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国土交通省が、「外部管理者方式(管理業者管理者方式)」を導入する場合の留意事項等を提示

マンション管理士 飯田太郎氏

1⃣はじめに
 マンションの建物と区分所有者・居住者の「2つの老い」が進む中で、管理組合役員の担い手不足が問題になっています。解決策の一つとしてマンション管理業者を、管理者(理事長)等として選任する「管理業者管理者方式」の導入を検討する組合もあります。
 この方式は区分所有者の共有財産であるマンション管理の根幹に関わることで、仮に管理組合運営が行き詰まった場合でも、安易に導入することなく、慎重に検討することが必要です。


2⃣国土交通省が示した「外部管理者方式(管理業者管理者方式)」導入時の留意事項

 国土交通省は令和6年6月に、「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(平成29年6月策定)」を改訂*しました。
*https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001746827.pdf
 これに続いて、「マンション管理適正化の推進に関する法律」が本年5月に改正されたことを踏まえ、同法施行規則を10月に改正し、「管理業者管理者方式」の具体的な留意事項等を示し、その内容を関係業界団体に通知**しました。
**https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001913503.pdf

 改正法と改正政令が施行されるのは令和8年4月1日ですが、改正政令の一部を紹介します。管理組合での導入検討の参考にしてください。


3⃣管理組合(区分所有者等)は「管理者受託契約」の重要事項説明会後に「熟慮期間」が必要
 「管理業者管理者方式」が導入されると、マンション管理業者が管理業務の受注者であるとともに、さまざまな管理実(フロント業務等)の発注者の立場を兼ねることになります。また、修繕工事等についても、受発注者が同じマンション管業者や、その子会社等になることがあります。このことは、利益相反となる可能性があることから、従来の管理組合運営では考えられないこととして、厳しくチェックされてきました。
 しかし、「管理業者管理者方式」を導入する管理組合の増加に伴い、区分所有者等の利益を守るために、本年5月の法改正で、「管理者受託契約」についての重要事項説明会の実施義務等が新たに定められたことから、改正省令でその実施方法を具体的に示しました。
 ポイントは「管理者受託契約」は、従来から実施されてきた「管理委託契約」とは異なります。この2つの契約を締結する場合は、それぞれの重要事項説明会を開催する必要があります。
 なお、管理組合(区分所有者等)は、「管理者受託契約」の重要事項説明会後に、その内容を理解するための「熟慮期間」を設けたうえで、契約締結の可否を判断することが必要です。改正省令では、契約締結について決議する総会とは別の日に、説明会を行うことが望ましいとしています。


4⃣管理業者による印鑑保管等のルール
 マンション管理業者が、管理組合の保管口座等(以下「口座」という。)の印鑑等を保管することは原則として禁止されています。例外的に「支払一任代行方式」の場合には、管理業者が印鑑を保管することができます。しかし、方式によって保証契約を締結し、一定期間内に積立金を別の口座に移管する必要があります。

 前記してきた管理業者管理者方式を導入すると、マンション管理業者が印鑑を長期間保管することになる場合があります。そこで改正省令では、管理業者が印鑑を長期間保管できる要件を定めました。

(イ)マンション管理業者又は当該管理業者の関連会社等以外に印鑑等の保管を承
  諾する者がいない状況を区分所有者等に対して示すことが必要である。具体的
  には、合理的な範囲で区分所有者、第三者等に対して印鑑等の保管を承諾する
  者を募ったが、区分所有者の負担可能な条件で印鑑等の保管を承諾する者が現
  れなかったことを記録することなどが考えられる。

(ロ)適切な保管体制としては、以下のような措置が取られていることである。
  ①管理者事務を担当している部署とは別の部署が印鑑等を保管していること。
  ②保管に際しては、金庫等施錠ができるものを用いるとともに、開錠・施錠権
   限は保管部署の管理職に限定すること。 
  ③管理者事務の担当者が印鑑等を使用する際は、管理者事務を担当している部
   署の管理職から印鑑等を使用する者、使用理由、使用日時、押印文書等の確
   認を受けるとともに、これらを記録すること。
  ④開錠・施錠に際しては、印鑑等を使用することについて管理者事務を担当し
   ている部署の管理職が確認したことを確認の上、開錠・施錠権限を有する印
   鑑等の保管部署の管理職を含めた複数名が立ち会うとともに、印鑑等を使用
   する者使用理由、使用日時、押印文書、開錠・施錠日時等を記録すること。

 また、国土交通省は関係業界団体等への通知の中で、「これはマンション管理業者において印鑑等を長期間保管することを推奨するものではない」としたうえで、トラブルや事故を防止する観点から、区分所有者や監事等の第三者が、印鑑等の適切な保管体制が取られていることなどを確認することが望ましいとしています。
 なお、「保証契約」とは、マンション管理業者が第三者との間で締結する契約で、マンション管理業者が管理組合に対して修繕積立金等金銭の返還義務を負うことになった場合に、第三者が返還義務を保証する契約です。
 保証契約の対象となる金額は、「口座に預貯金として管理されている合計額以上とし、保証期間内に口座の金額が変動することが予想される場合は、期間内の最大額以上とする必要がある」と、しています。
 また、マンション管理業者が破産等をした場合でも、管理組合の財産が守られる必要があります。このため、「口座名義は、管理組合名を含むものとするなど、管理組合に帰属するものであることが、一見して明らかなものとする必要がある」としています。
 マンション管理業者が口座に係る印鑑等を保管することは、原則として禁止であることを踏まえると、マンション管理業者が上記の要件を満たしていることを、区分所有者等に対して書面をもって説明したうえで、管理業者が管理組合の印鑑等を保管することの是非を、管理組合(区分所有者等)が最終的に判断すべきです。併せて総会等で議論するなど定期的に確認・見直しを行うことが望ましいとしています。

 以上、国土交通省が関係業界団体等に通知した内容の一部です。「管理業者管理者方式」の導入はリスクを伴うもので、必ずしも区分所有者・管理組合の負担軽減になるものではないことが読み取れます。個々のマンションの管理組合は、さまざまな課題を抱えています。そのような中でも、マンション管理の本来の姿である「区分所有者が管理組合運営を担う」ことを継続してほしいと思います。

マンションサポートちよだmini第183号掲載(2025.11月発行)
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