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区分所有法を年内にも改正 所有者不明住戸や管理不全住戸等への対策を実施

マンション管理士 飯田太郎 氏

区分所有法を年内にも改正
所有者不明住戸や管理不全住戸等への対策を実施

 マンション管理の重要な制度改正の準備を、国が進めています。マンション管理に関係する制度は、大きく分けて法務省が所管するマンションの権利関係等を定めた区分所有法等と、国土交通省が所管する管理の具体的内容を定めた、マンション管理適正化法や標準管理規約、各種のガイドライン等があります。
 区分所有法の改正については、法制審議会の区分所有法制部会が、法務大臣の諮問により令和4(2022)年10月から同法の見直しについて検討を始め、今年(令和6)年1月までに17回の会議を開催しています。法律の改正内容をまとめた「要綱案」も作成しました。予定では現在開会中の第213回通常国会に法律の改正案を提出するはずでした。ところが国会が政治資金の問題等で混乱しているため、政府は今国会中の改正案提出を諦め、次の国会に提案する方針と伝えられています。
 今回は区分所有法の改正について、予定されている内容の一部を紹介します。本来は国会で法改正が確定してから取り上げるべきことかもしれません。しかし、国がマンションの現状をどのように考えているかを知り、各管理組合が今後の取り組みを考えるための参考になると思い、取り上げることにしました。

所在不明な区分所有者を
総会決議の母数から除外

 国が区分所有法の改正が必要と考えた大きな理由は、高経年マンションと高齢化した区分所有者の増加です。その一つに、相続等を契機に所有者不明の住戸が増加していることがあります。千代田区のマンションでは考えにくいことですが、中古マンションの市場価格が安い地域では、マンションを所有するメリットに比べ、管理費等の所有コストが大きい等の事情があるため、区分所有者の所在が不明な住戸の増加が、深刻な問題になっているようです。
 所在不明な区分所有者の増加は、管理組合総会に出席しない区分所有者の増加につながります。管理組合総会は委任状・議決権行使書の提出者を含め、区分所有者(管理組合員)の過半数が出席しなければ、開催することができません。近年、管理組合活動への関心が低下していることもあり、管理組合総会開催前に、理事会のメンバーや管理会社の担当者等が、出席者の確保に苦労をするマンションは、どこの地域でも増えています。
 それでも管理組合の予算案・決算案、共用部分の変更等を伴わない外壁塗装等の大規模修繕工事の実施等だけを審議する管理組合総会は、出席した区分所有者の過半数が賛成すれば可決できます。
 ところが、管理規約改正や建物の段差を解消しバリアフリー化する工事等は、区分所有者数と議決権数の各3/4以上の賛成が得られないと可決されない特別決議です。さらに建替えや敷地売却を決議するためには、区分所有者数と議決権数の各4/5 以上の賛成が必要です。

所在不明区分所有者を   
総会決議の母数から外すことで
特別決議が可決しやすくなる

 所在不明の区分所有者がいることが特に問題なのは、総会に参加をしない区分所有者は反対者として扱われるからです。このため、所在不明等の区分所有者が多いマンションでは、重要な問題はほとんど決められないことになります。
 法制審議会がまとめた区分所有法の改正要綱案は、こうした状況を改善するために、管理組合役員等からの訴えにより、裁判所が所在不明の区分所有者を、総会決議の母数から除外することができるようにします。
 区分所有者が居住している専有部分(住戸)でも、区分所有者の高齢化等が原因で管理状態が悪く「ゴミ屋敷化」するなど、他の区分所有者や居住者に迷惑をかけることがあります。こうした管理不全専有部分についても、裁判所が「管理不全専有部分管理人」を選任できることになる予定です。

外国に居住する区分所有者は
「国内代理人」を選任できる

 日本のマンション、特にタワーマンションを外国人が投資目的で購入することも増えています。こうした日本国内に住所が無い区分所有者については、管理組合総会に出席する等の権限を持つ「国内代理人」を選任できるようにします。
 建替え決議については、これまでどおり区分所有者数と議決権数の各4/5以上の賛成が必要なことを維持したうえで、耐震性不足、火災に対する安全性不足、外壁の落下等による危険性、給排水設備の不衛生等、バリアフリー基準に不適合等がある場合には、各3/4の賛成で実施できることも定める予定です。


マンションの管理組合の運営等に密接に関係する標準管理規約や各種のガイドラインの改正等については、国土交通省が令和4(2022)年に設置した「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」が令和5(2023)年に「とりまとめ」を発表した後、「外部専門家の活用のあり方に関するワーキンググループ」と「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ」でさらに議論を深めています。


マンションサポートちよだmini第165号掲載(2024.5月発行)
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