〈防火の冬〉わが家の火災への備えを考える
1⃣火災による死者は、 12月~3月に6割が集中
11月26日に香港の超高層共同住宅群7棟で多数の人が犠牲になった火災の全貌は、本稿の執筆時点(12月1日)では明らかになっていません。報道によれば、修繕工事で使用されていた竹製の足場と建物を覆う防護シートが、火災拡大の原因と考えられているようです。
日本ではマンションの共用部分や大規模修繕工事等の実施の際には、火災への備えが厳しく定められています。デベロッパー、管理会社、修繕施工会社等(以下「事業者等」という。)が消防関係の法令を遵守していれば、今回の火災のような悲劇は発生しないはずです。現在は火災直後のため、事業者等は大規模修繕工事等の実施を慎重になっていると考えられます。そのような中でも、同工事を実施中または準備中の管理組合は、事業者等に防火や安全対策内容の具体的な説明を求めるようにしてください。
千代田区では、平成27(2015)年3月に西神田にある地上25階建ての区民住宅等複合施設の20階で火災が発生しています。その経緯や教訓は区内分譲マンションの管理組合や居住者に十分共有されているとは言えませんが、黒煙が立ち込める中で、消防車が到着するまで上下階の居住者が初期消火を実施し、最小限の被害にとどめることができました。これは、毎年2回実施している防災訓練の成果と考えられます。この詳細は改めて紹介します。※
※サポートちよだ第20号でも記事にしています。
マンションの共用部分の防火管理は管理組合の業務ですが、専有部分(各住戸)は、各々の居住者が責任をもって火災予防に努める必要があります。今回は、マンションの各居住者が日常生活の中で実施できる火災予防について考えます。
具体論の前に、東京消防庁のデータ[図-1]が示す「住宅火災による死者の約6割が12月から翌3月に集中している」ことを念頭に置いてください。
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| [図-1]過去5年間の住宅火災による死者の発生状況(東京消防庁) https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kasai/house_fire.html |
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2⃣防火の抜け穴になりやすいバルコニー
共用部分のバルコニーの利用と管理は、専用使用する各戸の居住者に委ねられています。しかし、室内に比べて防火が行き届かず、火災のリスクが高まることがあります。
そのバルコニーは、洗濯物や布団干しの場として多く使われています。この洗濯物等に、上層階のタバコの吸い殻が飛び火して、火災につながることがあります。また、バルコニーは可燃物である古新聞等や廃棄物の一時置き場にしている住宅も少なくありません。
冬には考えにくいことですが、戸外の気候が良い季節には、バルコニーにテーブルと椅子を置いて、お茶や軽食を楽しむこともあるはずです。このテーブルや椅子に近所で発生した火災が延焼する可能性があります。植栽の緑のカーテンで日光を防ぎ、部屋に涼風を入れることもあるはずです。このようなときに、陶製等の植木鉢の代わりとして、発泡スチロール製の箱等の燃えやすいものを使うことにも注意が必要です。
バルコニーの多くは近隣住戸や上階の人の避難路です。避難の妨げになるものを置かないことは、マンション生活の基本です。しかし、避難路の確保以外にバルコニーの使い方を具体的に管理規約や使用細則で禁止しているマンションは少ないと思います。そのため、各戸の居住者が日常生活の中で自発的に防火に取り組んでください。
また、今回の標準管理規約改正で取り上げられた「バルコニーでの喫煙」は、管理規約や使用細則で禁止していない場合でも、近隣居住者への影響を考えると、生活マナーの一つとして考慮してほしいところです。
3⃣高さ31m以上のマンションでは、〈防炎物品〉のカーテンと絨毯(カーペット)の使用が義務
消防法では高さ31メートルを超える(おおむね10階建て以上)マンションは、階数に制限なく全住戸すべての部屋で、カーテンと絨毯(カーペット)に「防炎物品」を使用しなければならないと定めています。
〈防炎〉は燃えやすい可燃性の繊維に難燃剤を付着させ加工したものです。火がつきにくく、燃え広がらないため、火災の拡大を抑える効果があります。そのため、初期消火や避難に必要な時間を稼ぐことができます。
該当する規模の新築マンションでは、あらかじめデベロッパーが「防炎物品」のカーテンやカーペットを用意していることもあります。しかし、中古マンションを購入した場合や、賃貸住戸に入居したときは、自分で用意しなければなりません。「防炎物品」には[図-2]のようなラベルが貼られているので、カーテンやカーペットを購入するときは、確認する必要があります。
「防炎物品」と同じようなものに「防炎製品」があります。
この製品は、消防法に基づく防炎物品以外の防炎品で、使用する人を火災から守るため、火災予防上防炎性能が望ましいとの考えから、消防庁等の指導により普及が図られています。
なお、「防炎製品」には、寝具・衣服等のほかに下記のような製品があります。
| 襖・障子・防災頭巾・非常用持出袋、祭壇用白布、テント、自動車やバイクのカバー等 |
「防炎製品」には[図-3]のようなラベルが貼られています。
マンションの防火では、初期消火や避難が重視され、バルコニーの対策はおろそかになりがちです。外部の火がバルコニーに置いた可燃物に飛び火し、防炎処理されていないカーテン等から室内に燃え広がる可能性があることも忘れないようにしてください。
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| https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouen/p05.html | ![]() |
マンションサポートちよだmini第184号掲載(2025.12月発行)
(PDFはこちら)



