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管理組合の大切な資産である修繕積立金の上手な運用 〈マンションすまい・る債〉の利用について

マンション管理士 飯田太郎 氏

 マンションサポートちよだmini第173号でお伝えしたように、マンション管理や再生に関係する法律を一括して改正する法律案が閣議決定され国会で審議されます。順調に進めば今国会で可決・成立し、多くの法律が来年4月に施行される予定です。管理組合総会で採決する際に、所在不明の区分所有者を母数から外して議決できることや、管理組合総会で採決する際に、所在不明の区分所有者を母数から外して議決できることにします。またマンション1棟全体を改修するリノベーション工事等をする場合、現在の全員同意を変更し、建替え決議と同様に区分所有者数と議決件数の各5分の4以上(建物・設備の状態によっては各4分の3以上)の賛成で可能にするなど、重要な意思決定をスムーズに行えるようにします。
 しかし法制度が改正されても、管理組合の修繕積立金が不足するようでは、改修等はもちろん大規模修繕工事も思うように実施できません。

千代田区のマンションの
修繕積立金の平均積立額は1億650万円

 (公財)まちみらい千代田が令和5年(2023年)度に実施した「千代田区分譲マンション実態調査(以下「調査」という。)」によると、区内にある509管理組合のうち210管理組合が修繕積立金残高について回答をしています。住戸数、築年数、大規模修繕工事の実施状況等によって積立金残高は違いますが、平均1管理組合あたりの修繕積立金残高は1億650万円です。

大部分の管理組合が普通預金か定期預金で
修繕積立金を運用

 この多額な修繕積立金の運用方法についても調査では質問しています。

 修繕積立金を金融機関の普通預金や定期預金で運用する管理組合が多いのは、その本支店が身近な場所にあることに加えて、普通預金や定期預金が国の組織である預金保険機構で保護されているということが考えられます。

<預金保険の仕組み>
 預金保険機構は1990年代の「バブル崩壊」で、多くの金融機関が破綻したことを背景に臨時特例の措置として平成8(1996)年から預金等を全額保護する特例措置を実施しました。金融システムが安定したことにより、平成13(2001)年に全額保護から定額保護に移行し、現在は下記のようになっています。
 ①当座預金や利息がつかない普通預金等は全額保護されます。
 ②利息のつく普通預金、定期預金などは、1金融機関ごとに合算して、1預金者当たり元本1,000万円までと利息
  等が保護されます。
 バブル崩壊の経験から、万が一金融機関が破綻しても管理組合の大切な預金が保護されることを重視して、複数の金融機関の普通預金や定期預金に分散して預けるマンションの管理組合が多いと思います。
 しかし、多くの金融機関に1,000万円ずつ分散して預けると通帳が複数になり、残高証明書もそれぞれの預金口座ごとに取得する必要があります。多くの手間と費用がかかるだけでなく事故が起きる可能性もあります。

マンションすまい・る債による
修繕積立金の運用

 調査の結果では「マンションすまい・る債」は、約15%の管理組合が購入しており、国の独立行政法人である住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が、マンションの修繕積立金の運用に特化して発行しています。管理組合では、この「マンションすまい・る債」の購入を検討することをお勧めします。
 なお、同債券は令和7(2025)年4月現在、約26,200管理組合が利用しています。

<「マンションすまい・る債」とは>
 ①住宅金融支援機構が国の認可を受けて発行する利付10年債です。
 ②1口50万円から購入可能で、最大10回(年)継続購入して積立が可能です。
  購入する口数の制限はありません。
 ③毎年1回(2月予定)定期的に利息が支払われます。※年平均利率は年々アップします。
 (参考)2025年度発行債券の10年満期時の年平均利率は0.525%(税引き前)
 ④債券発行日から1年以上経過すれば、修繕工事目的などでの換金可能です。(手数料なし)

 〈2025年度マンションすまいる債の募集情報のお知らせ

<積立てをしている管理組合への特典>
 ①マンション共用部分リフォーム融資の借入金利が年0.2%引下げられます。
 ②マンション共用部分リフォーム融資の保証料が2割程度割り引きされます。

<「マンションすまい・る債」の安全性>
 「マンションすまい・る債」は預金保険の対象ではありませんが、発行元の住宅金融支援機構は政府が資本金の全額を出資しています。また、「マンションすまい・る債」の元本は機構の財産から優先的に弁済されることが法律で定められています。

<「マンションすまい・る債」の積立方法>
 令和7(2025)年度の「マンションすまい・る債」の募集は4月21日から始まりました(10月10日まで)。募集期間中に機構が予定する口数に達すれば、その時点で締め切られます。
 実際に債券が発行されるのは11月から来年2月ごろです。応募した管理組合に通知が届いた時点で、これまで修繕積立金を運用していた金融機関の預金口座等から、債券の購入(積立)に必要なお金を引き出し、住宅金融支援機構が指定する口座に振り込みます。 
 ほとんどの管理組合は、修繕積立金の積み立て方法を変更する場合、管理組合総会の議決が必要になるはずです。例えば管理組合の会計年度が3月末で終わり、5月に通常総会を開催する場合、総会で議決するのは①マンションすまい・る債を○口購入すること②実際に債券を購入する時期が到来した時点で、債券購入資金〇〇万円を現在の積立金口座から住宅金融支援機構の口座に移すことを議決します。なお、総会開催後、直ちに資金を移動する必要はありません。
 「マンションすまい・る債」による修繕積立金の運用は、金融機関の預金口座での運用とは違います。利用する場合は住宅金融支援機構の説明書をよく読み、分からないことは担当者に連絡をとって間違いが生じないようにすることが大切です。

マンションすまい・る債のご案内


マンションサポートちよだmini第176号掲載(2025.4月発行)
(PDFはこちら