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メディアに取り上げてもらうための広報活動ポイント

中小企業診断士 大橋 康彦(おおはし やすひこ)

1.テレビ等のマスメディアに取り上げてもらうには?

 中小企業でも、テレビや新聞、雑誌等に記事として取り上げられるケースは珍しくありません。皆様も何気なくテレビを見ていて、「あ、○○さんの会社が出てる」という経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。
 では、そうした事業者は、どのような経緯でメディアに取り上げられることになったのでしょうか。もちろん様々な経緯があると思われますが、一般的な注目度が高い大企業等ではない会社の場合、そのきっかけは「メディア側の目に留まる何かがあった」ケースが多いです。
 目に留まるための手法にも様々ありますが、最もオーソドックスな手法はプレスリリースを配信することです。
 そこで本稿では、プレスリリースの作り方や配信の方法といった基本から、メディアとの関係を作っていく工夫についてもご紹介します。

2.プレスリリース作成の基本

 プレスリリースの「プレス」とは報道機関(メディア)のことで、そこに向けたリリース(発表)なのでプレスリリースと呼ばれています。このことから、プレスリリース作成にあたってまず意識すべきは、読む相手が記者や編集者という点です。彼らは職業として情報の探索や分析を行い、自社メディアの読者にとって有益な情報を届けるという責務があります。そのような立場であるが故に、彼らの元には毎日大量のプレスリリースが届いていますが、その中でどれに注目するべきかを判断するのにかけられる時間は非常に少ないと言えます。
 したがって、プレスリリースの重要なポイントは、「パッと見てすぐにその情報価値が判断できる」ように作ることです。これは、プレスリリースのタイトル部分が最重要であることを意味します。プレスリリースの一般的な構成は図1のようになりますが、心がけたいのは「重要なことから先に書く」という点です。見出しとリードだけで編集者の心を掴むことを意識しましょう。

図1:一般的なプレスリリースの構成

 また、同様の理由で全体のボリューム感にも配慮しましょう。昨今では写真やイラストを入れることが一般的になり、その分プレスリリースのページ数も昔に比べると増える傾向にありますが、それでもA4サイズで2~3枚以内に収めると良いでしょう。筆者が広報関係の仕事をしていた数十年前は、「A4で1枚に収めろ」と教えられたものです。これも「最小限の時間で価値を伝える」ことを重視する考え方に基づいていると言えます。

 本文も簡潔かつ明瞭に文章を組み立てましょう。図1にあるとおり、5W1H(内容に拠り6W3H)を意識して書きます。
 例えば、「株式会社○○○は、○○年○○月○○日に、○○○に悩む人を対象として○○○を発売します。販売は○○○で行い、価格は○○円です。」というシンプルな文章で、「誰が(Who)」「いつ(When)」「誰に(Whom)」「何を(What)」「どこで(Where)」「いくらで(How Much)」という5W1Hの要素が網羅されます。
 さらに、「○○○に悩む人は日本に数百万人いると言われていますが、当社の○○といった技術がその悩みの原因除去に役立つことがわかり、この度製品化しました。」と展開すれば、「なぜ(Why)」「どのように(How)」「どのくらい(How Many)」といった要素まで盛り込むことができます。
 なお、上の例文で「○○○に悩む人は日本に数百万人いる」という市場規模感に触れていますが、このような情報は出典を明記することが望ましいです。プレスリリースでは「客観的かつ正確な情報であること」が求められるためです。

 そして、メディアに取り上げられるプレスリリースで絶対に必要なのが、「社会への影響(有用性、価値)がある」ことです。ニュースの価値は、社会への影響力の大きさで決まると言っても過言ではありません。
 社会的影響力というと、中小企業の方は「そんなに大きな影響力がある製品は持っていないので無理」と尻込みするケースも見られますが、「社会」は必ずしも日本全国や全世界を表すわけではありません。特に業界紙や雑誌等のメディアは、特定の業界や趣味嗜好を持った人を読者にしていることが多いため、そのメディアが対象とする読者層の中で影響力が大きければニュースとしての価値は十分あると言えます。例えば、千代田区内の事業者が、千代田区民を対象として20%引きキャンペーンを行うというニュースであれば、全国紙には掲載されませんが、千代田区のコミュニティ誌には掲載される可能性があるということです。
 このように、プレスリリースでは、そのネタ(ニュースの内容)に応じて、どのメディアに配信するかを併せて考えることも重要です。誰にとって価値のある話なのかを考慮した上で、そのターゲットが集まっていそうなメディアに向けて配信するのが基本です。

3.プレスリリースの配信方法

 プレスリリースの配信には、以下のような方法があります。近年では②のインターネットを使った配信サービスが手軽なため、これを利用される方も多いと思いますが、お勧めは「①メディアリストを作成して自分で送付」です。

① メディアリストを作成して自分で送付
② 配信サービスを利用
③ 記者クラブへの投げ込み
④ PR会社等の利

 繰り返しになりますが、メディアの編集者は自社メディアの読者の視点に立って掲載する情報を取捨選択しています。したがって、どんなターゲットに有益な情報なのかによって、掲載を狙うメディアはおのずと決まってくると言えます。皆様の会社の製品・サービスによって価値を享受するであろうターゲットが最も親しんでいそうなメディアに掲載されることを最優先に狙っていくべきです。
 プレスリリースの送り方については、送付先や送付方法等をホームページ等で公開しているメディアも増えているため、基本的にはその指示にしたがって送付すれば良いでしょう。不明な場合は、プレスリリースを送りたい旨を電話等で問合せして、誰宛てに送れば良いか確認すればOKです。

4.広報活動で重要なのは多面的な情報発信

 メディアに一度でも掲載されると、他のメディアから連鎖的に問合せが入ることがあります。これは、編集者等が情報源として他のメディアにも目を通していることが多いためです。雑誌の特集やテレビ番組の企画コーナー等では、切り口を変えて情報を2次利用・3次利用するケースがよくあります。新製品や新サービスの発表としてプレスリリースを送った時は反応が無くても、あるテーマで特集を組むことになった場合などに問合せが入ることがあるのです。
 切り口というのは広報活動では大事な観点で、企業の広報担当者が意識すべき点でもあります。たった一つの製品・サービスであっても、それを紹介する「切り口」はたくさんあると意識しておきましょう。例えば、「新たな製品・サービスを発売」は一つのニュースに過ぎませんが、その製品・サービスの特長や差別化ポイントを実現するための「技術」や「人」、その製品・サービスを利用した「お客様の価値体験」「業界へのインパクト」等、様々な切り口で情報発信を行うことで、メディアに取り上げてもらえる可能性が高まります。
 また、もしもメディアから取材の依頼があった場合は、企画の内容等をヒアリングして、それに役立つ情報等を併せて提供してあげると良いでしょう。メディア側の企画趣旨に拠りますので一概には言えませんが、例えば業界のトレンド情報や競合の情報等は、記事や番組の構成上必要になることも多いため、特にニッチな業界に属する企業の場合は提供してあげると喜ばれると思います。こうした活動を続けていくことで、「○○のテーマは誰々に聞け」とメディアから重宝される存在になり、メディアへの露出機会が増える可能性もあります。

5.おわりに

 中小企業では、広報活動に十分なリソースを割くことは難しいと思われますが、新製品・サービスを発表するだけでなく、同じ製品・サービスをネタにしながらも違った切り口で継続的に情報発信を行う活動にはぜひ取り組んで欲しいと思います。
 また、自社に関連する主要な業界紙誌だけでも関係性を作っておくことをお勧めします。その第一歩として、プレスリリースの発行を通じて編集者とコンタクトを取り、様々な情報提供や情報交換の機会を増やしていくことから始めてみると良いでしょう。