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マンションは大きな「電気設備」水害等への備えが重要です

マンション管理士 飯田太郎 氏

マンションは大きな「電気設備」
水害等への備えが重要です

 台風だけでなく、「局地的大雨」や「集中豪雨」への備えも必要
 マンションは堅固なコンクリート造の建物ですが、生活をするためには電気が欠かせません。水に弱い電気設備を浸水等から守ることは、マンション管理の中で特に重要なテーマです。
 日本は緯度が低い南方地域と違い、雨季と乾季の明確な違いはありませんが、梅雨や台風シーズンである6月~10月の5か月間に、年間降水量の6割程度の雨が降ります。

 浸水や水害への備えは1年を通して行う必要がありますが、夏から秋にかけては、特に警戒をすることが重要です。「水への備え」もいろいろあります。
 誰でも最初に考えるのは「台風」です。雨だけでなく強風も吹くため最も恐れられている台風は、進路や勢力等が常に報道されますから、ある程度事前に備えることができます。
 マンション生活と管理で特に警戒したいのは、予想することが難しく、不意打ちを受けることが多い「局地的大雨」や「集中豪雨」です。「局地的大雨」と「集中豪雨」はしばしば混同されますが基本的な発生メカニズムが違います。
 「局地的大雨」はゲリラ豪雨とも呼ばれます。夏の強い日差しで生まれた上昇気流で上空に押し上げられた水蒸気が積乱雲となり、これが発達すると狭い範囲に短時間で強い雨が降る「局地的大雨」をもたらします。積乱雲の寿命は1時間程度で、雨が降る時間は30分ほどです。アスファルトやコンクリートの面積が広く、空調や自動車からの排熱も多い、都心部は局地的大雨が発生しやすいといえます。
 「集中豪雨」とは、線状降水帯が数時間停滞することで、広い範囲で数時間、激しい雨が降る現象です。線状降水帯は次々に発生する積乱雲により、線状の降水域がほぼ同じ場所で停滞することで大雨をもたらします。線状降水帯が発生するメカニズム等は、まだ分からないことも多いようですが、気象庁は次世代スーパーコンピューターを活用し、半日前程度から発生を予測し、本年5月27日から原則都道府県単位で発表しています。

電気設備を守るためには「内水氾濫」への備えも重要
 千代田区は「洪水ハザードマップ(神田川版・荒川版)」と「高潮ハザードマップ」及び「土砂災害ハザードマップ」を作成し、配布しています。ハザードマップで危険性が表示されていない場所でも、局地的大雨や集中豪雨でマンションは被害を受ける可能性があります。主に「内水氾濫」といわれるもので、激しい雨が降り下水道等の排水能力を超えると、マンホール等から水が逆流します。また坂の下も水が溜まりやすくなります。
 ハザードマップ上で水害の可能性がある場所に立地するマンションはもちろん、危険が無いように見える場所に立地するマンションも、自分たちの目で敷地の周囲や建物の状態を見て、浸水の危険がないか確かめることが必要です。変電設備やエレベーター機械室、受水槽等が地階に設置されているマンションは、特に注意が必要です。止水板等で水が入り込むところを塞ぐようにしてください。
 止水板には性能等級(1~6)があります。また工事が必要な設置型と、災害発生が予想される時に使用する簡易型あります。そのほかに土のうもありますが、性能が劣るうえ平時の収納場合や労力も必要です。専門家の意見を聞いて選択をすることをお勧めします。
 マンションの浸水・水害対策への備えとして、管理組合で入手し役員の皆さんに読んでいただきたいのは国土交通省と経済産業省が共同でまとめた「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(※)」です。

(※)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001349327.pdf
 
 これは令和元(2019)年の台風19号による大雨に伴う内水氾濫で、武蔵小杉駅周辺のタワーマンションの地下に設置された高圧受変電設備が冠水、停電が発生したことをきっかけに作成されました。エレベーター、給水設備等のライフラインが使用不能になる事態を重視した国土交通省と経済産業省が、専門家による検討会を設置し、洪水、内水、高潮等の発生時でも、建築物の機能継続(居住継続及び使用継続)を確保するための方策を具体的に示しています。

マンションサポートちよだmini第166号掲載(2024.6月発行)
(PDFはこちら