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5 月28日から、気象災害情報を変更 複雑で分かりにくい点を改善

マンション管理士 飯田太郎氏

 地球温暖化の影響等で気象災害が頻発し、関連情報の発表回数も増加しています。国土交通省と気象庁は、死者・行方不明271人という大きな被害を出した平成30(2018)年7月豪雨を教訓に「自らの生命は自らが守る」という意識の醸成と「行政による避難行動の全面的なサポート」を軸に、災害発生の危険度を発信してきました。
 しかし、従来の気象災害情報は「情報」や「警報」といった名称が警戒レベルごとに統一されておらず、複雑で分かりにくいという課題がありました。


課題例1
「土砂災害警戒情報」と「氾濫危険情報」は、同じ警戒レベル4相当でありながら、災害の原因や避難行動が異なるため、名称が区別されている。 

課題例2
情報の名称と災害のリスクが結びつきにくい。その一例として「顕著な大雨に関する気象情報」から「線状降水帯の発生リスク」を直感的に読み取ることは難しい。


 このため、政府は気象庁に「防災気象情報に関する検討会」を設置しました。その提言に基づき、本年5月28日から新たな防災気象情報の運用が始まっています。


 新制度では、河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の4分野で、5段階の警戒レベルを明記する名称に統一されました。具体的には、従来の「大雨警報」は「レベル3大雨警報」に、「大雨特別警報」は「レベル5大雨特別警報」へ名称が変更されました。
 河川に関する情報は「大雨に関する情報」と「氾濫に関する情報」に整理されました。全国約400の「洪水予報河川」を対象に、水位の実測値や予測値に基づき、増水や氾濫のおそれがある場合に情報が発表されます。
 東京都内の対象河川は、神田川、目黒川、渋谷川、古川、野川、仙川、妙正寺川、善福寺川、石神井川、芝川、新芝川の11河川です。
 このほかの中小河川については、「大雨」の注意報や警報などを通じて危険情報が発表されます。中小河川は流域面積が小さく、勾配も急な場合が多いため、水位が急激に上昇し、浸水害と同等のスピードで氾濫リスクが高まる傾向にあります。そのため、気象庁の「キキクル※」などを活用し、常に最新の危険度を確認することが重要です。
 ※「キキクル」=気象庁が地域ごとの危機度分布をインターネットで公表

 警戒レベル4の発令時には危険な場所から全員が避難し、避難に時間を要する高齢者等は、警戒レベル3の段階で避難を完了させてください。また、周囲の状況から危険を察知した場合は、情報の発表を待つことなく、自主的に避難を開始することが極めて重要です。


▮東京では6月の降水量の記録を更新
 新しい防災気象情報の運用開始直後の本年6月3日、台風6号が紀伊半島に上陸しました。これは昭和26(1951)年の統計開始以来4番目に早い本土上陸で、沖縄から関東の広い範囲に大雨や暴風をもたらしました。
 東京都心では激しい雨が降り続き、12時間降水量が172.5ミリに達しました。これは6月の観測史上最多記録を更新するもので、6月1か月分の降水量に相当する150ミリ超の雨がわずか数時間で降りました。
 避難にあたっては、あらかじめ指定された避難場所へ向かうことだけに固執せず、川や崖から離れた近くの頑丈な建物の上層階に避難するなど、その時点で最善の安全確保行動を自ら判断してとることが重要です。
 千代田区民に馴染み深い神田川は、井の頭公園(吉祥寺駅近く)を水源とし、妙正寺川と善福寺川を支流に持つ典型的な都市河川です。全域で厳重な水害対策が施されており、最も大きな施設として環状7号線の地下に約54万㎥の貯留量を誇る巨大貯水槽を設けているほか、各地にも貯水槽が整備されています。
 千代田区では、住民の生活に大きな影響を与える大雨が発生することがあります。気象庁や区役所の気象災害情報に注意し、常に適切な避難行動を意識してください。特に注意すべきは「坂道」です。区内に56もの坂がある千代田区では、傾斜によって雨水が建物内に浸水し、電気設備等に重大な被害を与えるおそれがあります。また、下水道処理能力を超えて道路に水が溢れる内水氾濫にも厳重な注意が必要です。
 マンション周辺の傾斜(坂)の有無や浸水しやすい場所など、地域の特性はマンションに居住している皆さんが把握していると思います。あらかじめ浸水リスクのあるところには、必要に応じて土のうを設置するなどの事前対策を講じてください。


▮隅田川も要注意
 セーヌ川(パリ)やテムズ川(ロンドン)とも比肩される東京の代表的な河川「隅田川」はかつて荒川と呼ばれるほどの暴れ川でした。しかし、江戸時代初期に行われた荒川西遷工事や明治から昭和に及ぶ荒川放水路の開削を経て治水が進みました。現在は北区の岩渕水門で隅田川と荒川に分かれ、どちらも穏やかな河道を保っています。
 現在、荒川水系で人口減少による上流部の山林荒廃とそれによる水害の発生が深く懸念されています。令和7(2025)年10月1日に実施された国勢調査の速報値が、本年5月20日に発表されました。この結果のうち、荒川水系の課題に深く関係する主なポイントは次のとおりです。

 ①全人口が5年前に比べて約310万人減少
 ②東京都と沖縄県は人口が増加したが、他の道府県は減少
 ③東京都は約19万人の人口増加
 ④荒川上流を含む埼玉県の人口減少      
(東京都心に近い川口市、さいたま市等では人口増加を続けているが、県西部の秩父地方等では人口減少が深刻)

 荒川の源流は、山梨(甲州)、埼玉(武州)、長野(信州)の3県にまたがる甲武信ヶ岳です。現在、この源流の森林を抱える埼玉県秩父市をはじめ、荒川上流地域では人口減少が進んでいます。実際に秩父市では5年前と比べて、人口が5000人以上も減少しており、これは埼玉県の自治体の中でも6番目に多い減少数です。
 このまま人口減少が続けば、上流の森林を手入れする担い手がいなくなり、保水力が失われてしまいます。その結果、下流の隅田川や荒川が再び「暴れ川」として氾濫するリスクが高まります。都心から遠く離れた場所の問題ですが、流域に暮らす私たちは強い関心を持つ必要があります。

 

マンションサポートちよだmini第190号掲載(2026.6月発行)
(PDFはこちら