中小企業へのアドバイス! ぴりっとした会議で経営問題を解決しよう!
がんばる中小企業応援リレーコラム
~ 企業の社会価値を高める ~
第1回 中小企業へのアドバイス!ぴりっとした会議で経営問題を解決しよう!!
会議は重要です
今月から「中小企業へのアドバイス!」と題して、5人の診断士からアドバイスを申し上げたいと思います。今号を担当します中小企業診断士の河合と申します。よろしくお願いします。
ところで、「会社は問題の束である」という言葉があります。企業経営とは、ある意味ではこの問題の束を解きほぐし、現状とあるべき姿とを近づける努力の積み重ねであるといえるかもしれません。
企業において、このような問題解決は、会議で行われることが多いと思います。しかし、日本の企業はこの会議が必ずしもうまくいっているとは限らないことが指摘されています。だらだらした会議、最初から結論の決まっている会議などでエネルギーを奪われているビジネスマンは多いのではないでしょうか。
では、どうすればうまくいくでしょうか。
短い会議はいい会議?
まず、一つ実例をあげましょう。その会社は会議が非常に多く、時間もだらだらと長かったので、オーナー社長はついに怒り、決断を下しました。「会議は20分以内。議長(もしくはそのサポート役)は時間になったらカネを鳴らし、閉会を宣言すること」。
その日から、その通り実行されました。結論が出ないうちにカネが鳴り、慌しく「じゃあ、明日また会議室Bでこの時間に」などと言い合い、散会しました。そして翌日続きをやります。今度は大体の結論まで決まってまたカネが鳴ります。「じゃあ残ったところは次回に詰めましょう」などと言って散会。しかし、その次回は主要人物の甲氏が出張してしまいます。もちろん甲氏の代理が出ますが、前回までの会議のニュアンスがわからないので細部が詰まらない。このようにメンバーが少しずつ代わると、回数が重なるにつれ「そんな話は聞いていない」などと言う人が出てくる。結局、かえって非効率だということになり、この20分方式は沙汰やみになりました。
これは、私が最初に勤務した会社の実話です。つまり、会議を時間という形式で縛ってもいい結論は出ないということです。
ステートメントの設定
ではどうすれば充実した会議ができるでしょうか。ロジカルシンキングの考え方を使ってみたいと思います。
まず、漫然とした会議を避けるために、ロジカルシンキングはステートメント(テーマ)を明確にすることを提案しています。ステートメントとは、「思考の土俵」とでもいうべきものです。議長は会議の冒頭で「今日は、新製品Xの営業策を決定するための会議です」などと宣言するのです。これを決めずにスタートした場合、会議が迷走する可能性が高くなります。会議室のホワイトボードにはっきりと「新製品Xの営業方針とその方策の決定」などと書いておくのも有効でしょう。
会議で様々な案が出るのはいいことですが、「この営業策に1000万円かけるならば、その金をむしろ研究開発に投入した方がよい」などという意見が出ることがあります。そのとき、議長は「興味深いご意見ですが、そのご意見は今日の会議のステートメントからは外れています」とはっきり指摘して、会議の迷走を防止する必要があります。そして、本当に興味深い意見
であるならば、後日「研究開発費の増加の必要性について」という会議を設定すればよいのです。
4つの思考領域
会議が長引く原因は、今、何について論じているのか明確でないことにあります。ロジカルシンキングでは4つの思考領域を設定しています。すなわち、状況分析(会議を行うにあたり、できうる限り情報を集め、何が真の問題かを探る)、原因分析(その問題がどうして起きてしまったのかを探る)、決定分析(複数の解決策のうちどれが良いかを探り、決定する)、リスク分析(選択された解決案に何かリスクはないかを探る)、の4つです。
仮に、ある企業で不祥事が起きたとしましょう。するとトップは「いい情報も悪い情報も全部提出しろ」と叫ぶに違いありません。つまり状況分析です。次に、「なんでこんなことが起きてしまったのかね」と呟くでしょう。原因分析ですね。そして、「では、どうしたらよいだろうか」ということになり、商品回収なり、謝罪文の掲載なりの方法がとられることになります。これが、決定分析です。これで終わりではありません。最後に、「その方法がとられた場合何らかのリスクはないのか」まで考える必要があります。すなわち、リスク分析です。
問題によっては、原因はともかく、緊急に打つ手を考えなければならないこともあるでしょうし、状況分析が充分でないので対応策が決定できず、状況分析に戻ることもあるでしょう。つまり、上記の図の4つの思考領域をぐるぐる回りながら最適解を探すのです。一本道ではありません。
議長は、「では、まず状況に関する情報を共有化しませんか」、「なぜ、この問題が発生したかを考える必要がありますね」、「いろいろ案がでましたが、ここで結論を出しましょう」、「この案にリスクはありませんか」などと発言し、今会議がどの段階にあるかを明確化するとよいでしょう。
これだけで、会議はずいぶん効率化すると思います。
会議の終わりに
無事に会議が終わり、いい結論が出たとしても、それで安心してはいけません。会議の間は様々な意見が飛び交い、盛り上がったように見えながらあまり具体的なアクションに結びついていかない場合があります。
会議の最後に時間をとり、結論を確認し文書で残すことが必要です。そのとき、大切なことは具体的なタスクに分解して担当者を明示することです。
たとえば、新製品Xの営業方法が「展示会の活用」で決定したとしましょう。その時、「ビックサイトで行われる展示会(1月10日)への新製品Xの出展の申請手続きは総務部の山田が○月○日までに実行する」「その際の経費計上に関しては経理部の鈴木が○月○日までに実行する」「出展の具体的内容に関しては次回会議で引き続き検討する。その会議のメンバーは・・・」などのようにタスクと実行者を明確化するのです。そのような記述が残せる議事録のシートを作成しておくとよいでしょう。
会議のやり方については、自社以外の視点で見直すことが有効な場合があります。いわゆるファシリテーター(会議に同席し議事進行を務め、問題の解決や合意の形成に導く役割をする人)を活用してみようかと思われた場合は、ぜひ社)ちよだ中小企業経営支援協会(千代田診断士会)にご相談ください。担当 河合(0116690801@jcom.home.ne.jp 03‐3339‐0902)までご連絡ください。
一般社団法人ちよだ中小企業経営支援協会(担当:河合)
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