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今後のマンション政策について 国土交通省が2つのワーキンググループを設置

マンション管理士 飯田太郎 氏

今後のマンション政策について
国土交通省が2つのワーキンググループを設置

 国土交通省は、本紙8月号でご紹介した「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」のとりまとめで示された課題について、更に議論を深めるため下記の2つのワーキンググループ(WG)を設置しました。
❶外部専門家の活用に関するWG
❷標準管理規約と管理計画認定制度に関するWG
 ❶は10月26日、❷は10月30日に第1回会合を開催しました。

1⃣外部専門家の活用について

 平成28(2016)年の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(適正化法)」改正で、外部専門家が管理組合の役員に就任する場合には、区分所有者がその選任や業務の監視等を適正に行うなど、基本的な方向性が示されました。同時に標準管理規約が改正され、外部の専門家が管理組合役員や管理者に就任する場合の条項が整備されました。これらを受けて、平成29(2017)年に「外部専門家の活用ガイドライン」が発表されました。
 このガイドラインは、マンション管理士等の専門家が区分所有者の代わりに理事長(管理者)に就任すること等を想定したもので、管理会社が管理者になることまでは想定していません。しかし、区分所有者の高齢化や役員のなり手がいない状況が進むとともに、ガイドラインで想定していない管理会社が管理者となるケースが増えています。
 国土交通省がWG設置にあたり作成した資料「管理業者が管理者となる管理形態の現状について」は、管理会社の団体である(一社)マンション管理業協会の調査結果を紹介しています。それによると令和5(2023)年時点で、管理者業務を「受託している」もしくは「今後受託を検討している」と回答した管理会社は167社で、令和2(2020)年に比べ約3割増加しています。また、管理会社が管理者業務を受託しているマンションの約7割は理事会がありません。
 現在、どの程度の数の管理組合が外部の専門家や企業を管理者としているかは把握されていませんが、管理会社が管理者に就任した場合、管理者としての役割と管理組合との契約で受託している管理会社との区分が曖昧な場合や、管理組合の資金保管口座の印鑑と通帳を同一の管理会社が保管しているケースも少なからずあるようです。
 今後、高齢区分所有者の増加等により、管理組合業務に関わることを煩わしいと考える区分所有者が多くなると考えられます。区分所有者が主体的に取り組むべき管理業務全体を、丸投げに近いかたちで管理会社に委ねる管理組合が多くなることも予想されます。
 しかし、外部のマンション管理士や弁護士等の専門家を役員に選任し、管理組合を強化するタイプの専門家活用と、管理会社や外部の専門家を管理者とし、理事会や総会がこれを監督する管理者管理方式は基本的に違います。特に管理業務の受託者である管理会社が、同時に管理者に就任した場合は、管理業務の受託者としての立場と、管理者としての立場を明確に分ける方法を確立しないと、管理者でもある管理会社が、管理組合の保管口座の資金を流用したり、管理業務や修繕工事を自社に有利な方法で実施することもあり得ます。
 国土交通省の外部専門家の活用に関するWGは、現在の「外部専門家の活用ガイドライン」で想定していない管理会社が管理者になる場合のルール等について検討する予定ですが、自分たちの貴重な財産で居住の場でもあるマンションを守るのは、自分たち区分所有者自身だという自覚を失わないようにしたいものです。

2⃣標準管理規約と
 管理計画認定制度について

 マンション標準管理規約は昭和57(1972)年に最初の規約が作成されてから、社会の変化に対応して令和3(2021)年までに12回改正されました。各マンションの管理組合運営の参考とするもので強制ではありませんが、実際には多くの管理組合が標準管理規約の内容に合わせて規約を定めています。
 10月30日に開催されたWGの第1回会合では、ITを利用した監査や、遠隔地から議事録等を閲覧する方法、EV自動車用充電器の設置に関連する条項や使用細則等について検討されました。
 今後、管理計画認定制度とも密接に関係する、修繕積立金の不足、積み立て方法等ついても検討される予定です。これは近年分譲されたマンションで、将来必要になる修繕工事費を入居当初から毎月均等に積立てる「均等積立方式」ではなく、当初の積立金額を低めに設定し、入居後に段階的に引き上げる「段階増額積立方法」が採用されることが多いこと等に対応するものです。後者の場合、管理組合総会で修繕積立金の引き上げが認められないと、必要な工事が実施できないおそれがあります。分譲時に設定される積立金額や引き上げ方法に基準を設け、将来の修繕積立金引き上げ幅が無理のない範囲に収まるようにすること等が検討される予定です。
 このWGは今年度内の標準管理規約改正を目指し、来年3月まで計6回開催される予定です。人手不足の影響もあり工事費は今後も上昇する可能性が大きいと考えられます。長期修繕計画に基づき算定された必要な工事費を確保するために、区分所有者が毎月納める修繕積立金額をどのようにするのか?マンションの資産価値と居住性を守る視点で、各マンションでも考える必要があります。

マンションサポートちよだmini第159号掲載(2023.11月発行)
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