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〈法制審議会区分所有法制部会〉と〈今後のマンション政策のあり方に関する研究会〉の議論が大詰めに

マンション管理士 飯田太郎 氏

〈法制審議会区分所有法制部会〉と〈今後のマンション政策のあり方に関する研究会〉の議論が大詰めに

 これからのマンション管理や生活の方向に大きな影響を与える、国の2つの会議が大詰めをむかえています。1.「法制審議会区分所有法制部会」(法務省所管)と、2.「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」(国土交通省所管)です。どちらも広範な内容を議論してきました。ここでは、その一部をご紹介します。特に建替やリノベーションなどの総会議
決要件の緩和は、実現すれば高経年マンションが多い千代田区内のマンションで、建物の再生を進める際の選択肢が増えることになります。
 ※国会審議を経て正式な制度となります。

1 区分所有法制部会

 令和4(2022)年10月28日に第1回会議を開催。令和5(2023)年6月8日の第9回会議で中間試案を取りまとめ、7月3日から9月3日まで、意見募集(パブリック・コメント)を実施しています。中間試案には以下の内容が含まれています。

① 所在不明区分所有者の扱い 
 築後年数が経過したマンションでは、所在不明な区分所有者が増え、管理組合運営に支障が生じる場合があります。例えば、現行法では所在不明区分所有者は、管理組合総会で「反対者」として扱うことがあります。このため議決権数と区分所有者数の各3/4以上の賛成が必要な規約改正や共用部分の変更、4/5以上の賛成が必要な建替え決議等が、総会出席者では可決に必要な賛成票を得ても、所在不明区分所有者が反対票となるため、否決されることがあります。これでは不合理なため、所在不明区分所有者を総会決議の母数から除外することが提示されています。

② 海外に居住する区分所有者の国内管理人制度
 区分所有者が海外に移住したり、日本に居住しない外国人が区分所有権を取得することもあります。こうした日本国内に居ない区分所有者に代わり、権利・義務を行使する「国内管理人制度の創設」についても、いくつかのケースを想定し提示して
います。管理人には管理組合総会での議決権行使や管理費等の納入だけでなく、住戸内への立ち入り等も出来るようにすることも考えられています。

③ 一棟リノベーションの議決要件緩和
 建物全体を骨組みだけのスケルトン状態にし、共用部分と専有部分の変更を含む、建物全体を更新する工事(一棟リノベーション)も、建替えに代わる再生方法です。現在は区分所有者全員の賛成が必要ですが、4/5以上の賛成で実施できる建替えより要件が厳しいのは不合理だということで、一棟リノベーション工事を特別決議で実施できる仕組みも提示しています。

④ 建替え決議の要件緩和
 建替えの決議を、現在の4/5分以上の賛成から、一般的に3/4以上にする案、竣工から50年、60年、70年経過等の時間的な要件がある場合は3/4とする、あるいは耐震性不足や老朽化により周辺に危害が生じるおそれがある場合など一定の客観的要件があるときには2/3以上にするなど、様々な案が示されています。

※パブリック・コメント及び区分所有法の改正に関する中間試案について、詳しいことは、下記をご覧ください。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000255906
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000255907
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000255908

2 今後のマンション政策の
あり方に関する検討会

 今後のマンション政策のあり方に関する検討会は、令和4(2022)年10月31日に第1回を開催。令和5(2023)年8月10日の第10回会議で「とりまとめ」が公表されました。「とりまとめ」は、マンションを巡る現状を把握、課題を洗い出した上で、例えば次のような問題があることを示しました。

① 長寿命化によってマンションをできるだけ長く使うことの必要性・重視性について、必ずしも区分所有者に認識されていない可能性があります。

② 長期修繕計画作成の際、本来必要となる工事が設定されていないこと等により、大規模修繕工事実施の際に修繕積立金が不足するマンションが存在します。

③ 総会の通知など、管理組合を適正に機能させるためには、管理組合として区分所有者の所在等を正しく把握しておく必要があります。しかしマンション標準管理規約は、区分所有者名簿等の更新や外部区分所有者等の住所変更等について、明確に定めていません。

④ 第三者による管理の一つとして、管理業者が管理者となる場合がありますが、利益相反の防止などの留意点を示したガイドラインが存在しません。

⑤ 多くの管理組合において、マンションの将来の解体等までを見据えた議論が行われていません。

⑥ 自分たちが居住するマンションの防災対策を知らない区分所有者も多く存在し、管理組合でマンションの防災対策の実施や検討が十分でない可能性があります。

 こうした課題を示した上で、現時点で考えられる政策の方向性をマンション政策全般についての大綱としてとりまとめました。さらに「今後の施策の方向性」のうち、次の事項は、今年秋を目途にワーキンググループを設置し、施策の具体化に向けた検討を開始するとしています。
(1)マンション管理計画認定制度の認定基準の見直しに関する検討(修繕積立金の安定的な確保等)
(2)マンション標準管理規約の見直しに関する検討(管理不全マンションへの対応等)
(3)管理業者が管理者となる場合も含めた外部専門家の活用のあり方に関する検討(管理組合役員の担い手不足への対応)
※「とりまとめ」の本文及び参考資料、会議概要は下記をご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000214.html

マンションサポートちよだmini第156号掲載(2023.8月発行)
(PDFで読みたい方はこちら