国土交通省がマンション標準管理規約を改正 名簿の整備や修繕積立金関係の情報の見える化を重視
国土交通省がマンション標準管理規約を改正
名簿の整備や修繕積立金関係の情報の見える化を重視
国土交通省はマンションの「建物の高経年化と区分所有者・居住者の高齢化の2つの老い」に対応する、具体的な方策を次々に打ち出しています。本紙7月号では管理業者やマンション管理士等の第三者の専門家が、理事長に代わり管理者に就任する場合のガイドラインについて紹介しました。今回は6月7日に改正されたマンション標準管理規約について紹介します。
今回の改正は「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」と「標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ(WG)」それぞれの取りまとめに基づくもので、下記の事項について標準管理規約の条項とコメントを整備しました。
○ 組合員名簿等の作成、更新の仕組み
○ 所在等が判明しない区分所有者への対応
○ 修繕積立金の変更予定等の見える化
○ 総会・理事会資料等の管理に関する図書の保管
○ EV(電気自動車)用充電設備の設置の推進
○ 宅配ボックスの設置に係る決議要件の明確化等
1⃣組合員名簿等の作成・更新の仕組み
築年数が経過すると区分所有者がマンション外に移転したり、相続が発生してマンションに居住しない区分所有者が増える傾向があります。また、賃貸住戸も築年数の経過とともに増える傾向があります。このようなことを想定し、マンションに居住していない区分所有者や賃貸居住者についての情報を、管理組合が確実に把握するために、届出を義務づける改正です。
届出が必要な事項として、住所、電話番号、緊急連絡先等を例示しています。管理組合は、このような届出をもとに組合員名簿、居住者名簿を作成し、毎年更新する必要があることも明記されました。
(新設・改正された条項とコメント)
① 住戸(専有部分)を第三者に貸与する場合に、当該第三者に関する情報を管理組合に届け出ることを記載(第19条及び同条関係コメント)
② 組合員がマンション外に移転するなどで、住所等に変更があった際に管理組合に届け出ることを記載(第31条及び同条関係コメント)
③ 組合員名簿を更新すること及び居住者名簿を作成し更新することを記載(第64条2及び同条関係コメント)
2⃣所在等が判明しない区分所有者への対応
マンション外に居住する区分所有者の住所等が不明で、総会の通知が届かないなど、管理に支障を及ぼすことがあります。管理組合が区分所有者の住所を調査するなどの探索を行った場合に、探索に要した費用をその区分所有者に請求できることを示した改正です。
(新設された条項とコメント)
第67条の2及び同条関係コメント
3⃣修繕積立金の変更予定等の見える化
長期修繕計画等で、修繕積立金を将来値上げすることが予定されている場合、組合員に周知徹底するために、積立金の値上げ予定額や値上げを予定している時期、現在の積立金との差額等の情報を示した資料等を、毎年開催される管理組合総会等で配布することを定めた改正です。
組合員だけでなく、マンションの購入を検討する人にも、同様の情報を提供することを定めています。
(新設されたコメント)
第48条関係コメント
4⃣総会・理事会資料等の管理に関する図書の保管
総会や理事会の内容を詳しく記録するために、議案書等だけなく総会で使用した資料等の書類も保管することを示しました。また、管理規約を変更した際に、変更内容を反映した冊子を作成することが望ましいことを示しました。
(新設・改正された条項とコメント)
第49条の2及び同条関係コメント(総会)、第53条(理事会)、第72条関係コメント
5⃣EV(電気自動車)用充電設備の設置の推進
EV(電気自動車)の普及に伴い、従来は無かったEV用充電設備を設置したマンシションが新規分譲されています。既存のマンションで設備を導入する場合のルール等を示す改正です。また、マンションの購入予定者に対する情報提供項目例にも、EV用充電設備設備に関する情報を加えることを示しています。
(新設されたコメント)
第15条関係コメント④
6⃣宅配ボックスの設置に係る決議要件の明確化
宅配ボックスの設置工事を行う際の決議要件の考え方を示しました。
(新設されたコメント)
第47条関係コメント⑥エ
※改正後のマンション標準管理規約(単棟型)とコメントの全文は、以下に掲載されています。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001746766.pdf
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マンションの管理規約は、マンションの憲法といわれるほど重要なものです。
管理規約のひな型となる標準管理規約を国土交通省が作成、適宜改正して公表しています。
千代田区でも、標準管理規約を参考に自分たちのマンションにあった管理規約を制定・改正しているマンションが多数あります。
標準管理規約が改正された場合は、(公財)まちみらい千代田の相談窓口や無料の専門家派遣制度を活用し、自分たちのマンションの管理規約を改正する必要があるかどうかを検討してみてはいかがでしょうか。
<総合相談窓口の設置><まちづくりアドバイザーの派遣>
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マンションサポートちよだmini第169号掲載(2024.9月発行)
(PDFはこちら)