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笹島久子さんの物語り

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廃土を再利用。花を飾る活動の始まりに

富士見という街は、中央に早稲田通りが通り、昼間は人が行き交いにぎわいがある。多くのビルが林立する中に、マンションや公立・私立の学校が点在し、どちらかというと自然の少ないエリアといえる。そんな通りにかわいい花の鉢が並んでいる。これらは知らず知らずのうちに、人同士の交流と心のやすらぎをもたらす、小さいながらも大きな役目を担っている。

富士見1丁目・2丁目地域で、この花を飾る活動を長年続けているのが、「花咲かじいさん」代表の笹島久子さんだ。
笹島さんは富士見在住35年以上。現在この地域はマンション・学校・企業・病院と多様な環境の地域で住民の交流が少ないことを実感していたそうだ。
そんなとき、建て替え前の富士見小学校の屋上にあった理科園(理科の実習ができる場所)に、理科で使った土が大量に放置されたままになっていることを耳にした。
「たくさんの土が山のように何トンも置かれたままになっていました。これはもう使わないものだったのですが、捨てるにしても産業廃棄物になり、有料で持っていってもらうしかない。それに捨てるなんてもったいないですよね。それで土の再利用を思いつきました。」

そこでPTAの皆さんの協力を得て、小学校の子どもたちとお母さん、お父さんたちにも参加してもらい、全部の土をふるいにかけて、きれいに使えるよう再生してもらった。
こうして、よみがえった土を使い、100円ショップで自転車カゴを購入し、透水シートを敷いて花かごを200鉢、早稲田通り沿いに置くことにした。もちろん、カゴもシートも花の苗も、数人の仲間が自腹で購入。こうして早稲田通りは、かれんな花が咲きそろい、殺風景だった街に、潤いをもたらす貴重な存在になった。これが「花のかけはしで、心豊かな街づくり」をテーマに掲げる「花咲かじいさん」のスタートとなった。

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千代田まちづくりサポート助成対象グループに

ちょうど「花咲かじいさん」の活動がスタートした頃と時期を同じくして、千代田区街づくり推進公社(現:まちみらい千代田)では「千代田区のまちに活気を取り戻し、魅力的な住みよいまちづくりを“市民”の手で」というスローガンのもと、『千代田区まちづくりサポート』という事業をスタートさせた。これは、活動内容を公開の場でプレゼンテーションし、助成対象グループとなることで資金的サポートを得られる。1グループ最高50万円の範囲で、学識経験者、公社の賛助会員、地域の方々など、数人で審査を行う。
早稲田通りに花を飾る活動を始めた「花咲かじいさん」を知った町会の知り合いが、このまちづくりサポートの第1回審査で助成を受けたことで、この事業のことを聞いた笹島さんは、さっそく応募を行った。
「審査を受けるためには、持ち時間の3分間以内に活動内容や方針を発表しなくてはいけません。そこで、審査を受けるプレゼンテーションのときには、花の鉢の実物を持っていったりして、町会・地域・行政の三位一体のまちづくりの大切さを一生懸命説明しました。」
審査会委員の皆さんにもさまざまなアドバイスをもらい、まちづくりサポートの第2回目に助成を受けることができた。このおかげで、花の苗も鉢もメンバーが自身で購入する必要はなくなり、さらに地域での花を通して人々との交流は広がることになった。

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アダプト制度の先駆けに

1999年以降、「花咲かじいさん」は、まちづくりサポートの助成を3回受けることができ、毎年、早稲田通りに順調に花を置いていった。

しかし、この助成は3年を限度としている。つまり、3年でひとり立ちして、自分たちで活動していってくださいという主旨なのだ。そのため、「花咲かじいさん」でも2002年以降は自助努力で、お花や鉢、場合によっては土なども購入しなくてはならなくなった。

「3年が過ぎたとき、花を買う資金をどうしようかと考えました。そこで町会長に相談に行ったり、周辺の企業や近くの友人などにも寄付をお願いしに行ったりしました。」
そのほかに、千代田区役所道路公園課や区長にも相談に行ったところ、千代田区で初めて設立された「アダプト制度」の第一号として認可を受けることができた。
この「アダプト制度」の「アダプト」とは、公共施設の“里親”制度のこと指し、地域の人たちが、いつも利用している道路や公園などを“里親”のように大切に慈しむという趣旨でつくられたもの。行政がこれを支援する。
「花咲かじいさん」の活動が認められたがゆえのこの制度では、資金ではなく現物を支給される。笹島さんの活動には、春と秋花の苗と植木鉢、場合によっては土などが毎年2回支給されることになり、当初は150鉢を通りに飾ることができるようになった。

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植え替えのお手伝い、花の里親制度も地域ぐるみで

しかし、毎年2回、花の植え替えをするのは、笹島さん以外のメンバー数人では非常に大変なので、富士見小学校の5、6年生にお手伝いをお願いすることに。学校の協力で、授業の一環として植え替えのサポートをしてもらえるようになったそうだ。
「花だって生きていますよね。小さな花の命を通して、命の大切さを子どもたちに伝えられると良いなと思い、ずっとお願いしています。」

また、花は植えた後にお水をあげないと枯れてしまう。そこで、花鉢が飾られている場所の目の前にあるビルのお店やお住まいの方に、水をあげてもらえるようにと、笹島さんが1軒1軒お願いに歩いた。
それだけでは足りない場合には、笹島さんがみずから早朝と夜間、台車に水を乗せて、水やりに行くこともあるそうだ。
「当初は街にお花があること、そこから街に暮らす人や働く人たちと交流が広がれば良いなと思いました。その思いがなんとか実を結んできたようで、花を通して地域の人たちとあいさつを交わしたり、子どもたちとも気軽に“こんにちは”と言ったり。花をきっかけにして会話も生まれたし。ビルの谷間に花を通しての交流が確かにできるようになったと実感しています。」

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花で育てる輪は、さまざまな地域に

ちなみに「花咲かじいさん」が受けているアダプト制度は、笹島さんの活動によって制度ができたもので、区役所がその活動を評価した証だという。現在は、このアダプト制度を利用して、区内の別のエリアにも同じような花を植えて街を飾り、地域の交流を深めるグループがたくさん生まれているそうだ。都心でビルの多い千代田区だからこそ、花の輪の広がりは人の心を結ぶ大きな役割を持っているのだろう。
また、笹島さんの活動は岩手県で市民活動の好事例として参考にされ、市民によるまちづくりの輪は、さらに広がっている。
「地域の方たち、町会のみなさん、富士見小のPTAのお母さん、お父さんや子どもたちなど、本当にたくさんの方々が協力してくださって、花を植えて楽しむ活動を10数年も続けることができたと思っています。本当に、みなさんと一緒だからできたことです。」
今後も地域の方たちと一緒に花を植えて育てながら、楽しく交流していきたいと話す笹島さん。今の願いは、この活動がさまざまな人に受け継がれて続き、地域の人たちの間で命を大切にする気持ち、花をめでる心のゆとりと優しさを育てていきたいと思っている。

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