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来年4月、孤独・孤立対策推進法施行 この機会に考えたい、高齢単身居住者等への支援

マンション管理士 飯田太郎 氏

来年4月、孤独・孤立対策推進法施行
この機会に考えたい、高齢単身居住者等への支援

 「孤独・孤立対策推進法」が令和6(2024)年4月1日に施行されます。この法律は「孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ること」を目的としています。その上で、「孤独・孤立状態の予防、孤独・孤立者への迅速かつ適切な支援」等を行うことを国や地方公共団体(自治
体)の責務としています。国民に対しても、孤独・孤立状態にある者への関心と理解を深め、国や自治体が実施する施策に協力することを求めています。
 孤独・孤立対策推進法が必要になった背景として政府は、 ①単身世帯や単身高齢者の増加といった社会環境の劇的な変化が進み、地域社会を支える地縁・血縁等の人と人との関係性や「つながり」が希薄化の一途をたどってきたこと ②新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中で、孤独・孤立の問題が顕在化し、より一層深刻さを増したこと ③今後、単身世帯や単身高齢世帯の増加が見込まれ、孤独・孤立の問題の深刻化が懸念されることをあげています。
 法律制定に先駆けて政府が実施した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」(令和4年)は、興味深い結果を示しています。孤独感を感じることが「常にある」+「時々ある」人の割合が最も少ないのは、持ち家一戸建てに住む人で、次に少ないのが持ち家のマンションに住む人です。同じ共同住宅でも、民間賃貸、公共賃貸、社宅・寮等に住む人は、マンション居住者に比べ孤独感を感じる人が多いということです。持ち家は家族で生活をする人が多く、賃貸住宅は一人暮らしの人が多いということが反映されているのかもしれません。また、実態調査は、孤独感を感じる人の割合が高齢世代よりも、若い世代が多いことも示しています。

孤独・孤立とマンション生活の関係は

 孤独・孤立感を感じる人の存在は、マンション生活や管理運営と密接に関係する問題です。多数の人が同じ建物で生活し、区分所有者全員で構成される管理組合が維持管理を行うマンションは、そもそも人と人の「つながり」がなければ成立しない仕組みだからです。それでも孤独・孤立がマンション居住者の心の問題だけならば、管理運営にそれほど大きな影響を与えることはありません。しかし居住者に孤独死をされると、他の居住者や管理組合等に大きな影響を及ぼします。
 東京都監察医務院の調べによると、令和2(2020)年に東京23区で6,096人が自宅で孤独死をしています。なかでも65歳以上の高齢者の孤独死は4,207人にのぼり、次第に増加する傾向にあります。千代田区でも毎年10人以上の高齢者が、誰にも看取られず自宅で死亡しています。「自宅」について詳しい内容は発表されていませんが、千代田区の場合は人口の8割以上がマンション生活者ですから、孤独死をされた人の中には、相当数のマンション居住者が含まれていると考えられます。[表-1]

千代田区では高齢者の増加は、これからが本番

 千代田区の人口に占める高齢者の割合は、10年以上続けて低下しています。千代田区人口ビジョン(令和3 年)によると、令和2(2020)年の人口は66,680 人です。65歳以上の高齢者人口の割合は、平成12(2000)年の20.9%をピークに低下を続け、令和2(2020)年時点で16.4%です。若い世代の流入や新生児の増加等によるものと考えられます。これは高齢者比率が28.7%で3 割に迫る全国はもちろん、東京都(22.8%)、23 区平均(21.5%)よりも、かなり低い数字です。
 では、将来はどうでしょうか?千代田区人口ビジョンは2065 年の人口や高齢者割合も推計しています。人口は今後も増加を続け、2065年には98,513 人になりますが、高齢者比率も上昇し22.7%になります。千代田区の高齢者比率は、令和2(2022)年が最も低く、その後は増加に転ずると推計しています。[表-2]

 千代田区のマンションの管理組合や居住者組織としては、高齢居住者等の孤独死を防ぐために、管理員やコンシェルジュの協力も求め、外出の有無の確認や、他の居住者と交流する機会も増やすなど、高齢居住者が孤立状態にならないように配慮したいものです。民生・児童委員や社会福祉協議会とも相談し、アドバイスを受けることも重要です。コロナ禍で中断していたイベント等を復活させることは、居住者みんなのためにも必要でしょう。孤独・孤立対策推進法に続いて、6月16日に認知症基本法が公布され1 年以内に施行されます。高齢居住者が増える傾向にあるなかで、プライバシーを尊重しながら「おせっかい」をすることも、マンション生活では大切なことです。