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「マンションの居住性と資産価値を守る長期修繕計画と修繕積立金」「国土交通省が修繕積立金の目安を改定」

マンション管理士 飯田太郎 氏

マンションの居住性と資産価値を守る
長期修繕計画と修繕積立金

 千代田区マンション管理計画認定制度が4月1日からスタートしました。認定基準の中で大きなウエイトを占めているのは、マンション管理の柱というべき長期修繕計画と修繕積立金です。
 住宅情報誌等は「戸建てとマンション、どちらが良いか?」といった記事をたびたび掲載しますが、長期修繕計画や修繕積立金があることは、マンションが戸建て住宅に比べて優れた点だとしています。たしかに20年、30年先までを展望する長計修繕計画を作成し、必要な資金を積み立てることは、戸建て住宅ではほとんど行なわれていません。ハウスメーカー等は手入れが必要な箇所と時期の目安等を示していますが、それを参考にメンテナンスをする所有者は少なく、建物の劣化が進んでから、成り行きに応じて工事をするのが普通です。
 長期修繕計画と修繕積立金の仕組みがあることで、マンションの居住性や資産価値を維持できることは現在では常識になっています。ところが今から30年~40年前には、その重要性が必ずしも認識されていませんでした。この頃も修繕積立金は徴収していましたが金額は少なく、長期修繕計画については昭和58(1983)年に作成された最初の標準管理規約に条項がありませんでした。平成9(1997)年の標準管理規約の改正で、初めて長期修繕計画作成が管理組合の業務とされました。この頃の長期修繕計画は、計画期間が20年程度のものもあり、築後10年程度で実施する1回目の大規模修繕工事を乗り切れば、後のことはその時に考えるということも珍しくありませんでした。2回目以降の大規模修繕工事に向けて長期修繕計画の見直しと、修繕積立金の増額について管理組合で合意が得られなければ、そのまま問題を先送りをするマンションもありました。

国土交通省が修繕積立金の目安を改定

 築年数が経過するにつれ、修繕が必要な箇所が多くなり、必要な修繕費用も増えてきます。高齢の区分所有者が増え、年金収入に頼るようになると、修繕積立金の引き上げが難しくなり、十分な工事を行うことができないマンションが増える可能性があります。
 国土交通省は平成23(2008)年に初めて修繕積立金に関するガイドラインを作成、84件の事例をもとに、建物の規模別に専有部分1㎡当たりの目安を示しました。(表-1)
 さらに令和3(2021)年、国土交通省はマンション管理計画認定制度の実施を前に、長期修繕計画ガイドラインととともに修繕積立金のガイドラインを見直しました。(表-2)
 最初のガイドラインと比べると、例えば建築延面積5,000㎡未満の場合、専有部分1㎡当たりの平均額が、月額218円から335 円になる等、修繕積立金額の目安が大幅に上昇していることが分かります。居住者の高齢化、省エネの必要性等による修繕項目の増加、工事費の上昇等を反映したものです。
 マンションが早くから普及した千代田区には、築年数が経過したマンションが多数あります。国土交通省が示した新しい目安に比べて、修繕積立金額が低いこともあるでしょう。自分たちのマンションの長期修繕計画と修繕積立金額で、将来に備えることができるか?目安を参考に管理組合で話し合ってください。

マンションサポートちよだmini第151号掲載(2023.4月発行)
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