成功していくことをお祈りしております。