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政府の中央防災会議が、首都直下地震の被害想定を12年ぶりに見直し

マンション管理士 飯田太郎氏

 政府の中央防災会議は、令和7(2025)年12月19日、首都直下地震の被害想定を12年ぶりに見直し、発表しました。前回平成25(2013)年3月発表の被害想定と同じく、都心南部を震源とするM(マグニチュード)7級、最大震度7の地震が、冬の夕方(風速8m)に発生したとの設定で、12年間の社会の変化や、地震対策の効果を反映した内容となっています。


 死者数は2割減少するも、目標は達成できず
 今回の想定は、死者を建物倒壊による約6,000人と、火災による約1万2,000人を合わせて約1万8,000人としています。前回想定の約2万3000人から2割減少しましたが、平成27(2015)年に策定した「首都直下地震緊急対策推進基本計画」で掲げた、死者約2万3,000人をおおむね半減するという目標には及びませんでした。
 想定される死者数の4割(約8,000人)は東京都が占めています。そのうちの3分の2は木造住宅密集地域(木密)等の住民です。消防自動車等が通れない細街路の拡幅や再開発等が進んだことで、東京都の木造住宅密集地域は減少しています。それでも、令和7(2025)年4月1日現在、23区内の54地区(2,971ha)で、木造住宅密集地域整備事業が行われています。


 少ないマンション関係の記述
 今回の被害想定は、過去に発生した地震による建物の倒壊や火災で死亡したマンション居住者等が少なかったことで、マンション関係の記述は少なくなっています。
 しかし、東京をはじめとする首都圏では、多くの人がマンションで生活をしています。民間調査機関の東京カンテイが毎年発表している「マンション化率」(世帯数に対するマンション戸数の割合)によると、令和6(2024)年末現在、東京都28.29%、神奈川県23.16%、千葉県15.74%、埼玉県14.15%です。東京都心3区は中央区81.97%、千代田区81.08%、港区76.845%です。これらの数字から、都心部を震源とする首都直下地震の被害想定は、マンションに焦点をあてた分析が必要と考えます。
 マンションが新耐震設計基準で設計・建設されていれば、地震に対する基本性能が高いことから、飲料水、食料、簡易トイレ等の十分な備蓄があれば、在宅避難が可能です。しかし、この場合でも、エレベーターや上下水道が長期間使用できないことが考えられます。高齢者や身体に障害がある居住者には、特に厳しい生活環境になります。
 また、壮年期の居住者の多くは、被災後に勤務先のBCP(事業継続計画)等で、徒歩でも出勤をする必要がある場合も考えられます。このことから、マンションに残る高齢者や子どものことを考えて、在宅避難時の居住者相互の協力体制を検討する必要があります。そのためにも、日頃から近所づきあいを深めておくことが大切です。
 具体的には、高齢者や子どもも含めた家族全員が参加しやすい夏祭りやクリスマス等のイベントを、マンションの規模にあわせて企画することが考えられます。消防署や消防団と相談をして、防災訓練とイベントを同時に開催する方法もあります。多忙な管理組合役員のほかに、企画運営の中心になる人を公募するなど、特定の人に負担が集中しない配慮も必要です。


 住民共助への支援が必要
 今回の被害想定報告(以下「報告」という。)でも、人のつながりやコミュニティの重要性を指摘しています。また、近所の人との望ましいつきあい方について、NHK放送文化研究所の『日本人の意識』の調査結果を引用し、近年の変化を説明しています。昭和48(1973)年の調査*では、「何かにつけて相談したり、助け合えるようなつきあい(全面的なつきあい)」が26%を占め、「会ったときに挨拶する程度のつきあい(形式的なつきあい)」の21%を上回っていました。しかし、時間の経過とともにその割合は逆転し、平成30(2018)年には「形式的なつきあい」が37%を占め、「全面的なつきあい」は14%に減少しています。
 また、高齢者の64.2%が、個人または友人とあるいはグループや団体で、自主的に行われている活動に参加したことがないなど、高齢者の孤立が大都市で顕著になっています。
 報告では、「地域の防災力向上は行政の対応だけでは不十分で、国民や企業、NPO等あらゆる主体の参加・連携による総合的な防災力を向上させることが不可欠である。このため、国、地方公共団体は、行政による対応に限界があることを明確にしつつ、行政と国民・企業等の役割分担を明らかにしたうえで、総力を結集した対策を推進する必要がある」としています。
 *大都市(東京23区・100万人以上の市)が対象


 進めたい、マンションと地域の連携
 これまでマンション標準管理規約では、管理組合の業務として防災の位置づけが、あいまいでした。そのため、今回の改正で防災が管理組合業務であることが明確になり、消防法による防火管理者の規定も同規約〈コメント〉に記載されました。
 しかし、マンション防災はマンション内だけでできることではありません。一人ひとりの自助は当然のこととして、居住者による共助の輪をマンションの外にも広げていくことも重要です。それぞれの地域の実情に応じて、マンションの管理組合、住民組織、町内会等の地域地縁団体、企業、学校、消防団、医師会、民生委員等と行政が参加する(仮称)「〇〇地区防災会議」といった仕組みがあれば、各マンションの防災への取り組みが前進するかもしれません。
 前述の報告では、〈私たちみんなが「自分ごと」として捉え、ともに立ち向かっていく〉が副題になっています。マンションでも、みんなが知恵を出し合い、すでに明らかになっている課題や想定される事態に立ち向かうことが重要です。


 今回の被害想定についての東京都の見解
 国の首都直下地震被害想定以外に、東京都も令和4(2022)年に独自の被害想定を行い発表しています。2つの被害想定を比較すると、東京都の想定の方がライフラインの復旧が早い傾向があります。このようなことを踏まえて、東京都は国に被害想定に対して下記の見解を明らかにしました。 
 1⃣都は、減災目標を定めたうえで、耐震化や不燃化など、都市の強靭化を加速し、全国をリードする取り組みを展開してきた。その結果、首都直下地震等の東京の被害想定は、10年前と比較し大幅に改善した。
 2⃣国の被害想定は、必ずしも首都圏の実態を反映していない。日本が危ないという誤ったメッセージとなりうるものである。 
 地震対策には、さまざまな課題もあるようです。昨年は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)、北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表され、今年に入ってからも山陰地方、東北地方、関東地方等での地震情報が相次いで報じられています。私たちは、いつ大地震が発生してもおかしくない状況の中で生活をしていることを念頭に、備えを忘れずにいたいものです。

 参考資料等___________________________________________

首都直下地震の被害想定と対策について( 報告書)

https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/pdf/r7houkoku3.pdf

東京都不燃化ポータルサイト(実施地区一覧表)

https://www.funenka.metro.tokyo.lg.jp/initiatives/wooden-house/implementation-area/index.html

東京カンテイ プレスリリース 行政区別マンション化率

https://www.kantei.ne.jp/wp-content/uploads/2025/02/121karitsu-gyouseiku.pdf

首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書 説明資料

https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/pdf/r7houkoku2.pdf

「首都直下地震の被害想定と対策について」に対する都の見解

https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/20251219_07_01

マンションサポートちよだmini第185号掲載(2026.1月発行)
(PDFはこちら