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増える所有者不明等の住戸 総会の特別決議に支障が出る可能性 区分所有法の改正による 特別決議の成立要件緩和を検討

マンション管理士 飯田太郎 氏

増える所有者不明等の住戸
総会の特別決議に支障が出る可能性

 マンションの建物の老朽化と区分所有者の高齢化による「2つの老い」が進むとともに、新たな難問が出始めています。相続等をきっかけに区分所有者が分からなくなった、あるいは区分所有者と連絡がつかない住戸(専有部分)が増えることです。平成30(2018)年のマンション総合調査(国土交通省)によると、所在不明や連絡先に通知が届かないなど、所有者と連絡がつかない住戸のあるマンションが約3.9%ありました。また連絡がつかない住戸の割合が20%を超えるマンションの割合は2.2%、0%超~20%のマンションは1.8%でした。
 竣工から時間が経過した高経年マンションほど、所有者と連絡がつかないといった問題が増える傾向にあります。また3か月以上、空室となっている住戸のあるマンションは、全体の37.3%でした。空室の続く住戸の割合が、総戸数の20%以上あるマンションも全体の1.2%あります。
 国土交通省が行った別のアンケート調査*によると、管理組合総会での普通決議への投票率は築10年以上~20年未満のマンションでは84.3%ですが、築40 年超のマンションでは78.9%です。高経年マンションになるほど、投票率が低下する傾向にあります。
 前掲のマンション総合調査によると、総戸数70戸以上のマンションでは、委任状や議決権行使書を含めて総会出席者の割合が80%を下回っています。大規模マンションほど出席者の割合が低くなる傾向があります。マンション総合調査もアンケート調査も5年以上前に実施したものです。現在は、こうした傾向がさらに強くなっている可能性があります。
*マンションの再生手法及び合意形成に係る調査(平成28年度)

区分所有法の改正による
特別決議の成立要件緩和を検討

 マンションの老朽化を防ぎ、あるいは老朽化したマンションを再生するためには管理組合総会で、長寿命化のための改修工事や、建替えのための特別決議が必要です。
 長寿命化のための再生工事には区分所有者数と議決権数の各3/4 以上の賛成、建替えは各4/5以上の賛成が必要です。ところが、所在不明等で連絡がつかない区分所有者や総会に出席しない区分所有者は、議案の反対者とみなされます。このため委任状や議決権行使書も含め総会に出席した区分所有者全員が賛成をしても、特別決議が成立しないため、改修や建替えを行うことができないマンションが、今後増える可能性があります。
 国土交通省は、築40年以上のマンションが20年後に425万戸になると予想しています。このままでは多くのマンションが、特別決議で何かを決めることができないことも考えられます。こうしたことを防ぐため、政府の法制審議会区分所有法制部会は、特別決議の議決要件緩和等について、昨年10月から今年3月まで既に6回会議を開いて検討しています。前記のような問題の他にも、首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の発生が危惧されるなかで、被災したマンションの再生についての決議を、被災マンション法の政令施行後1年以内に行う必要があるとの規定についても検討し、早ければ令和6(2024)年度に区分所有法等の改正案を国会に提出したいと、法務省や国土交通省は考えています。
 千代田区マンション管理認定制度がスタートしたばかりですが、マンションの管理不全を防ぎ、再生等を容易にする制度改正がこれからも進むと思います。

マンションサポートちよだmini第152号掲載(2023.4月発行)
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