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管理組合運営やマンション生活に欠かせない「名簿」と「個人情報」の取り扱い方

マンション管理士 飯田太郎 氏

 第62回千代田区マンション連絡会(4月19日開催)の参加者による意見交換の中で、区分所有者名簿が話題になりました。管理組合理事会が区分所有者に連絡をするため、名簿を保管している管理会社に名簿提出を求めたところ、連絡先等をマスキングした状態で提供されたということです。このほかにも名簿の基になる区分所有者の変更届や賃貸居住者の入居届の提出先が、管理組合ではなく管理会社になっているマンションがあるといったケースも分かりました。
 今回は管理組合運営に不可欠で、個人情報保護というデリケートな問題がある名簿の取り扱いについて考えます。

標準管理規約は
「名簿」の必要性を示しています

 国土交通省が管理規約のモデルとして作成し、多くの管理組合が準拠している標準管理規約では、組合員名簿と居住者名簿の作成等について下記の条項を示しています。


マンション標準管理規約(単棟型)の名簿に関連する規定
[電磁的方法が利用可能な場合]
(組合員名簿等の作成、保管)
第64条の2 理事長は、組合員名簿及び居住者名簿(以下「組合員名簿等」という。)を、書面又は電磁的記録により作成して保管し、組合員の相当の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
(2~3項 略)
4 理事長は、第19条第3項又は第31条の届出があった場合に、遅滞なく組合員名簿等を更新しなければならない*
5 理事長は、毎年1回以上、組合員名簿等の内容の確認をしなければならない。
*第19条第3項又は第31条の届出とは、マンションを売買や相続等で専有部分を取得し区分所有者になったこと、又は住戸を借りて居住者になったことを、管理組合に書面で届出することです。


管理組合運営等に名簿が必要な主な理由

 標準管理規約が名簿について上記の規定を設けた理由は、
① 管理組合運営やマンション生活についての情報を、区分所有者・居住者へ確実に知らせる必要がある。
② 災害発生時に安否確認や避難の支援、専有部分に立ち入る必要が生じた場合の連絡等を行う必要がある。
③ 災害時に支援が必要な高齢者、障がい者、子どもや乳幼児などを事前に把握する必要がある。
◇ 千代田区で管理が良好なマンションを認定する「千代田区マンション管理計画認定制度」も、組合員名簿等を整備していることを認定基準の一つとしています。
※ 管理組合法人の場合は、組合員名簿を必ず整備するものとしています。(区分所有法第48条の第2項ほか)

(参考)令和5年千代田区分譲マンション実態調査の結果から(306棟(60.1%)回答)
 前述のような生活に密着した防災名簿ですが整備しているのは、回答マンションの約3分の1です。標準管理規約で定められている組合員名簿、居住者名簿の整備も実施されていない可能があります。ご自身のマンションの名簿の整備状況を確認し、必要に応じて整備をしてください。

「名簿の作成」や「取り扱い」についての注意事項

 管理組合は個人情報保護法の個人情報取扱事業者に該当しますから、次のような注意が必要です。
①名簿の作成や更新
(1) 管理組合が名簿を作成するために組合員等の個人情報を取得するときは「管理規約第○○条が定める管理組合業務を遂行するため」というように、利用目的を特定する必要があります。
(2) 区分所有者変更届や入居届は管理組合が書式を作ります。そのときに個人情報の利用目的を記載しておくことが必要です。
(3) 名簿の内容を年に1回以上確認するためには、名簿の基になる届出のコピーを区分所有者や居住者に渡し、変更の有無を回答してもらうことが望ましいです。この場合、管理組合総会等で組合員や居住者に、管理規約の規定に基づき名簿の記載内容の確認等に協力義務があることを周知することが考えられます。
(4) 災害時に自ら避難することが困難な人の情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」に該当する場合があります。これを取得する場合は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ることが必要です。(届出用紙にその旨を記載します)
②名簿の保管
(1) マンションの管理事務室等で名簿を保管する場合は、施錠可能な戸棚等に収納し、鍵を複数(2~3人)の理事等が管理します。(2) 名簿の閲覧時は、帳票に閲覧日時、閲覧者の氏名、閲覧理由等を記録します。
(3) 名簿をパソコンで保管する場合は、漏洩を防ぐためインターネットに接続されていない機器で、暗証番号を設定し、閲覧可能者を2~3人に限定します。閲覧をしたときは、(2)と同様の記録をします。
(4) 閲覧可能な人は、地震等の緊急時に、迅速に対応できることも考慮して決めるようにします。

名簿を管理会社が保管している場合

 千代田区のマンションの多くは管理実務を管理会社に委託していると思います。このため管理規約等で組合員名簿等の基になる区分所有者変更届等の提出先が管理組合理事長になっていても、実際に書面を受け取り名簿として整理・保管するのは管理会社のスタッフということもあるでしょう。
 この場合でも名簿の所有者はあくまでも管理組合ですから、理事長等から提出を求められたり、閲覧に協力することを指示された場合、管理会社は従う必要があります。
 しかし、管理会社によっては管理組合の名簿管理体制に不備がある等の理由で、冒頭に紹介したようなマスキング等をすることがあるかもしれません。こうしたことを防ぐために管理委託契約書に名簿の取り扱いについての条項を入れるか、管理組合と管理会社の間で取り決めを交わすことも考えられます。
 もしも管理規約や管理委託契約書に、名簿の所有者が管理会社である旨の記載があるとすれば、管理組合の主体性が損なわれる可能性があります。管理会社に訂正を求めることをお勧めします。


マンションサポートちよだmini第177号掲載(2025.5月発行)
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