マンション管理や再生関連の法改正を閣議決定 築年数が経過したマンションの再生が容易になります
築後40年以上経過したマンションは全国で約137万戸あり、ストック全体(約704万戸)の約20%を占めています。管理状態は個々のマンションによって違うため、一概に言えませんが、多くの高経年マンションで建物と区分所有者の「2つの老い」が進行していると考えられます。この状態が続くと区分所有者や居住者が困るだけでなく、外壁の落下等で近隣にも迷惑をかける可能性のあるマンションが増えます。
こうした状態を是正するため、政府は新築から再生までのマンションのライフサイクル全体を通して、管理・
再生を円滑に進めるため、異なる時期・目的で制定された「区分所有法」、「被災マンション法」、「マンション建替え円滑化法」、「マンション管理適正化法」、「住宅金融支援機構法」等の12の法律を一括して改正する
法律案を3月4日に閣議決定しました。
この改正法案には社会資本整備審議会(住宅宅地分科会マンション政策小委員会「委員長:齊藤広子横浜市立大学教授/(公財)まちみらい千代田理事」)が、2月12日に公表した「とりまとめ」の内容が多く反映されています。以下、法改正案の主な内容を紹介します。
所在不明の区分所有者を採決の母数から外すなど
管理組合総会の議決が合理化されます
1⃣マンションの管理の円滑化等〉
①新築時から適切な管理や修繕が行われるように、分譲事業者が管理計画を作成し管理組合に引き継ぐ仕組みを導入します。
②マンション管理業者が管理組合の管理者を兼ね工事等受発注者となる場合、利益相反の懸念があります。こうした自己取引等について、区分所有者への事前説明を義務化します。
③「修繕」や「規約改正」等を決議する場合、区分所有者数ではなく総会出席者の多数決で行えるようにします。
④管理不全の専有部分・共用部分等を裁判所が選任する管理人に管理させる制度を創設します。
⑤所在がわからない区分所有者について、裁判所が認めれば決議の母数から外せるようにします。
築年数が経過したマンションの再生が、実施しやすくなります
2⃣マンション再生の円滑化等
①これまでの「マンション建替え円滑法」を「マンション再生円滑化法」に題名改正します。
②建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊し等を行うためには、これまで区分所有者全員の同意が必要でしたが、法改正案は建替えと同様に区分所有者数と議決数の各「5分の4の賛成」の多数決で可能とするとともに、これらの決議に対応した事業手続等を整備します。
③上記のいずれのケースでも、耐震基準に適合しないなどの耐震性不足や、外壁剝落などの周囲への危険性がある場合は、議決要件を「5分の4の賛成」から「4分の3の賛成」に緩和します。
3⃣隣接地や底地の所有権等を、建替え等の後のマンションの区分所有権に変換することを可能にします。
4⃣耐震性不足等で建替え等をする場合に、特定行政庁(自治体等)の許可による容積率の緩和のほか、高さ制限の特例を創設します。
5⃣地方公共団体(自治体)の取組の充実
①老朽化したマンションが放置されると、外壁剝落など周囲に危険をおよぼす恐れがあります。こうした危険性のある老朽化マンションに対し、自治体が管理状況等の報告を求めることや、建替えや取り壊しなどの助言や指導、勧告を行えるようにします。
②区分所有者の意向把握、合意形成の支援等の取組を行う民間団体の登録制度を創設します。
千代田区内の旧耐震マンション等の再生に追い風
「令和5年千代田区分譲マンション実態調査」によると、区内にある509棟の分譲マンションの30%近い132棟が現在の耐震基準が施行された1981年6月以前に竣工しています。そのようなマンションでは、耐震改修・長寿命化・建替え等の再生に向けた検討が必要です。今回、閣議決定された法改正の内容は、千代田区のマンションが再生を進めるうえで追い風になります。(公財)まちみらい千代田には、マンションの再生検討の初期段階を支援する各種制度がありますので、ご相談ください。
なお、国土交通省は法改正の施行後5年以内に、マンション管理計画認定を取得したマンションを令和6年の約3%から20%に、マンションの再生等の件数を令和6年の472件から1,000件にする目標を示しています。
※法律の名称は、いずれも略称です
<法改正案についての報道発表資料(プレスリリース)>
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001867994.pdf
<法改正案の概要>
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001868098.pdf
マンションサポートちよだmini第175号掲載(2025.3月発行)
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