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社会価値と企業価値の両立

がんばる中小企業応援リレーコラム 
~ 企業の社会価値を高める ~

第2回 社会価値と企業価値の両立

中小企業診断士 柳 義久(やなぎ よしひさ)

【はじめに】
 2014年版中小企業白書第3部第3節で「社会価値と企業価値の両立」というテーマを取り上げている。この意味するところは、企業が社会的な課題に対して、商品やサービス等を通じてアプローチしていくことが、結果として事業にもプラスの影響をもたらす、あるいはもたらすべきだという考え方であろう。

 古くから地域に根差した事業を行ってきた中小企業・小規模事業者に対して、いまさら言うことではないかもしれないが、改めて、中小企業・小規模事業者にとって、直面する地域特有の課題にこそ、新しいビジネスの可能性、「生きる道」があるのではないかということである。地域の抱える課題を解決して地域活性化をはかることが社会価値の創造であり、結果として企業の利益を増大させることが企業価値の創造である。 (中小企業白書2014版第3部第3節参照)

 リレーコラム前号で、東日本大震災以降、「大きな変化として、学生から社会人までさまざまな人が、ボランティア活動やNPO活動へ積極的に参加するようになった」、「企業においても“社会価値”を高めることへの意識が高まっている」と述べられています。
 さらに、「企業が活動を行う主なる目的が、“利益を追求する”ことから“社会的に課題となっていることを解決する”ことへの変化が見られる」とし、でもそのことが「“利益を追求しない”ことではなく、逆に社会価値を高めることで、それを企業の強みにし、社会と企業の双方に価値を生みだすことにつながっていくのだ」としています。

 第2回目の今回は、地域の課題に目を向けて、画期的な商品を開発して課題を解決し地域の社会価値を高めると同時に自社も収益を拡大して企業価値を高めている企業を紹介したいと思います。

【事例企業:株式会社トマス技術研究所】

海岸・砂浜に漂着するゴミ処理に貢献する企業、沖縄から全国へ、そして世界へ!

 沖縄県うるま市(東京営業所千代田区神田錦町)の株式会社トマス技術研究所(資本金300万円、代表取締役福富健仁氏)は、超低公害の中・小型焼却炉メーカーです。
「沖縄の海をきれいなままに。技術で社会に貢献したい」と福富健仁さんは、「小規模焼却炉」を考案して平成15年に起業しました。
 社名は、「幼い頃に母親に読んでもらったトーマスエジソンの伝記に感動してネーミングした」のだそうです。小学校時代には兄とプラモデル作りをするのが楽しみだったという福富さんは、大学の工学部に進学して人生の進路を決めたという。卒業後は迷わず、地元で焼却炉のメーカーに就職しました。
 平成11年「ダイオキシン類対策特別措置法(特措法)が改正され、廃棄物処理法以前の焼却炉、ドラム缶、野焼き等の焼却行為が禁止された。しかし現状は最終処分場が逼迫し、不当投棄等廃棄物に関する問題解決に関係者は頭を悩ませていた。なんとかしたいという一念」で福富さんは独立を決意したといいます。

 独立してチャレンジしたのが小型焼却炉の開発でした。開発した特許技術が認められ、瞬く間に注目を集めるようになりました。「CHIRIMESER(チリメーサー)TG-49型」と名付けた小型焼却炉は、平成18年11月、沖縄県知事賞最優秀賞受賞。平成18年12月、環境大臣賞受賞。
 平成23年、九州発明協会奨励賞受賞と相次いで賞を受賞しました。
 2012年の環境展(東京ビッグサイト)では、屋外でのタイヤの燃焼実演を行い、他を圧倒しました。CO2、ダイオキシンともに限りなくゼロだったことで、あらためて「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(廃棄物処理法)や措置法にも抵触しないことが証明されたのです。「チリメーサー」に多くの人だかりができ、大評判になりました。
 このときまでは、地元沖縄での普及活動を中心に行っていましたが、このデモンストレーションが本土での営業の足掛かりとなりました。またこれを機会に「地域応援雑誌コロンブス」を発行している東方通信社をバックに持つ「NPO法人ふるさと往来クラブ」(千代田区)がチリメーサーの総代理店を引き受けることになり、全国に向けて情報を発信する強力な基盤とパワーを得ることになりました。
 沖縄で生まれた「チリメーサー」は、今日までに全国六十数か所で稼働するまでになりました。(参考文献:月刊コロンブス2012年9月号79頁から引用と参考) 

「チリメーサー」が奄美・沖縄から全国へ、そして世界へ!
 福富社長は、2014年11月2日から13日までJICAによる調査事業のためインドネシアを訪問してきました。訪問の目的は小型焼却炉「チリメーサー」が、インドネシアで問題になっている廃棄物管理の問題(①増加する廃棄物の適正な処理がなされていない、②埋め立処理分譲地域の衛生面や健康面への悪影響、 ③廃棄物排出量の増加、④ゴミ処理に関する運用管理システムの未整備)や漂流・漂着ゴミの処理についての低減化をはかることができるかどうかということの確認調査であった。あわせて、焼却物の処理コストが安価であり、経済的効果が期待できるかどうかを調査している。期待通りの効果を検証できれば沖縄と同様な島嶼国においてビジネス展開をはかることができることになるだろう。

 この調査は2回にわたって行われるが、今回の調査はその1回目にあたる。調査団は11月4日にはJICAインドネシア事務所を訪問したのに続き、ジャカルタ州知事を表敬訪問、その後インドネシア工業省、エネルギー鉱物資源省、インドネシア環境省などに調査趣旨説明およびヒアリングを行っている。さらにバリ島、ロンボク島などにおいても現地の廃棄物処理施設を視察したり、ゴミ収集業者と意見交換をしたりしてきている。
 調査を終えて、福富社長は「インドネシアの廃棄物の質や量の状況が分かり、その問題の解決策は、これまで本土で、沖縄で、離島で、僻地で、廃棄物問題を解決してきたチリメーサーで十分対応できると確信した」と語っている。
 沖縄で漂着ゴミを解決しようと生まれた「チリメーサー」が同じ問題を抱える他地域の問題解決に役立つとともに、外国の島嶼地域においても自然環境や生活環境の改善に役立つ日が近づいている。
 最近になって、チリメーサーの機能の一つ、医療系廃棄物・特管(感染性廃棄物)の焼却ができる点に注目が集まっていることも今後大きく成長するうえで見逃せない。

【まとめ】

 この企業が、小型焼却炉を開発して、間もないあいだに注目を浴びるようになった背景には、「ダイオキシン類対策特別措置法」の改正で、廃棄物処理法以前の焼却炉、ドラム缶、野焼きなどの焼却行為が禁止されるという環境変化に、素早く対応できたことである。そしてその対応を誰でもができたのではなく、この企業ができたのは、福富社長が大学の工学部を卒業し、焼却炉メーカーに勤め、そこで知識を得て、超低公害な小型焼却炉を開発できる能力と実行力を持ちあわせるという主体的条件が備わっていたからであろう。
 それから、福富社長は地元の海をきれいなままに保ちたいという思いをいだき、漂着する多くのゴミ処理という課題を焼却炉の開発によって解決し、地元の活性化をはかり社会価値を高め、同時に自社の企業価値を向上させている。
 チリメーサーは一地域の課題解決からスタートしているが、同様の課題を持つ他の地域から注目されるようになり、他の地域の課題を解決することで他地域の社会価値を創造している。企業価値についても自社だけが他地域からの収益を独占するのではなく、焼却炉の販売や設置は、それぞれの地元をよく知る事業者を代理店とすることで、地元事業者の企業価値を高めることにも貢献している。
 地域における課題は常に変化しながら潜在している。地域の課題を発見して解決をはかることで地域の社会価値を高めると同時に会社も収益を拡大させ企業価値を高めることが、社会価値と企業価値の両立という意味である。中小企業・小規模事業者の生きる道の一つが、地域に目を向けて、地域の諸課題を解決していくことであるという古くからあるビジネスモデルに改めて目を向けていただきたい。
ご興味をお持ちの方は、中小企業白書2014版第3部を参考にしてください。

【「チリメーサー」代理店サポート窓口】
 NPO法人ふるさと往来クラブ
 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1-14-4
 TEL:03-3518-8841 FAX:03-3518-8842