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管理職は質問力で成果を掴む

中小企業診断士 草刈 利彦(くさかり としひこ)

 質問力は管理職にとって必要なスキルです。本稿では質問力の効果、伸ばし方について述べます。

■質問力で部下の問題解決や成長をサポート
 管理職の役割には、部下の問題解決や成長のサポートがあります。効果的なサポートには部下とのコミュニケーションが大事ですが、そのために1on1ミーティングが役立つといわれています。
 1on1ミーティング(以下1on1と言います)は、上司と部下が1対1で定期的に話し合うミーティングのことです。1on1は、以前からアメリカのシリコンバレーの企業で行われていました。近年は日本でも導入する企業が増えています。部下の人材育成を主な目的として実施され、部下との信頼関係を築きながら、個々の成長をサポートする場となっています。このミーティングは、1対1の人事評価面談とは異なり、部下が自主的に考え、課題を自己解決し、自立して行動し、成長することを目指しています。
 質問力はこの1on1で特に重要なスキルです。
 1on1で上司が一方的に話す場面に遭遇することがありますが、基本的に1on1ではこれはNGです。1on1は、部下が自分の意見や課題を自発的に話す場です。しかし、部下が自発的に話すと限りません。じっと部下の発言を待つのでしょうか。それでは話が進みませんし、場が気まずくなる可能性もあります。そこで上司が部下に質問を投げかけることで、部下の発言を促すことが必要になってくるのです。
 たとえば目標の進捗状況を確認する際には
 「進捗についての課題はありますか?」と質問することにより、部下が直面している課題や障害を聞きます。進捗を妨げる要因を共有してもらい、サポートできるかどうかを確認するのです。
 あるいは部下が目標に向けて達成した成果や成功体験を共有し、肯定的な側面を引き出すために、「達成した成果はありますか?」と質問します。
 上司は適切な質問を通じて部下の考え方や視点を引き出し、自己成長を促せるのです。

■1on1における質問力の効果
 1on1で適切な質問をすることにより、次の様な効果を得られます。

  1. 部下の発言を促し、モチベーション向上や成長につなげる
  2. 部下の考え方や視点を引き出し、自己成長を促す
  3. 部下との信頼関係を深める
  4. 部下が自分の仕事に対する意欲を高める
  5. 部下ばかりでなく、上司のあなたにとっても、適切な質問は役立ちます。
    質問を通じて部下の意見や考え・思いを収集し、組織の課題を把握し改善策を検討できます。

■質問力を磨くメリット
 ここまで1on1を例にして質問活用の効果を述べてきました。質問の効果は1on1だけではありません。質問をうまく使いこなせば、質問を受けた人に気づきを与え、これまでとは異なる新たな思考を促し、相手の世界を広げられます。質問力を磨くことで、あなたは以下の5つのメリットが得られます。

  1. 相手の考えを理解できます。 適切な質問を投げかけることで、相手の意図や状況を把握し、深い理解を得られます。たとえば、具体的な問題や状況について尋ねる時は、「あなたがその問題についてどう思いますか?」と聞いてみましょう。
  2. 会話の流れを誘導できます。質問は会話の進行を導く役割を果たします。適切なタイミングで的確な質問をすることで、会話をスムーズに進められます。
  3. 相手の思考を深められます。質問は相手の思考を刺激し、新たな視点をもたらします。深い洞察を得るために質問を活用できるのです。たとえば、「その対応でトラブルになった(失敗した)ことはありますか?」と聞いてみましょう。過去に経験した課題や失敗体験を思い返すことで、より深い洞察がえられるかもしれません。
  4. 相手の世界を広げられます。 質問力を発揮することで、相手の視野を広げられます。
  5. 相手の主体性を引き出せます。 適切な質問は相手の主体性を引き出し、積極的な参加を促します。たとえば、「どのようにしてこの問題に取り組みたいと思いますか?」と質問してみましょう。
    1on1に限らず、グループ討議や顧客との対話でも、適切な質問をすることで、あなたは成果をあげられます。

■質問力の伸ばし方
 ではどうしたら質問力を向上させられるでしょうか。

  • 知ったかぶりをしない:
    自分が知らないことについては、遠慮せずに質問しましょう。知識を装うことよりも、素直に学ぶ姿勢を持つことが大切です。顧客は自分より高い知識やスキルをもっていることはよくあります。知ったかぶりをしても、みやぶられ、あなたへの信頼を落としかねません。
  • 人によって質問の仕方を変える:
    相手の性格や状況に合わせて質問のスタイルを調整しましょう。オープンクエスチョン(自由な回答ができる質問、例:「おすすめのレストランはありますか」)とクローズドクエスチョン(Yes/Noで答える質問 例:「今日は晴れていますか?」)を使い分けることが重要です。オープンクエスチョンは話題をひろげ、クローズドクエスチョンは選択を促す効果があるのです。
  • まずは自分ならどう答えるか考える:
    質問をする前に、自分自身にその質問を投げかけてみてください。自分がどのように答えるかを考えることで、相手にも適切な質問ができるようになります。
  • 相手のいいところを探す:
    質問を通じて相手の良い点や強みを引き出しましょう。相手が自信を持てるような質問をすることで、信頼関係を築きやすくなります。
  • 自分がされた質問を振り返る:
    過去に自分がされた質問を振り返り、どのように感じたかを考えてみてください。良い質問と悪い質問の違いを理解する手助けになります。
  • 質問力がある人を真似する:
    質問力のある人の会話を観察し、そのテクニックを学びましょう。

■質問力をつけるコツ
 質問力をつけるのはファシリテーションやコーチングが役立ちます。
 ファシリテーションでは、会議などの集団活動を円滑に進め、成果が上げられるようにしますが、ファシリテーター(司会者)の質問力が重要になります。たとえば参加者の視野をひろげるために「皆さんの御意見は選択肢Aのようですが、他の選択肢はないのでしょうか」という質問をします。コーチングは、自発的行動を促進するコミュニケーションプロセスですが、質問力は重要なスキルとされています。たとえばこのように質問を使います。「今考えている目標を達成するために、支援は十分ですか。お手伝いできることはありますか」
 私がファシリテーションやコーチングから学び質問する上で重要だと思う点は、

  • 事前準備:1on1でしたら、日常部下の行動をみているわけですから、何をテーマに意見を聞くのか分かるはずです。顧客との打ち合わせでは、顧客の関心事を調べて打ち合わせに臨みますよね。
  • 目的の明確化:その日のコミュニケーションの目的を考えて打ち合わせに臨みましょう。それがないなら打ち合わせは単なる雑談か、あるいは効率の悪いものになるはずです。
  • 傾聴:話の最中は相手の話に傾聴することにより、話し手の意図や状況を知れ、話し手が答えやすい質問をすることが可能になります。

質問する際には次のようなコツも忘れずに意識してください:

  • 答えやすい聞き方をする: 質問をする際に相手が答えやすい形で聞くことが大切です。例:「最近のプロジェクトでどんな課題に直面しましたか」
  • 話したくなる相槌をする: 相手の話を引き出すために、適切な相槌を使いましょう。相槌は相手が話すのを促し、相手の考えが伝わっていることを示す重要なスキルなのです。
  • アドバイスを求める聞き方をする:「なぜ」を使った質問は問い詰められている感じですが、「どうしたらそのような結論に辿り着くのか教えていただけますか」と聞くと、より深い会話ができます。

 実は質問力を向上させるためには、ある程度場数を踏む必要があります。頭で分かっていてもできないものです。皆さん、本日から練習に励んで高い成果を掴んでは如何でしょうか。

以上