いざというときの備え マンションの非常用発電
| 令和8年3月11日で、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の発生から15年が経過しました。この震災後も熊本、能登半島等で大きな被害をもたらした地震が相次いで発生しています。東京で生活する私たちにも深刻な影響を受ける大地震(首都直下地震や南海トラフ巨大地震など)が、いずれも今後30年以内に70%~80%程度*の確率で発生すると、内閣府は発表しています。マンションの場合、地震の揺れで建物が倒壊する可能性は高くありません。しかし、建物・設備が重大な損傷を受けることは推測されます。また、マンション外から供給される電気や水道、ガスなどが長期間停止することも考えられます。 その中でも電気は、マンションのさまざまな設備機器に使用されているため、停電をした場合には、マンション生活に重大な影響を及ぼします。 これらを踏まえて、今回はマンションの非常用発電設備について考えます。 |
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*地震災害 内閣府 防災情報のページ |
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1⃣法律上の設置義務
○建築基準法による設置義務
非常用の照明装置、昇降機、排煙設備を動作させること等を目的に、高さ31m超の建築物(政令で定める建築物を除く)や不特定多数の人が出入りする特殊建築物、延べ面積が1,000㎡超の建築物などに対し、必要な建築設備の一環として非常用設備の設置を定めています(建築基準法第34条第2項、第35条)。さらに建築基準法施行令第129条では、そのための予備電
源の設置も義務付けられています。
○消防法による設置義務
停電時でもスプリンクラーや消火栓設備、火災報知器などの消防設備が正常に作動することを目的に非常用発電機の設置規定が設けられています(消防法第17条, 消防法施行令第11条 等)。
このように一定の要件に該当するマンションは、非常用発電機を設置する必要が生じてきます。ただし、設置のみが義務とされているのではありません。設置した場合、停電時でも作動するように定期的な点検が義務付けられています(機器点検・総合点検、負荷試験など)。非常事態が発生した際、マンションの住人が混乱しないように非常用発電機の定期的な点検は極めて大事な項目と位置付けられています。
マンションに非常用発電機が必要とされる主な理由を、もう少し詳しく説明します。
2⃣非常用発電機の必要性
○非常用エレベーターの予備電源として
前述のように、建築基準法では高さ31mを超える建築物には非常用昇降機(エレベーター)と予備電源の設置が義務化されているため、この条件に該当するマンションは非常用電源の設置が必要になります。
○緊急時に管理組合を機能させるために
近年、企業が災害時などの緊急事態でも事業継続できるようにするため、あらかじめ非常用電源を設置する対策が講じられています。
同様に、マンションでも大規模災害時には、ライフラインの維持や在宅避難のスムーズな遂行のために、管理組合の活動が継続できることが望ましいです。その対策として、法律で設置義務が適用されないマンションの場合であっても、非常用電源の設置を検討する必要性が高まっています。
○給水設備の機能を維持するために
停電時のマンションで深刻な問題となるのが給水の確保です。
マンションの給水には複数の方式がありますが、電気を使って水圧ポンプで水を送り出す「増圧直結式」を採用している場合、停電すると給水圧力が低下し、断水の恐れがあります。建築基準法や消防法では、停電時の給水設備の維持は義務化されていませんが、非常時に備え、水圧ポンプを動かすための予備電源として非常用発電機を設置しておくと安心です。
3⃣非常用発電機の種類
○防災用の非常用発電機
災害時に作動し、停電してから40秒以内に、自動で消防用設備や建築設備などの防災負荷へ電力を供給する発電機です。主に病院、高齢者施設、オフィスビルやホテルなどの不特定多数の人が出入りする場所や施設に設置が義務付けられています。
○保安用の非常用発電機
災害時の停電に備え、設置者が自主的に導入するバックアップ電源のことです。主に保安負荷のみに対応した非常用発電機を設置します。
法律上の設置の義務はありませんが、事業継続計画(通称:BCP)の観点から、設置が推奨されています。
○防災・保安兼用の非常用発電機
上記の防災負荷と保安負荷、両方に対応できる非常用発電機のことです。
防災用のものに比べて、より大きな電力供給(出力容量)が求められることに注意が必要です。
発電効率が高いことやメンテナンスが容易なことがメリットである一方で、振動や騒音、排気煙が発生するデメリットがあります。
○ハイブリッド型
ガスタービン式またはディーゼル式に蓄電池を組み合わせた非常用発電機です。
燃料を使用している間に蓄電し、充電が完了すると蓄電池から電力を供給します。この仕組みにより、長時間の電力供給が可能で、燃料補給の手間を軽減できる利点があります。
○太陽光発電
補足として、太陽光発電で停電時の電力を賄う方法もあります。
ただし、夜間は発電ができなかったり、発電量が天候に左右されますが、大規模災害時に停電が長期化した場合などには、こうした備えがあると安心です。
近年、大規模な自然災害が頻発する中で、非常用発電機はマンション防災を考えるうえで非常に重要です。お住いのマンションが建築基準法や消防法で非常用発電設備の設置が義務付けられていない場合でも、停電時の住民の安全と生活を支える備えとして、設置を検討されることを推奨します。
マンションサポートちよだmini第187号掲載(2026.3月発行)
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